バトルロイヤル始まる

いよいよバトルロイヤルが始まらんとしています。
バトルロイヤルとは、リングの上で大勢のレスラーが一同に戦い
全員をリングアウトかフォール勝ち、ギブアップさせた選手が
勝利を収めるというプロレスの戦い方です。

協力して人数を減らしていかないと、一人で頑張ると、簡単に
リングアウトさせられてしまいます。
その為に、誰と協力して少人数に成るまで戦い、最後に個人戦で
相手を倒するか、計算をして戦います。

この戦いをで、これまで多くの勝利を収めて来たアメリカは、
最近の失敗を考え、先手必勝のパターンで攻めようと、金髪の
牡牛、トランプ選手を送り込んできました。
まずは、ゴング前に、マイクを持ち、大声で、パフォーマンスです。
俺が一番で、アメリカが勝つ！と、リングの真ん中で仁王立ちです。

そんな中、突然、リング外で、中東のレスラーが、凶器を使って
観客に襲い掛かりました。
それを見たトランプ選手、そのレスラーに向かって、鋭いドロップキック、
レスラーは、もんどりうってKОされました。

しかし、見ていたロシアのシロクマ、プーチン選手は、怒り心頭です。
吹き飛ばされたレスラーは、プーチン選手のセコンドです。
まだ、試合は始まらないと言うのに、リングの中は、緊張感が漂い
一発触発です。

リングの上では、最近力を付けて来た中国の巨竜シュウ選手が、
そんな二人の様子を見ながら、如何にこの戦いに勝利するか
鋭い目で睨みつけています。
しかしながら、選手の中に、最近目立とうとやらた派手な挑発をする
北朝鮮出身のキム選手が、気になって仕方が有りません。
リングに登場する前から、場外乱闘で自分の身近な選手を倒したり、
観客に凶器を振り回したりしています。

余りにも危険な行為の為、リングに上がる事は認められなかったのですが、
選手として出場できなければ、凶器で見ている人にも危害を加えると言います。
出来るなら、リングに上げたくないと思っているのですが、観客に手を出すと
脅されて、仕方なく凶器を持ち込まないと言う条件で受け入れたのです。
しかし、彼は、凶器を持ったままリングに上がろうとしています。
このままでは、出場選手が、凶器攻撃を受けるだけでなく、観客の中にも
けが人が出るかもしれません。

相変わらず、リングの外で、凶器を振り回し叫び続けているのを見て、
敵同士とは言え、中国のシュウ選手とトランプ選手が耳打ちをしています。
しかし、先程、自分のセコンドに危害を加えられたプーチン選手は、
怒り心頭の顔でコーナーから動きません。

リングの上には、トランプ選手に協力するヨーロッパ出身の選手が、
数名いるのですが、最近の単独行動に、いささか呆れ気味であり、
これら大国出身の選手を遠巻きに見ています。

そんな中、トランプ選手のコーナーに、見たようなセコンドが付いています。
いつも密着して身の回りを手伝っている、日本出身の、腰ぎんちゃく阿部です。
レスラーの格好をしていますが、いつも自分は戦わず、トランプ選手の後を
ピッタリとフォローしています。
大国のレスラーと変わらない体格なのですが、口は出すものの、実際に戦わず
いつも観客からブーイングを飛ばされています。

これまで、アメリカ選手の戦いは、多くの国の選手と協力して、お互いの
力を出し合って、主導権を握って行くものでしたが、トランプ選手となると
最初から勝利宣言をし、単独でも戦うと主張します。
その為、中国のシュウ選手やロシアのプーチン選手は戸惑いがちです。
自分達もお互いに戦うのですが、暴走気味の戦い方にあまり協力的な
態度ではなく、むしろ、単独行動を警戒している状態です。

しかし、同じ戦いの仲間であっても、バトルロイヤルは、面倒な選手が
入って来ます。
特に、独裁国家出身のキム選手は、同じ条件で戦おうとせず、ルール無視の
凶器攻撃に出ようとしています。
ともかく、この凶器を取り上げることが先決と言えますが、中々応じず、
更に大きく振り回し、観客の近くをうろついています。

観客の前で、誰が一番強いのかを、ルールに則て見せたいものの、
今回の戦いは、中々試合が始まりません。
リング上で、大国の選手やその他の国々の選手がにらみ合う間も、
観客の注意は、リング外で暴れるキム選手に注がれています。

もし、リングに上げなければ、観客に危害を加えると叫び続けています。
一体どのように戦ったら良いのか、自分達の戦いの姿を多くの観客が
固唾を飲んで見守っています。
中々試合が始まらないのに、業を煮やしたトランプ選手が、突然リング下に
駆け下り、リングの下から何かを取り出そうとしています。

観客サイドから見えにくいのですが、何やら巨大な武器の様です。
キム選手の挑発行為に対し、武器を出そうとしています。
どうやらマシンガンの様ですが、当然、レスリングではルール違反の
凶器です。
大声で、これ以上危険な行為をするなら、これを出すと叫んでいます。

リングの上で、ルールの下、実力の戦いが行われるはずが、何やら
不穏な空気が漂っています。
観客も興奮気味であり、選手に挑発され、観客の中には、自ら隠し持った
凶器を振り回そうとしている危険人物がいる様です。

しかしながら、そんな緊張の場面を見ながら、リングの上の選手も、
もし、凶器に依る戦いが始まれば、自分達も参戦するとばかりに、
目が輝いています。
何しろ、ロシアのプーチン選手も、中国のシュウ選手も、リングの下には
機関銃や青竜刀を隠し持っているのですから。
どの様な戦いになるのか、今回は全く予想が付かないものの、
もし、凶器を使うとなったら、これまでにない、流血の戦いと成り
レスラーだけでなく、多くの観客も巻き込まれると思われます。

しかし、レスラーでない観客は、身の危険を感じているかと思いきや
観客の後ろの方で、何やら電卓をたたいている男たちが多数います。
そう、彼らは、選手のバックに付く資本家たちと、戦いに多額の
金銭を掛けている武器商人たちです。
彼らの思いは、どんな戦いに成ろうと、自分達の懐が潤えば良いのです。

さて、いよいよ、戦いのゴングが鳴ろうとしています。
どの選手も、ギラギラとした目で、勝利を勝ち取ろうと身構えています。
トランプ選手のセコンドに付いた阿部選手も、ハラハラドキドキです。
自分は戦わないものの、自分を支持する観客がリングサイドに多くいます。
キム選手の凶器攻撃に晒されるかも知れないのですが、トランプ選手に
しっかりと付いていないと、戦いが終わった時、ご褒美がもらえません。

このバトルロイヤルは、残念ながら、レフリーが居ません。
と言うより、選手たちが全く聞いてくれないので、見守るしかないのです。
各国代表から選ばれた国際連合レフリー協会は、試合を進める力を持たず
観客の一部と成っているの過ぎません。
ルールが無い、この国際大会は、果たしてどの様な力が制するのか、
観客を巻き込み、いつになく緊張した試合となりそうです。