蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

玻璃の天

2008年01月12日 | 本の感想
玻璃の天(北村薫 文藝春秋)

昭和初期、富豪の娘の学生が日常のちょっとした謎を解く話2編と殺人事件の推理をする1編から成る連作集。

娘の専用車の運転手がホームズ役(頭が切れて古典の知識は並みの学者より上、しかも銃の名手でもあるというスーパーウーマンだが異常なまでに慎み深い)で主人公の娘はワトソン役。

ただミステリというより、著者が当時の文学等に関する薀蓄を傾けるのが本書では読みどころか。

そのなかで、与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」の解釈が面白かった。
そんなことを言われた方の立場を考えろ、と。
言われた方は軍隊の中にいたわけで、まさに針のむしろ(本の中では「フライパンの上で炒られるような」)。
なるほど、私では今まで考えてもつかなかった・・・

著者はこの項をこう結ぶ。
「人間のごく当たり前の思いを、率直に語れる世であってほしい。だが、そのことが愛する人達を苦しめる世だとしたら、どうすればよいのか。」
コメント
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