殿は今夜もご乱心

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手抜き料理・お祭編

2021年06月08日 09時30分38秒 | 手抜き料理
先日、友人ユリちゃんの実家の寺で、お祭があった。

町中の人が集まるこのお祭は、毎年6月に行われる。

昨年はコロナ禍のために中止となったが

今年は町民を集めずに内輪で行うことになった。


そこで、我々同級生が招集される。

日頃はお寺の行事に参加しない檀家や、青年団の世話人を始め

県や市のえらい人など総勢30人ほどに出す軽食を作るのだ。


30人といっても一度に集合するわけではなく

午前、午後、夕方、夜に分散して集まる。

マミちゃん、モンちゃん、私の同級生3人組は

軽食と聞いて楽勝だと思い、喜ぶのだった。


それがぬか喜びだったのは、後でお話しするとして

とりあえずメニューを決めなければならない。

メインはユリちゃんの希望により、コロッケに決まった。

昔から、お祭には檀家さん手作りの料理と一緒に

買ったコロッケが並ぶ風習。

お祭といえばコロッケ…ユリちゃんの中では、そうなっているらしい。


他は海老パンと卵焼き、冷やし素麺汁に決めた。

慎重に検討したメニューではない。

コロッケは、いつぞやのお寺食で作ったことがある。

玉ねぎとジャガイモをたくさんもらっていたからだ。

今回もまた、玉ねぎとジャガイモをもらっている。

その処理にちょうどいいではないか。


そしてユリちゃんはこのところ、激安スーパーの食パンに凝っている。

4斤分が1本になっている長いパンだ。

彼女はこれを我々へのお礼の気持ちとして

お寺で料理をする度に持たせてくれるようになった。

値段は絶対に言わないが、推定300円。

それが我々の日当とも言えよう。


最初はそのサイズに驚いて盛り上がったものの

毎回続くとさすがに飽きる。

今回も用意すると言うので、いらないとは言えず

「お寺でみんなに食べさせちゃえ!」

そう思って海老パンに決めた。


海老パンも過去に作ったことがあるが、これには卵白が必要。

叩いて細かくした海老に

卵白、塩胡椒、オイスターソース、片栗粉を混ぜてパンに塗り

それを揚げるからだ。


で、卵白を使うと黄身が残る。

残った黄身の処理のために卵焼きを作るという

かなり適当な献立設定。


揚げ物ばかりではしつこいので、あっさりした物も欲しいところ。

私はユリちゃんに酢の物を提案した。

酢の物は一気に作れるし、ホイル製のカップに入れて

オードブルの皿に並べられる。

しかしユリちゃん、旦那が酢の物は嫌いという理由で反対。

そこで汁椀でめいめいに提供する冷やし素麺汁を提案し、許可が下りた。


お祭前夜はコロッケのタネと海老パンのタネ、素麺汁のダシを作る。

品数が少ないので、いつもと比べたら申し訳ないほど楽ちんだ。

楽ちんついでに、食器洗いも楽をしようと企てた私。

オードブル形式にして、使い捨ての容器にしようと思い立ち

閉店間際のホームセンターへ走った。


が、よくあるギンギラで円形の大きなオードブル皿は

2枚で500円と高い。

10枚は欲しいとなると、2,500円だ。

これは我々が楽をするための物なので、ユリ寺の予算は当てにできない。

そこで同じような大きさながら

5枚で500円の発泡スチロール製を2パック買う。

握り寿司用らしいが、熱い物を置かなければ大丈夫だ。


当日の朝は卵焼きを12本焼いて、準備は終了。

昼はユリちゃんの兄嫁さんがカレーを作っておいてくれると聞いたし

夜の料理は下ごしらえ済み。

依然として楽勝を確信している我々は

いつもより遅い11時、意気揚々とユリ寺に乗り込んだ。


ところが、到着してびっくり。

兄嫁さんのカレーはできているが、ごはんは炊いてないという。

カレーと言ったら本当にカレーだけだったのね…

信じたうちらがバカだったわ…

慌てて米を研ぎ、炊飯器のスイッチオン。

「今回、私は何も作らないから

せめてカレーの時のサラダを作る」

そう言って野菜をたくさん持って来たマミちゃんは

鬼の形相でサニーレタスを洗い、モンちゃんは紫玉ねぎをスライスしている。


