社員の佐藤さんは48才。
我が社に就職して1年になる。
彼は以前、県内の同業者の所へ勤めていたが
廃業したために無職となった。
しかし農家のマスオさんで、奥さんが高給取りのため
3年余りの期間、家事と農作業にいそしんでいた。
一方我が社は昨年、大型ダンプを1台購入し
それに乗せる人を募集することになった。
働く車は、最初に乗った人間で将来が決まる。
雑で無知な者が使うと、寿命が短くなるのだ。
可愛がり、磨き上げ、優しく使用しなければならない。
そう、女と同じである。
ここで佐藤さんの名が浮上する。
仕事で知り合って親しくなった息子達が声をかけ
彼らがベテランかつ細やかな性質と評価する佐藤さんを
迎えることが決まった。
いくらベテランで細やかでも、3年ブラブラできた人が
急に大丈夫かいな‥‥私は懸念した。
しかし一緒に仕事をするのは息子達なので
意見を述べることはさし控えた。
就職は結婚と同じく、デリケートな行事。
誰かが難色を示した事実はどんな形であれ
後で必ず本人に伝わるものだ。
逆恨みとまではいかなくても、結局入社させるのであれば
余計なことは言わない方がいい。
新車を任せられた佐藤さんは、持ち前の細やかさ全開で
ダンプを大切にしてくれた。
大切にするあまり、車で1時間かかる通勤を
ダンプで行うようになった。
つまるところそれは、通勤手当をもらいながら自分の車を使わない
ズルい行為ではあるが、一旦出社してから現場へ入るより
佐藤さんの家から直接行く方が近い時もあるので黙認していた。
あんまりベテランだと、雇い主の性格を読み取ることにタケてくる。
夫がそういうことに無頓着なのをちゃんと見抜いているのだ。
私はこの人事に関して、部外者を通していた。
息子達が赤じゅうたんを敷いて迎えた彼が
率先してユルそうな仕事先を選ぶようになろうと
持病の頭痛を武器に、気の向かない仕事を休むようになろうと
一つ一つが息子達の肥やしになる。
困った社員というのは、必ず出てくるものだ。
仕事とお友達の違いを思い知れ。
せいぜい年上の後輩に苦しんで、人を見る目を養うがいい。
そんなことより、私はある現象に注目して佐藤さんを眺めていた。
「付け届けをする社員は要注意」
これは何十年も前に、とある金持ちから教えられた。
日雇い労働者から億万長者になった人だ。
ホワイトカラーのサラリーマンならいざしらず
ガテンで気遣いを見せる男は続かないというのだ。
続かないのは、怠け癖を物で補おうとする魂胆の他に
問題を起こしやすいという、彼の経験に基づいた理由があり
その目で義父の会社の社員を見ると、その通りだった。
佐藤さん、付け届けというほどではないけど
家で作った野菜を時々くれる。
これは付け届けになるのだろうか。
「遠足のバナナはおやつに数えるのでしょうか?」
この疑問を持ちつつ、息子達が佐藤さんに翻弄される日々を
興味深く眺めていた。
この夏は雨が多く、休みが続いた。
佐藤さんの給与形態は月給制なので、いくら休んでも給料は同じだ。
安定はしているが、出勤したら損みたいな気分になりやすい。
夏にゆっくり休んだ佐藤さん
秋にも長雨が続いたので、しっかり休んだ。
冬になると車検。
ダンプは毎年車検があるのだ。
長雨のために遅れていた仕事が忙しくなった途端
土日を挟んでたっぷり車検休みを取る。
こういう立ち回りが、ベテランたるゆえんである。
一週間後、久しぶりに出勤した佐藤さん
その朝、さっそく接触事故を起こす。
ショックのため、持病の頭痛が起きたそう。
修理があるので、そのまま数日休む。
大丈夫、いくら休んでも月給制。
この状況を改善する気は無い。
いずれ彼は辞める。
代わりはいくらでもいる。
知らないのは本人だけだ。
遠足のバナナはおやつに数えることだけわかって
満足な私である。
そして昨日、佐藤さんはやっと仕事をする気になり
とある現場に行く予定が組まれた。
が、相手から「まだ来ない」と電話が。
早朝、佐藤さんから次男のラインに
「頭が痛い」とだけ入っていたため
息子達は彼がどこかで倒れていると思い
連絡を取り続けたが、出ない。
穴の空いた現場には急遽長男を派遣し
我々は本社の経理部長、ダイちゃんに出勤を要請した。
佐藤さんの家は、我々の町と本社のちょうど中間に位置する。
