デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



少し前のことだが、神戸で「ターナー展」を鑑賞した。鑑賞日の数日前、にわかに美術大全集のターナーの項を読み「予習はままできた」つもりで足を運んだのだが、作品を眼前にすると付け焼刃の予習内容が作品から受けた感銘の上っ面を滑って行くような気になったものだ。そのくらい、作品を見たときの衝撃は強かったし、全体としてとてもいい回顧展だった。
ターナーは主に風景画が多いが、作風は(拙い表現だが)本当にいろいろある。クロード・ロランを意識した牧歌的・静的な作品もあれば、印象派の先駆けのような作品もある。更に印象派の先駆けのような画面の中で、人物や建物については繊細によりくっきりした筆遣いでもって描きこまれていたりする作品もある。
また展にも掲げられていたターナーの崇高の表現、詳しく書けば遠い過去の根源的な自然のイメージ、衝動的な力に突き動かされている人間がなすすべもない巨大なエネルギーを感じさせる動的な作品が多いのかと思いきや、夜の大気に浮かぶ人間が成した産業革命を経て稼動している工業の力を感じさせるリアリスティックに時代を反映した作品もある。
このとおり、作品のテーマおよび表現(画法)は多岐にわたる。ターナーの作品は彼らしい作風として一言でくくれそうで案外くくることができない。ただいえるのは、膨大なエネルギーとやる気をもつ英国紳士の画家本人も、本当によく働き、画法の試行錯誤を繰り返し、並外れた行動力でもっていろいろな場所をスケッチする、つまり常に動いていなければ駄目な彼の性格が、作品に表れているということだろう。(彼の人物像についてはまた何かの形で触れるかもしれない)。
展で個人的に見入った作品は「バターミア湖」「グリゾン州の雪崩」「ヴァティカンから望むローマ」「チャイルド・ハロルドの巡礼」「レグルス」「ヴェネツィア、嘆きの橋」「サン・ベネデット教会、フジーナ港の方角を望む」「ウォータールー橋上流のテムズ川」。
とくに「チャイルド・ハロルドの巡礼」「レグルス」「ヴェネツィア、嘆きの橋」「サン・ベネデット教会、フジーナ港の方角を望む」「ウォータールー橋上流のテムズ川」は、これまでの旅行先や読んだ本・小説の影響もあり、心の間歇を促される作品だった。

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