サラダを盛り付け、ごはんが炊き上がると、もう昼じゃんか。

またも慌てて配膳する我々の前に、今度は『分散』が立ちはだかる。

コロナ対策もだが、飾り付けや整備の仕事の都合もあって

一度に集まらずに分散して食べるもんだから

出しては引き、出しては引きをひたすら繰り返す。

なにしろ分散なので、帰る人や来る人の出入りが激しく

そのことごとくをもれなく接待しようと思ったら、我々が駆け回るしかない。

使い捨てのオードブル皿を買って勝ち誇っていたが、とんでもない。

洗い物の山じゃんか。


食事が終わった人にはコーヒー&デザート。

兄嫁さんお手製の牛乳カンだ。

切り分けて出すので、手間がかかる。

こんなん作る暇があったら、ごはん炊いといてくれや…。


ドタバタの昼が終わると、3時が近づいている。

おやつの時間だ。

またコーヒーに、兄嫁さんお手製のシフォンケーキとティラミス。

キー!こんなん作る暇があったら…

言いたいけど、善意に対しては言えないものなのよ。

出しては引き、出しては引き、食器を洗って片付ける。


分散のおやつが済んだら、はや夕方。

合間を見てはコロッケに衣を付け

海老パンと一緒にマミちゃんが揚げてくれていたので

何とか二品はできた。

この時点でマミちゃんは、疲れて足が代わらなくなり戦線離脱。

座り込んでしまった。

無理もない。

日頃はこんなに走り回らないもんね。


生き残ったモンちゃんと私には、大仕事が待っている。

おむすびだ。

ひと釜は豆ごはんのおむすび

もうひと釜はおむすび用ふりかけをまぶしたおむすびと

ユリちゃんから指定されている。

そして気軽に食べられて気軽に持ち帰れるように

おむすびは全てラップでくるむという厳格な指示。


でも大丈夫、おにぎり女王のモンちゃんがいる。

前回のお寺料理で、おにぎり名人という隠れた才能を発揮した彼女を

私はすっかりあてにしていたし

彼女も「任せて!」と、いつになく意欲を見せていた。


が…三角おむすびという指令を聞いて、モンちゃんは意気消沈。

「ごめ〜ん、私、三角おむすびはできないのよ〜」

ユリちゃんがタワラ型ではダメだと言うので

私が握ってモンちゃんがラップを巻いた。


これでかなり時間をロスしたため

オードブルの皿に敷く野菜類を用意する暇は無くなり

昼に出したサラダの残りを流用。

私は冷やし素麺汁に取りかかり

モンちゃんにはコロッケと海老パンの盛り付けを依頼。


やがて素麺汁はできあがったが、オードブルの盛り付けは終わってない。

10枚買ったオードブル皿は、おむすびで4枚使ったので

残りの6枚におかずを盛り付けなければならない。

しかしモンちゃんは海老パンを乗せたバットを抱えたまま

皿の周りを熊のようにウロウロしながら

海老パンをひとかけら置いてみたり、またバットへ戻したりしている。


モンちゃんは、おかしくなったのではない。

疲れて、お帰りモードに入ったのだ。

彼女は海老パンがいたく気に入り、できるだけたくさん持って帰ろうとしている。

そのためには、「海老パンが余ってしまった」という状況を作る必要がある。

「時間切れで、全部は盛り付けられませんでした」を目指しているのだ。


が、客に出す海老パンはまだ十分ではなく、皿はスカスカ。

「モンちゃん、先に欲しいだけ取っとき。

残りを皿に盛って」

持ち帰る分を先に確保させる逆転方式で、欲にかられたモンちゃんを現世に引き戻す。

「あ、いい?」

モンちゃんは素早い動きで海老パンをパックに詰め、残りを皿に盛る。




こうしてやっとオードブルはできあがり、我々はそのまま帰った。

後でユリちゃんが言うには、どれも好評だったそう。

が、私は素麺汁が一番ではないかと思う。

お寺への進物だった素麺は、白龍という名の三輪素麺。

超極細の高級品で、ひと束ずつ紙の箱に入っていた。

茹でたついでに試食してみたが、歯ざわり、喉越し共に最高だった。


いずれにしても疲れたので、ここ数日はダラダラ過ごした。

分散はきつい。
コメント (2)
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