蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

サバイバルファミリー

2018年04月15日 | 映画の感想
サバイバルファミリー

主人公の鈴木義之(小日向文世)は平凡なサラリーマンで、妻:光恵(深津絵里)は専業主婦、長男:賢司(泉澤祐希)は大学生、長女:結衣(葵わかな)は高校生。
ある日、電気を利用する機器がすべて使えなくなるという現象が起きる。
いつまでたっても復旧しないので、電気が使えるという噂の大阪へ行くことにする。
飛行機や電車は動いていないので家族4人分の自転車を調達する。
大阪も状態は東京と同じであったため、今度は妻の実家である鹿児島をめざすが・・・という話。

近所の学習塾の窓(道路沿いに30メートルくらい続いている)に、大きな文字のスローガン?ポスター(例:努力は君を裏切らない)が貼ってあって、ちょっと前までは「困難を共有したものだけが本当の友になる」(→うろ覚え)みたいな文言だった。「寝台戦友」(内務班で上下の寝台をともにした同年兵同士のこと)の友情が最も堅いものであるともいう。

人は苦難に直面して初めて、それまでの平凡な日常がいかに幸せだったかを知り、その苦難にともに取り組むことになった人との間には深く強い関係性が築かれるという。本作でも電気喪失事件が起こるまではバラバラだった家族が(次第に悲惨な状況になっていく)自転車旅行の末に団結し、互いに心を通い合わせる。

電気がないとこんなに困る、というシチュエーションが「面白うてやがて悲しき」といった趣で、ユーモアとペーソスを交えながら語られて、(予定調和といえばそれまでなのだが)「きっとこうなる」と思いつつも目が離せなくなる面白さがあった。

自転車での旅の途中で、主人公たちは、アウトドアに精通していて電気がない暮らしをむしろ楽しんでいる風の家族に会う。その家族の一人(時任三郎)が次のような(うろ覚え)ことを言っていたのが印象に残った。

人間が生きていく上で一番大切なのは体温保持、次に飲料水の確保、3番目は火をおこせること、食べ物はその次くらい(であまり優先度高くない)。
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フラッシュ・ボーイズ

2018年04月15日 | 本の感想
フラッシュ・ボーイズ(マイケル・ルイス 文藝春秋)

2008年頃から盛んになったアメリカの株式市場における高速度取引の問題点(フロントランニングなどの不正行為)に気づいたRCB銀行のブラッド・カツヤマは、自ら取引所を立ち上げ公正な価格形成を追求する・・・という話。

市場参加者の売買注文動向を探り出して先回りして値ざやを稼ぐ取引は、注文から執行までの時間差を利用するもので、昔から行われてきたものだ。どこまでがフロントランニングといわれる不正行為なのか微妙で事実上黙認されてきた面もあると思う。
何しろ昔は人間が手作業で値をつけていたのだから、フロントランニングなんてやろうと思えばやり放題だったので。
ただ、こうした行為による値ざやはほんの少しなのであまり問題化してなかったのだが、コンピュータや通信技術の発達によってミリ秒単位で注文発注ができるようになり、1回ごとのもうけは極くわずかでも合計すると莫大な金額にすることが可能になった。
したがって、本書が指摘するような事態が問題視されるようになったのは、取引の高速化というより高頻度化によるところが大きいと思う。

高速取引のほかに本書が問題としてあげるのは、ダークプール(証券会社の自己対当取引のための社内つけあわせ市場)。
これも(ダークプールという名前はついていなかったが)昔からあるもので、価格形成の問題も認識されていたが、スケールが今とは桁違い。

素人には非常に難しい話題を、わかりやすくかつドラマ仕立てにする著者の手際の良さはあいかわらずで、最後まで楽しく読めた。
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