僕のほそ道   ~ のん日記 ~

  
これと言ったテーマはなく、話はバラバラです。 つい昔の思い出話が多くなるのは年のせい? 

渡辺淳一 「孤舟」 に思う

2011年09月08日 | 読書

「こしゅう」といえば松島アキラが歌った「湖愁」を思い出す人は、
今の日本人の中でいったい何人ぐらいいるのだろうか…
な~んてことを書くだけで世代がわかろうというものだ。

悲しい恋の なきがらは~ そっと流そう 泣かないで~ ♪

50年前にヒットした歌だけど、出だしの歌詞がすらすら出てくる。
昔の歌というものは、よ~く覚えているものだ。

で、なぜ松島アキラの「湖愁」が出てきたかといえば、
この夏に読んだもので最も強い衝撃を受けた作品が、
渡辺淳一の「孤舟」という小説だったからだ。
知らない人はないほど有名になった小説だ。

どちらも「こしゅう」という題であり、
どちらも団塊世代が大いに共鳴する…
…ということからの、こじつけである(あはは~)。

 ………………………………………………………………………

では、本題に入ります(なんか、堅苦しい論文のようですけど)。

長年勤めた仕事を定年退職して、やがて2年半が経とうとしている。
そんな僕と全く同じ年齢の団塊世代の男性が、「孤舟」の主人公である。

すでに読まれた人も多いだろうと思うけれど、
定年退職して自由の身になった男性がこの本を読むと、
身につまされるというか、ただならぬ胸騒ぎを覚えるはずである。

小説の主人公は、かつて広告会社の要職についていた。
そしてその会社を定年退職して1年半経ったころから物語が始まる。

定年になっても、日常的にはあれこれとやることがあり、
その中から暇を見つけて、いままでやれなかったことをやる…
彼はそう思い込んでいた。だが、いざ定年になってみると、
朝目覚めたときから眠るまで、すべて予定のない空き時間ばかり。
暇を見つけるどころか、すべてが暇で空いていることに愕然とする。

朝、目が覚めると、
「まだ眠っていていいのだ」
「今日はどこへ行こうかな」
などと思いをめぐらしながら、むっくり起き上がる。

なんとなくテレビをつけて、なんとなく見る。
デパートをぶらついたり、図書館へ行ったりするが、刺激がない。
妻に頼まれて、犬を散歩に連れて行くことが、唯一の定まった日課だ。

読みながら、僕はふと、サラリーマン川柳の

定年後 犬もいやがる 五度目の散歩 

という文句を思い出し、声を出して笑った。

お正月に来る年賀状の数も少なくなった。
「減ったわね」という妻の言葉に、聞こえないフリをする。
仕事を辞めたといっても、プライドはそう簡単には消えない。

妻は、友達と食事だとか何だとか言って、せっせと出かける。
夫はそのたびに「どこへ行くのだ。何時に帰るのだ」
と、妻に言う。
「いい加減にしてよ。いちいち聞かないでください」
と、妻がキレる。

以前、妻が「今日は何時ごろお帰りですか?」と夫に尋ねても、
いい加減な返事をするか、あるいは無言のままで出勤して行き、
会社のつき合いやら接待で、毎日のように帰宅が遅くなっても、
妻と会話を交わすこともなく、風呂に入って寝ていただけだった。
それが、今は妻に「どこへ行く? 何時に帰る?」としつこく訊く。
「自分勝手な人だわ」妻は、しみじみそう思う。

夫が一日中家にいるようになると、妻の方も大変である。
友達から電話がかかってきて、長話をしたら、そのあと、
夫が「長い電話だったな。何を話していたんだ」と干渉する。
「いろいろあるのよ」と妻はうんざりする。
一日中監視されているようで、居心地が悪い。
しかも夫のために、三食作らねばならない。
自由気ままに出て行くことも出来なくなってきた。

