羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

満開の墓参り……寛永寺にて

2015年04月02日 20時05分42秒 | Weblog
 午後から神田で仕事の打ち合わせの予定がはいっていた。
 そこではやめに自宅を出て、鴬谷から寛永寺の第二霊園にある野口先生のお墓参りに伺った。
 桜は満開。見事に咲き誇っていた。

 一組の父娘らしき親子連れが墓参にきているだけで、他には人が見当たらない。
 静寂そのもののなかで手を合わせ、「野口体操101」の報告を行った。
『野口体操入門』再刊のこと等々、よき報告がいくつもあった。

 それから国立博物館の横を通りながら、上野公園へと歩みを進めた。
 先生と何度も通った道。
 歳月は記憶を美しい幻影にかえてくれるようだ。決して幻影ではなく、現実に起こったことなのに、不思議な感覚に浸されてしまった。

 いよいよ上野公園に入って行くと、次第に花は喧噪に包まれる。
 大道芸がそこかしこで披露され、拍手や歓声が上がっている。
 動物園の前まですすみ、先を眺める。
 花のトンネルが空の青さに溶け込んでゆく。

 ここは野口先生の野辺送りの暮れ方に佐治さんと歩き、亡くなった井上修美さんとも歩いたことがある。
 どんなに多くの花見客でごった返していても、一人歩くうちに何も聞こえなくなる。
 折からの風に散らされる花びらの音が、亡くなった二人への鎮魂歌を奏ではじめた。

 上野の桜は、散華であり、祈りであり、やはり哀しみである。
 移ろう季節に、淡い花の色に、そして儚さの向こうに、彼岸をみたような気がした。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする