蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

公正的戦闘規範

2018年04月28日 | 本の感想
公正的戦闘規範(藤井大洋 ハヤカワ文庫)

現代のテクノロジーの延長線で想像できる未来の姿を描く短編集。
著者は職業的プログラマだったそうで、ネットワークに関する知識があればもっと面白く読めると思うのだが、素人にはややとっつきにくい感じだった。

表題作では、人的損耗の減少を目的としたロボット兵器(ドローンを利用した銃撃兵器)の発達が、かえって無差別攻撃に結びついてしまう皮肉をうまく表現していた。

テキサスなどアメリカの保守州連合が独立した世界を描く「第二内戦」は、証券取引所からみの話で、場立ちがタバコを吸いながら注文をさばくシーンが印象的。保守州が独立宣言をするというのは、今や冗談とはいえないような状況ではある。
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愛について語るときに我々の語ること

2018年04月28日 | 本の感想
愛について語るときに我々の語ること(レイモンド・カーヴァー 中央公論社)

本書の翻訳者である村上春樹さんが、好きな作家としてよくエッセイなどで紹介しているカーヴァーの短編集。

ミニマリズムと呼ばれる、描写を極力そぎ落として読者の想像をかきたてる手法を得意としているらしく、一読しただけでは作品が意味するところがよくわからないものもある。
そういう側面を考慮してか巻末に村上さんの解題がついていて、これがまたなんとも(本体とは違って)わかりやすく親切な内容で、本体を読んだ後に解題を参照して、「ああそういう作品だったんだ」と感じることもしばしば。

あまり仲がよくない父親にひさしぶりに会う話の「菓子袋」、たまたま殺人現場にいあわせてしまったことで人生がくるってしまう「足もとに流れる深い川」、ブラック・バスの養殖?に取りつかれた男のちん話の「私の父が死んだ三番めの原因」がよかった。
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