主人在宅ストレス症候群…という言葉がある。
夫が家にいることにより、妻が精神的、肉体的にバランスを崩して、
不安定になる疾患のことを言うそうだ。

この小説でも、主人公の妻は、そんなことで体調を崩したりする。

「旅行でもしようか…?」と夫が言っても、
「あなたと旅行しても、私が疲れるだけです」と妻は断る。

「そんな旅行のことよりも…」と、妻は続ける。
「あなたも働いていないのですから、ときには食事を作ったり、
 洗濯物を取り込むことくらい、手伝ってほしいのです」

夫は、「家事無能力者」というやつである。
思わず彼はムッとして、
「それは、俺に対するさしずか」
「そうじゃなく、頼んでいるんです」
「だったら、頼み方ってものがあるだろう」

あぁ…

ためいきの出るような夫婦のやりとりが、これでもかと続く。

僕自身はと言えば、料理、洗濯、ゴミ出しなどの家事をしているし、
孫のモミィを幼稚園へ送り迎えし、エレクトーン教室にもつき合っている。
それにほぼ毎日、スポーツクラブへ泳ぎに出て行っているので、
1日中家にいるということは、めったにない。
図書館の自習室へ行き、英検に備えて英語の勉強をすることも多い。

だから、定年退職しても、「孤舟」の主人公のようなことはない。
妻にしても、今はモミィの「子育て」に精一杯の毎日である。
僕たち夫婦が口論するようなこともない。

おまけにこの男性は、現役時代は会社のエライさんだったので、
接待の名目で、社費で銀座のクラブなどへ行って遊んでいる。
それが、年金生活になると、もちろん出来ようはずがない。
その落差が、主人公をより寂しい思いにさせるのである。

僕など、公務員だったから、接待で飲みに行くなんてあり得なかった。
そんな高級クラブで飲んだこともない。いつも居酒屋である。
だから、今も飲みに行く場所は同じだから、何の落差もない。

…と、小説の主人公と僕はかなり違う生活だけれども、
それでも、やはり身につまされるのはなぜだろうか…?
他人事とは思えない強い吸引力を、この小説は持っている。

これはもう、笑うしかない、というシーンやセリフが満載されている。
この本を読みながら、僕はどれだけ声をあげて笑っただろうか。
どれもこれも「そうそう、わかる、わかる」という笑いなのだ。
夫の言い分もわかるし、妻の言い分もわかる。
わかり過ぎて、笑ってしまうのである。

それでも、読後、人生観が少し変わったと言えるほど衝撃を受けた。

「孤舟」については、これくらいでは語りつくせない。

今日はこれで終わりますが、まだまだ続きを書きたいと思います。

 

 

 

 

 

 

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紀伊半島に大きな被害

2011年09月07日 | 日常のいろいろなこと

台風12号が和歌山、奈良に大きな被害をもたらした。

大阪と奈良を隔てる山々は、わが家の窓からよく見える。

自転車で、自宅のある大阪から、その山と山の間を抜けて、
奈良県に入り、坂道をどんどん下っていくと五条市に入る。
そこから、山間部の道路をよくツーリングしたものだった。

道路は、くねくねと曲がりながら十津川村へと入って行く。
道の真横を流れる川は、山間を縫うように低いところを流れている。

このあたりは大阪とは全くの別世界で、大自然の香りに満ちていた。
自転車のペダルをこぐのはきびしいけれど、魅力的なコースだった。

そして今回、その五条市や十津川村も、甚大な被害を受けたのだ。

あの町、あの村、そしてあの道路が、ぐちゃぐちゃになっている。
谷底のように低い位置の川が溢れて人家を襲ったとは信じがたい。
ニュースで連日映し出される光景に、胸が押しつぶされそうになる。

この台風で亡くなった人と行方不明の人の数は、100人を超えた。

台風の速度が遅すぎたために、湿った空気が紀伊半島で停滞し、
そのことが、これほどのすさまじい雨を降らせたということらしい。

昔、新婚旅行で行った和歌山県・那智勝浦でも、多くの死者を出した。

この豪雨もまた、巨大震災同様「想定外」の現象だったのだろうか?

