蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

フラッシュ・ボーイズ

2018年04月15日 | 本の感想
フラッシュ・ボーイズ(マイケル・ルイス 文藝春秋)

2008年頃から盛んになったアメリカの株式市場における高速度取引の問題点(フロントランニングなどの不正行為)に気づいたRCB銀行のブラッド・カツヤマは、自ら取引所を立ち上げ公正な価格形成を追求する・・・という話。

市場参加者の売買注文動向を探り出して先回りして値ざやを稼ぐ取引は、注文から執行までの時間差を利用するもので、昔から行われてきたものだ。どこまでがフロントランニングといわれる不正行為なのか微妙で事実上黙認されてきた面もあると思う。
何しろ昔は人間が手作業で値をつけていたのだから、フロントランニングなんてやろうと思えばやり放題だったので。
ただ、こうした行為による値ざやはほんの少しなのであまり問題化してなかったのだが、コンピュータや通信技術の発達によってミリ秒単位で注文発注ができるようになり、1回ごとのもうけは極くわずかでも合計すると莫大な金額にすることが可能になった。
したがって、本書が指摘するような事態が問題視されるようになったのは、取引の高速化というより高頻度化によるところが大きいと思う。

高速取引のほかに本書が問題としてあげるのは、ダークプール(証券会社の自己対当取引のための社内つけあわせ市場)。
これも(ダークプールという名前はついていなかったが)昔からあるもので、価格形成の問題も認識されていたが、スケールが今とは桁違い。

素人には非常に難しい話題を、わかりやすくかつドラマ仕立てにする著者の手際の良さはあいかわらずで、最後まで楽しく読めた。

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