蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

死刑

2013年08月04日 | 本の感想
死刑(読売新聞社会部 中公文庫)

死刑をめぐる社会情勢と当事者たちの感想を描いたルポ。

これまで殆どこのトピックに関する知識がなかった。このため、再審請求をしているとほぼ死刑が執行されることはない、ということには驚いた。それなら、全員とにかく再審請求しそうなものだけれど、中には(弁護士が控訴しても)自ら取り下げる人もけっこういるそうで、これも意外だった。しかし、まあ、自由がない拘置所にいるくらいなら死んだほうがまし、という考え方もわからないではないが。

死刑になるような犯罪は、やはり相当に悪質で、治安がいいといわわるこの国でさえ、生きながら被害者にガソリンをかけて火をつけたりする類のものが多い。世の中で一番恐ろしいものは、人間だなあ、とあらためて感じた。

また、裁判所も、その時々の世間の動向に相当に左右されるものであることが、よくわかった。現時点は、死刑を積極採用する厳罰期なのだと思うが、そういうトレンド?も10年以上続いてきたので、そろそろ風向きが変わるかもしれない。
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風立ちぬ

2013年08月04日 | 映画の感想
風立ちぬ

宮崎監督の映画作品で、多少なりとも子供向けを意識していない作品は本作が初めてではないだろうか。どう見ても中学生以下が見て、面白いと思う映画ではないと思った。
「ハウルの動く城」(今のところ、宮崎監督の映画作品ではこれが最高だと、私は思うのだが)も、子供受けしそうにないが、多少なりとも配慮があった(名前忘れたけど、炎の怪物とか)けど、本作は全くそういう点はなく、ひたすら大人向けの映画であった。

それで、私のように多少なりともミリタリー方面に興味がある者にとっては、(原作がそうだったので)堀越さんの飛行機開発物語なんだろうなあ、と期待してしまうのだけれど、うーん、やっぱり、そういう部分は半分くらいで、タイトル通りの恋物語部分は、どうにも、見ている方がなんか恥ずかしい(今どき、こういう純度100%の恋物語の映像作品は見たことがないので、これはこれで良いのだとは思うけど)と思ってしまうのだった。堀越さんは(たぶん実際そうだったと思うのだが)徹底した仕事バカで、女房子供に興味はない、というキャラなんだと思うけどなあ。もっとも本作でもヒロインが堀越さんの許を去ってしまった原因の一つはあまりにもかまってもらえなかったことなのかもしれないが。

本作で出色の部分は、大震災前後の東京の運河を描いた場面ではないだろうか。帆船と機動船が行き交う風景にはうっとりしてしまった。ジブリ作品の美術は本当に(毎度のことながら)すごい。
あと、大震災の場面の描写もよかったなあ。このへんだけ何回でもみてみたいと思った。

万人受けする内容だと思えないが、いつもガラガラの近所の映画館も、平日にもかかわらず半分くらい席が埋まっていた。宮崎さん、まだまだ休めそうにもないですね。こういった作品が受けるのだから、次は是非とも「泥まみれの虎」(ドイツ、ソ連を架空の国にしてもいいから)を映画化してください。私が億万長者だったら、自分が出資して映画化してもらうんだけどなあ。

あ、あと本作には、登場人物たちがとてもうまそうに煙草を吸う場面が頻出する。これ、宮崎さんの主張なんだろうなあ。宮崎さんの作品でなければ批判が殺到しそう。ここ15年くらい煙草を吸っていない私でさえ、吸いたくなったくらいだから。
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