蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ブラッカムの爆撃機

2008年01月17日 | 本の感想
ブラッカムの爆撃機(ロバート・ウェストール 岩波書店)

第二次大戦期のイギリスを舞台とした3つの短編と、著者のファンである宮崎駿さんが著者の故郷を訪ねた紀行マンガを収録している。もともと児童文学として書かれた作品とのこと。

表題作は、ドイツ爆撃に従事するイギリス軍爆撃機の乗組員たちが、ドイツ兵士の幽霊が住み着いた爆撃機に乗り組む話。

乗組員たちの連帯感の強さを主題としている。
宮崎さんのマンガによると、ドイツ爆撃に従事したイギリス軍兵士の犠牲者は公式統計でも5.5万人もいたそうで、出撃数30回のワンサイクルをこなすと生存率は5割を割ったそうだ。相当な犠牲者数、損耗率であったことに驚いた。
ドイツ爆撃はそれを行う方も本当に決死の覚悟が必要だったということで、戦場の苛酷さが増せば増すほど、チーム、戦友の絆はより強いものになるのだろう。

上記のテーマもうまく表現されているが、爆撃機内や地上基地の細やかな描写も興味をひかれた。宮崎さんが爆撃機の内部構造を絵にしているので、素人にも理解しやすかった。
宮崎さんのマンガ、特に水彩画風に彩色されたものが大好きで、もっと書いてくれないものか思うが、今や世界で最も稼げて、最も多忙であるアニメータである方にそれを期待するのは無理というものか。
コメント
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