僕が住んでいる大阪府の南部地方にも、暴風警報などは出ていた。
それが土曜日だったので、モミィのスイミングが中止になったりはしたけれど、
その日は時たま強い雨が降った程度で、特に荒れた天候ということもなく、
結局、いつが台風のピークだったのか、わからないままで終わった。

それなのに、
さほど遠くない奈良や和歌山がこれほどの豪雨に見舞われたとは…
最初に報じられたときは、信じられない思いだった。

地震、津波、台風、豪雨、土砂崩れ…

災害は、忘れた頃にやってくる…
という先人の知恵の結晶であるはずのこの言葉も、
生々しい記憶をさらに上塗りする事態が重なって、もはや通用しなくなった。

テレビに映し出される紀伊半島各地での被災の様子は、誰もが、
半年前に目にした光景と二重写しの感覚で見ておられたに違いない。

 

 

 

 

 

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語彙・読解力検定

2011年09月06日 | 日常のいろいろなこと

新聞を読んでいたら、広告欄に、
さぁ、「ことば」を育もう!
という見出しで、「語彙・読解力検定」の案内広告が載っていた。

はァ? 「語彙・読解力検定」って何…?
そういうものがあるということを、僕は知らなかった。
広告によると、朝日新聞社とベネッセという会社が共同して主催し、
次は11月13日に第2回目の検定試験が行われるということであった。

気になったので、詳しいことをパソコンで調べてみた。

http://www.goi-dokkai.jp/

ここに検定の説明があるので、そのまま引用すると…

『語彙・読解力検定』では、日常生活で身近に接する新聞や国語辞典を素材として問題を開発しています。その問題を通して、単なる「語彙の知識」だけではなく、「語彙の運用力」や「読解基礎力」を合わせて測定します。みなさまが生涯学習の中で、自ら社会を読み解き、たくましく生きる力を培うことを『語彙・読解力検定』を通して支援していきます。すべての学びは「語彙力・読解力」から始まります。

ということである。
なんだか、面白そうだ。

11月の検定が第2回だから、まだ出来たばかりである。
級は英検などと同じように、1級から5級まであり、
1級の下に準1級があり、2級の下に準2級がある。
全部で7つの級があるわけだが、今のところ実施しているのは、
準1級と2級と準2級の3つで、あとは「開発中」とのことだ。

試しにネットに出ている3つの級の出題例にチャレンジしてみた。

検定は、一般的な言葉の意味を問う「辞書語彙」、
社会の出来事やニュースの言葉の意味を問う「新聞語彙」、
そして新聞の社説などの記事をどれだけ読み解けるかの「読解」。
この3つの領域から出題される。

出題例にチャレンジした結果は…
「辞書語彙」と「読解」はまぁまぁというところだったが、
「新聞語彙」はかなりむずかしかった。
社会、科学技術、文化、医療・生活の4分野があり、
これらの知識がなければ、まるでわからない。
幅広い分野での知識が求められる。

受検会場は全国7ヵ所だけど、大阪は北と南の2会場がある。
よし、この検定を受けてみよう。

さっそくネットで準1級の受検を申し込んだ。
実施日は、前述したように11月13日である。

公式テキスト「合格力養成BOOK」というのがあるので、
ネットで申し込もうとしたら、送料だけで500円もかかるという。
1,260円のテキストに500円は高すぎるじゃないか。
そんな出費はアホくさいので、書店へ探しに行った。

書店を2軒回ったが、「資格試験」コーナーにあるのは、
英検や漢検のテキストばかりで、このテキストはなかった。

帰宅してもう一度ネットを見たら、
「朝日新聞販売所からもお買い求めいただけます」とあった。
うちは朝日新聞なので、さっそく販売所へ電話してみた。

「語彙・読解力検定のテキストってありますか…?」
と訊いてみたら「取り寄せになりますが」とのことだった。
「送料とかは、いりませんよね」と僕はいちおう念を押す。
「はい、いりません。取り寄せたらお宅へお届けしますけど」
そう言ってくれたので、よろしく~とお願いした。

