午後から神田で仕事の打ち合わせの予定がはいっていた。
そこではやめに自宅を出て、鴬谷から寛永寺の第二霊園にある野口先生のお墓参りに伺った。
桜は満開。見事に咲き誇っていた。
一組の父娘らしき親子連れが墓参にきているだけで、他には人が見当たらない。
静寂そのもののなかで手を合わせ、「野口体操101」の報告を行った。
『野口体操入門』再刊のこと等々、よき報告がいくつもあった。
それから国立博物館の横を通りながら、上野公園へと歩みを進めた。
先生と何度も通った道。
歳月は記憶を美しい幻影にかえてくれるようだ。決して幻影ではなく、現実に起こったことなのに、不思議な感覚に浸されてしまった。
いよいよ上野公園に入って行くと、次第に花は喧噪に包まれる。
大道芸がそこかしこで披露され、拍手や歓声が上がっている。
動物園の前まですすみ、先を眺める。
花のトンネルが空の青さに溶け込んでゆく。
ここは野口先生の野辺送りの暮れ方に佐治さんと歩き、亡くなった井上修美さんとも歩いたことがある。
どんなに多くの花見客でごった返していても、一人歩くうちに何も聞こえなくなる。
折からの風に散らされる花びらの音が、亡くなった二人への鎮魂歌を奏ではじめた。
上野の桜は、散華であり、祈りであり、やはり哀しみである。
移ろう季節に、淡い花の色に、そして儚さの向こうに、彼岸をみたような気がした。
そこではやめに自宅を出て、鴬谷から寛永寺の第二霊園にある野口先生のお墓参りに伺った。
桜は満開。見事に咲き誇っていた。
一組の父娘らしき親子連れが墓参にきているだけで、他には人が見当たらない。
静寂そのもののなかで手を合わせ、「野口体操101」の報告を行った。
『野口体操入門』再刊のこと等々、よき報告がいくつもあった。
それから国立博物館の横を通りながら、上野公園へと歩みを進めた。
先生と何度も通った道。
歳月は記憶を美しい幻影にかえてくれるようだ。決して幻影ではなく、現実に起こったことなのに、不思議な感覚に浸されてしまった。
いよいよ上野公園に入って行くと、次第に花は喧噪に包まれる。
大道芸がそこかしこで披露され、拍手や歓声が上がっている。
動物園の前まですすみ、先を眺める。
花のトンネルが空の青さに溶け込んでゆく。
ここは野口先生の野辺送りの暮れ方に佐治さんと歩き、亡くなった井上修美さんとも歩いたことがある。
どんなに多くの花見客でごった返していても、一人歩くうちに何も聞こえなくなる。
折からの風に散らされる花びらの音が、亡くなった二人への鎮魂歌を奏ではじめた。
上野の桜は、散華であり、祈りであり、やはり哀しみである。
移ろう季節に、淡い花の色に、そして儚さの向こうに、彼岸をみたような気がした。