ダイちゃんを家に行かせて、安否を確認してもらおうとしたのだ。
最近、後進が育ってきて暇になり
宗教活動ばっかりしているみたいなので、ちょうどいい。
その結果、佐藤さんは無事で、家にいた。
佐藤さんの報告によると、ダイちゃんは
「頭痛なら僕が治してあげる」と言い出し
玄関で手をかざそうとしたらしい。
我々からダイちゃんの宗教の話を聞いていた佐藤さんは
「家族に知れたら都合が悪い」と逃げ回った。
しかしダイちゃん、「じゃあ車の中で」と言い出す。
「それも困ります、近所の目があるので」
「5分だけ目をつぶってもらえば治るから」
「勘弁してください」
逃げる佐藤さん、追うダイちゃん。
「恐ろしかった」
やっと手かざしをまぬがれた佐藤さんは
ダイちゃんが帰るなり、次男に電話をしてきた。
無断欠勤で仕事に穴を空けたことなど、全く気にしていない。
佐藤さんとお別れする日は近そうだ。
怠け者の社員に、ダイちゃんは効く。
我が社に就職して1年になる。
彼は以前、県内の同業者の所へ勤めていたが
廃業したために無職となった。
しかし農家のマスオさんで、奥さんが高給取りのため
3年余りの期間、家事と農作業にいそしんでいた。
一方我が社は昨年、大型ダンプを1台購入し
それに乗せる人を募集することになった。
働く車は、最初に乗った人間で将来が決まる。
雑で無知な者が使うと、寿命が短くなるのだ。
可愛がり、磨き上げ、優しく使用しなければならない。
そう、女と同じである。
ここで佐藤さんの名が浮上する。
仕事で知り合って親しくなった息子達が声をかけ
彼らがベテランかつ細やかな性質と評価する佐藤さんを
迎えることが決まった。
いくらベテランで細やかでも、3年ブラブラできた人が
急に大丈夫かいな‥‥私は懸念した。
しかし一緒に仕事をするのは息子達なので
意見を述べることはさし控えた。
就職は結婚と同じく、デリケートな行事。
誰かが難色を示した事実はどんな形であれ
後で必ず本人に伝わるものだ。
逆恨みとまではいかなくても、結局入社させるのであれば
余計なことは言わない方がいい。
新車を任せられた佐藤さんは、持ち前の細やかさ全開で
ダンプを大切にしてくれた。
大切にするあまり、車で1時間かかる通勤を
ダンプで行うようになった。
つまるところそれは、通勤手当をもらいながら自分の車を使わない
ズルい行為ではあるが、一旦出社してから現場へ入るより
佐藤さんの家から直接行く方が近い時もあるので黙認していた。
あんまりベテランだと、雇い主の性格を読み取ることにタケてくる。
夫がそういうことに無頓着なのをちゃんと見抜いているのだ。
私はこの人事に関して、部外者を通していた。
息子達が赤じゅうたんを敷いて迎えた彼が
率先してユルそうな仕事先を選ぶようになろうと
持病の頭痛を武器に、気の向かない仕事を休むようになろうと
一つ一つが息子達の肥やしになる。
困った社員というのは、必ず出てくるものだ。
仕事とお友達の違いを思い知れ。
せいぜい年上の後輩に苦しんで、人を見る目を養うがいい。
そんなことより、私はある現象に注目して佐藤さんを眺めていた。
「付け届けをする社員は要注意」
これは何十年も前に、とある金持ちから教えられた。
日雇い労働者から億万長者になった人だ。
ホワイトカラーのサラリーマンならいざしらず
ガテンで気遣いを見せる男は続かないというのだ。
続かないのは、怠け癖を物で補おうとする魂胆の他に
問題を起こしやすいという、彼の経験に基づいた理由があり
その目で義父の会社の社員を見ると、その通りだった。
佐藤さん、付け届けというほどではないけど
家で作った野菜を時々くれる。
これは付け届けになるのだろうか。
「遠足のバナナはおやつに数えるのでしょうか?」
この疑問を持ちつつ、息子達が佐藤さんに翻弄される日々を
興味深く眺めていた。
この夏は雨が多く、休みが続いた。
佐藤さんの給与形態は月給制なので、いくら休んでも給料は同じだ。
安定はしているが、出勤したら損みたいな気分になりやすい。
夏にゆっくり休んだ佐藤さん
秋にも長雨が続いたので、しっかり休んだ。
冬になると車検。
ダンプは毎年車検があるのだ。
長雨のために遅れていた仕事が忙しくなった途端
土日を挟んでたっぷり車検休みを取る。
こういう立ち回りが、ベテランたるゆえんである。
一週間後、久しぶりに出勤した佐藤さん
その朝、さっそく接触事故を起こす。
ショックのため、持病の頭痛が起きたそう。
修理があるので、そのまま数日休む。
大丈夫、いくら休んでも月給制。
この状況を改善する気は無い。
いずれ彼は辞める。
代わりはいくらでもいる。
知らないのは本人だけだ。
遠足のバナナはおやつに数えることだけわかって
満足な私である。
そして昨日、佐藤さんはやっと仕事をする気になり
とある現場に行く予定が組まれた。
が、相手から「まだ来ない」と電話が。
早朝、佐藤さんから次男のラインに
「頭が痛い」とだけ入っていたため
息子達は彼がどこかで倒れていると思い
連絡を取り続けたが、出ない。
穴の空いた現場には急遽長男を派遣し
我々は本社の経理部長、ダイちゃんに出勤を要請した。
佐藤さんの家は、我々の町と本社のちょうど中間に位置する。
ダイちゃんを家に行かせて、安否を確認してもらおうとしたのだ。
最近、後進が育ってきて暇になり
宗教活動ばっかりしているみたいなので、ちょうどいい。
その結果、佐藤さんは無事で、家にいた。
佐藤さんの報告によると、ダイちゃんは
「頭痛なら僕が治してあげる」と言い出し
玄関で手をかざそうとしたらしい。
我々からダイちゃんの宗教の話を聞いていた佐藤さんは
「家族に知れたら都合が悪い」と逃げ回った。
しかしダイちゃん、「じゃあ車の中で」と言い出す。
「それも困ります、近所の目があるので」
「5分だけ目をつぶってもらえば治るから」
「勘弁してください」
逃げる佐藤さん、追うダイちゃん。
「恐ろしかった」
やっと手かざしをまぬがれた佐藤さんは
ダイちゃんが帰るなり、次男に電話をしてきた。
無断欠勤で仕事に穴を空けたことなど、全く気にしていない。
佐藤さんとお別れする日は近そうだ。
怠け者の社員に、ダイちゃんは効く。
私も頭痛持ちなので手をかざして治るのであればお願いしてみたいところです笑
休みの連絡がLINE
いまどきの若い者は!って私も話をしたことがありますが
若い子だけではないんですね。
考えられない。
息子さんたち、さぞご苦労されていることでしょう。
人を見る目、難しいです。
ある程度の距離があればいい人でも、
近くなると途端に面倒な人と感じることも。
プライベートでは面倒なら距離が取れますけど
仕事だとそうもいかない。
なので私は仕事上の付き合いの方とは一定の距離を保って、慣れ慣れしくされないように気を付けています。
面倒くさいことに巻き込まれるのはまっぴらごめんですもん♪
佐藤さんが肩たたきを免れる道は
入信してダイちゃんの庇護を受けるしか
ないと思われます。
ラインで休みを伝えるどころか
頭が痛いと一言だけだったので
息子達は完全に死んだか意識不明と
思い込んで、慌てたようです。
ほんと、若くないのにハートだけ
若者。
手かざしで頭痛が治るんなら
医者いらんて。
ダイちゃんは道で倒れてる人に手かざしして
息を吹き返したのが自慢で
その時に来た救急車の人も偶然お仲間で
どうたらこうたら言ってましたが
自分の物忘れは治せないようです。
仕事と距離、大切ですね。
ユウキさん可愛いから、感違いされたら
面倒よ。
ちゃんと予防して、賢いわ!
速攻で 実は私は超能力があるのだ。
私も手かざしをやってあげた。
元気になった?
と聞いたら微妙な顔をしていた。
ちょっとからかっただけ!
仕事はそうしないと生活できないというプレッシャーがないとできません。
誰も同じだと思いますよ。
ラインもメールも良い道具だと思います。
使い方次第よね!
ただ、履歴が残るだけに慎重にすべきかな・・・
しているとは思いませんでした。
手かざし系は、未入信の人に対して
月に何人手をかざすかがノルマに
なっているそうなので
ノルマ達成のためなら誰でもいいのかも
しれません。
ほんと、メールやラインだと
履歴が証拠になりますね。
向こうの発言も残るけど
こっちの返事も残る。
くわばらくわばら。
座布団2枚!
その砂糖さん、忘年会と新年会をドタキャン
昨日の仕事始めにも来ず。
ダイちゃん、平静を装いながらも
確実に焦ってたわ。
手かざしをしようとした手前
退職理由が宗教勧誘になったら
自分の身が危ないもんね。
知~らんっと。