そんなことで、2ヵ月後の検定に向けて、少し勉強することになる。

実はここのところ、英検準2級を受けるつもりで英語を勉強してきた。
10月の検定をめざして、試験問題集などをやってきたが、
どうもリスニングと長文が難しくて、壁にぶつかっている。
さらに、面接試験も、まだまだ自信がない。

短期間で集中的に勉強を、と考えていたが、もう少し長期戦略が必要だ。
やはり英語の聴き取りや長文の読解は、
じっくりと時間をかけなければ身につかない。

…ということで、英語の勉強は続けているが、計画の立て直し中である。

「語彙・読解力検定」は、その気分転換になればいいなと思っている。

二兎を追う者なんとやら…になるかも知れないけれど。

 

 

 

 

 

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ドジョウがウナギに…?

2011年09月05日 | ニュース・時事

野田新首相の評判が、思いのほか、いいみたいだ。

あのウルウルした目はダチョウ倶楽部の上島にそっくりだなぁ、と、
ひと目見た時から思っていたが、今やネットでそのことが満載だ。
ま、誰の思いも同じ、というところか。

野田さんは麻生・鳩山・菅各首相らにないものを持っている、
…というか、人間の雰囲気自体が、それらの人たちと全然違う。
見た目はイマイチだけど(失礼。アイム総理~)、
余計なパフォーマンスをしない、という感じはする。
仕事をするふりだけ達者、という首相には飽き飽きだから。

野田さんには「愚直な」という形容詞がつくこともある。
この言葉は、馬鹿正直とか気が利かないという意味なので、
まさか本当に愚直なら、一国の総理など務まらないだろう。
要するに、そう見えるのが、日本人好みなのだと思う。

「愚直」な外見のわりに、口を開くと、話が上手で中身が濃い。
その言葉は、何気ないようでとても周到、かつ深みを感じさせる。
普段は、ぼぉ~っと見えているが、話す言葉は味わい深い…
というのは、映画「ロッキー」の主人公を思い出させるなぁ。

そんなことで最近のテレビ報道等では、野田さんを知る人は、
口をそろえて、「いい人です」と言ってほめている。

やはり「地味」というのが、みんなを安心させるのかも知れない。

野田さんの奥さんも、人前に出ることはニガ手だという。
元宝塚ガールだった鳩山さんの奥さんや、
夫顔負けの論客だった菅さんの奥さんのように、
目立ちたがり屋の奥さんでは全然なさそうである。

そんなことも野田さんを引き立てる一因となっているのかも知れない。

ともあれ、野田さんの評価は、上がる一方だ。
世論調査による支持率も、大きく上がった。
まさに、人気はウナギのぼりである。

ウナギのぼり…?

は~て。
野田さんは、ウナギではなく、ドジョウではなかったのか…?

本人はしきりに自分のことをドジョウ・ドジョウと言っているが、
いつのまに、ウナギになっちゃったわけ…?

 

 

 

 

 

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パリの思い出 お笑い編

2011年09月03日 | 旅行

ブログ仲間ちひろさん(馴れ馴れしい言い方ですみません)が、
先月、ご自身のブログのテンプレートを、新しいものに変更された。

 http://namcleblog.blog88.fc2.com/

エッフェル塔や凱旋門のデザインがなんとも可愛く、
甘美なフランス映画の音楽がその背後から聴こえてきそうである。

女性には、こういうテンプレートがよく似合いますよね。

その点、還暦を過ぎたおじさんなどは、テンプレート探しが難しい。
こんな可愛いデザインを使ったら、気持ち悪がられてしまう  。

ところで、パリって本当に素敵な街だ。

これまでの海外旅行先はパリが一番多くて4回行った。
最後に行ったのは3年前の春だった。

ちひろさんのテンプレートを見て、パリを懐かしく思った。

そこで今日は、パリで体験した笑い話をいくつか書いてみたい。

まず、地下鉄の中での体験談。
パリの地下鉄には、補助椅子がついている。
車両は日本と違い、対面式のボックス・シートで、
ドアに一番近い背もたれの裏側に補助椅子がくっついているのだ。

こんな具合である(矢印の部分の青いのがそれ)。


 

 

これをグイっと広げると、腰掛け用の椅子になるのだが、
お尻を上げると、椅子はバネの力でバタンと元の位置に戻る。

ある時、妻とパリの地下鉄に乗ってドアの前に立っていたが、
この補助椅子が目に付いたので、ためしに広げて座ってみた。
妻は、僕と向かい合う形で、立ったままだ。

妻と会話を交わしているうちに、降りる駅が近づいてきた。
ドアの上部に地下鉄の路線図が貼ってあったので、
僕は席を立ち、妻に「ここが僕らの降りる駅やで」と指を差した。

そして、うっかりそのまま椅子に腰を下ろしたのである。

ドスンうわっ。

座っていた補助椅子は、僕が立った瞬間に元に戻っており、
僕が再び腰を下ろしたときにはもうその位置に椅子はなく、
僕はドテ~ンとひっくり返って床に尻を打ちつけたのである。

あ、痛ぁ~!

僕が思わず悲鳴を上げたものだから、周囲のフランス人たちは、
一瞬驚いてこちらを見たけれど、さすが紳士・淑女の国である。
すぐに目をそらし「見てないもんね」というふりをしてくれた。

じ~っと僕を見つめていたのは、あまりの僕の間抜けぶりに、
あっけにとられ、目が点になっていた妻ひとりだけであった。

いやぁ、お尻が痛かった以上に、恥ずかしかったなぁ。

このバネ式の補助椅子は、ストラポンタンというそうである。
そして僕みたいにひっくり返る人間を、アンポンタンという…
のかどうか、それは知りませんけど。

次に同じ地下鉄での話。
シートに座っていたフランス人女性が、
立っていた僕と目が合った時、
「ぼん、座る?」と言った。
「ぼん…?」
なんやそれ。このマダムは日本語をしゃべるんかいな…?
それも「ぼん」やなんて。
最近は日本でもあまり聞いたことがないコトバだ。

それに「座る?」と言ってくれた割には、席は満席だった。
マダムが席を譲ってくれるという雰囲気でもなかったし。
どこに座るんや、と思い、「はぁ…?」と首をかしげて見せた。
するとマダムはまた、「ぼん、座る?」と言ったのである。

実はマダムは「ボンソワール」(こんばんは)と言っていたのだ。
そのことに気が付いたのは、地下鉄を降りてからであった。

またカフェでは…。コーヒーを注文したら、ウエイトレスが、
「ウィ」とかなんとか言ったあと、「めし? ボク」と聞いた。

「めしと違うがな、コーヒーやがな」と僕が身振りで伝えると、
彼女はまた、「めし? ボク」と言って、ほほえむのであった。
「めし」なんて食べるつもりはない。しかも「ボク」ってなぁ。
僕は返事をせず、黙って彼女から目をそらせた。

それが…
メルシーボクー(ありがとうございます)
だとわかるまで、1分以上かかった。

…さて、最後は飛行機の中でのことだけど、
パリの空港へ到着し、乗客がぞろぞろ出口に向かって歩いていた。

フランス人乗務員の垢抜けたおネエさん方が通路で見送ってくれた。
笑顔で「さようなら」という意味の言葉を、乗客たちにかけている。

「さようなら」は仏語で「オ・ルボワール」と言うそうである。
むろん本物のフランス人だから、教科書的な発音はしない。
すると「オ・ルボワール」という言葉が…
「オバァ~」に聞こえるのだった。

乗客に日本人は多かったが、特に年配の女性たちが多かった。

何人もの客室乗務員が、あちらからも、こちらからも、乗客に、
「オバァ~」「オバァ~」「オバァ~」…
と、にこやかに声をかけているのだ。

「オバァ~」「オバァ~」「オバァ~」…

とうとう、ある日本人グループの女性の一人が声を出した。
「ええい、やかましいわ。誰がオバァやねん!」

これらの話、ほんまかいな…と思われるでしょうね。

まあ、多少はフィクションも混じっていますけど…

先日ちひろさんが、僕のどこまで本当だかわからない話を、
「のんフィクション」ですね、と言ってくださった。

「ノンフィクション」なのか…?
のんの「フィクション」なのか…?
あるいは両方を含んだものなのか…?

うまく表現していただき、恐縮しつつ、喜んでいる。

…ということで、みなさま、今日はこれにて失礼します。

台風には十分お気をつけください。

オバァ~  

 

 

 

 

 

 

 

 

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短命首相と長命耳鳴り

2011年09月01日 | 心と体と健康と

毎年、首相が変わる。
首相が変わるたびにブログに必ず書いていることがある。

それが、耳鳴り。
これは、もはや僕の中で恒例になってしまった。

今回も野田新首相が誕生したので、これを書かなければならない。

僕の耳鳴りは4年前、2007年の9月に発症した。

忘れもしない9月26日の夜。
ちょうど福田新首相が誕生した日だった。

その後の首相の変わりようは、次のとおりである。

91代 福田康夫  2007年9月26日 
92代 麻生太郎  2008年9月24日  
93代 鳩山由紀夫 2009年9月16日
94代 菅直人   2010年6月8日
95代 野田佳彦  2011年このたび

耳鳴りが発症したのが福田首相の就任と同じ日だったので、
退任するときも一緒に耳鳴りが消えてくれぇと念じていた。

そして1年後に、福田首相は退任した。
しかし、耳鳴りはそのままだった。

ねぇ、福田さん。
僕の耳鳴りを残して自分だけ消えるなんてひどいじゃ
ないですか。
そう思いませんか…?

で、後任は麻生太郎で、僕の耳鳴りはこのおじさんに引き継がれた。

その麻生首相も、1年後に民主党の政権交代の波に呑まれて退任した。
ここでも、麻生首相は去ったのに、僕の耳鳴りは残った。

期待された民主党も、フタを開けてみれば全く頼りにならず、
鳩山首相も、福田・麻生と同じように、1年で退任した。
だが、ここでもやっぱり耳鳴りは退任してくれなかった。

そして、福田から数えて年替わり4人目の菅直人が首相の座についた。
しかしこれもまた「政権しがみつき」の甲斐なく、このたび退陣した。
耳鳴りの方は、僕にしがみついたまま、退陣する気配すら見せない。
何度も何度も退陣要求を突きつけるのだが、耳鳴りは知らぬ顔だ。

首相は何度も変わったのに、耳鳴りは残った。

山本周五郎の不朽の名作「樅の木は残った」ならいいけれど、
「耳鳴りは残った」ではシャレにもならぬ。
このまま「不朽の耳鳴り」になるのではあるまいな。

耳鳴りは5人目の首相の誕生時にも、まだ存在し続けるのである。

首相が連れてきた僕の耳鳴りなんだからね。
人が違うも党が違うもヘチマもない。
首相に持ち帰ってもらわなければ…

野田さん、野田さん。
あなたはかつて小泉首相に、国会の質問の中で、彼の世襲を批判して、
「小泉さんは四世でしょう。ルパンでも三世までですよ」
と、イキなことをおっしゃってましたよね。その顔で。

またアテネ五輪の室伏選手の金メダルにひっかけて、
「室伏選手はハンマー投げですが、小泉さんは丸投げの金メダリストです」
と、味のあることをおっしゃてましたよね。その顔で。

僕の耳鳴りに対しても、その顔で、何かひと言、
こいつをヘコますようなセリフを投げつけてくれませんか?

そして退陣される際には、この耳鳴りも一緒に連れて消えてください。

僕が、新首相に期待することといえば、そのことだけです。

 

 

 

 

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