電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山響第296回定期演奏会でシューベルト、シューマン、ハイドンを聴く

2021年10月25日 06時00分15秒 | -オーケストラ
よく晴れた10月の空の下、山形テルサホールにて、山形交響楽団第296回定期演奏会を聴きました。
今回のプログラムは、次のとおり。

古典派からロマン派への潮流への旅路
  〜古典音楽の名手 鈴木秀美と山響の友情と、名手 三輪郁との共演が誘う〜
 2021年10月24日(日) 15:00開演 (14:00開場)
 山形テルサホール
 演奏:鈴木秀美 指揮 山形交響楽団、三輪 郁(Pf)
 曲目:
  シューベルト:交響曲 第7番 ロ短調 「未完成」D.759
  シューマン:ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
  ハイドン:交響曲 第104番 ニ長調「ロンドン」Hob.I:104

午後2時の開場に合わせて早めに到着、少し周囲を散歩した後で入場して西濱事務局長と今日の指揮者・鈴木秀美さんによるプレコンサートトークを聴きました。最近、シューベルトの「未完成」が取り上げられる機会が少なくなっているそうで、楽員の中からリクエストがあり、今回久々にプログラムに組んだのだそうです。鈴木秀美さんいわく、シューベルトは心の中に響く旋律をppで表現する傾向があるのだそうで、そういえばここぞというところで流れる有名旋律はたしかにppが多いです。シューマンのピアノ協奏曲については、妻クララのために作られた曲ということもあるでしょうが、1900年までに演奏された約190回のうち100回はクララが演奏しているのだそうです。それはすごい! 最初の女性の職業ピアニストというだけでなくこの曲の評価が定着するのに果たした役割は大きいです。最後のプログラムがハイドンですが、シューマンとハイドンの間の年代差は約40年ほどだそうです。高校や大学を卒業した人が還暦を迎えるくらいの時の流れにより、古典派からロマン派へ、人々の好みもスタイルも大きく変わったと言ってよさそうです。

1曲め:シューベルトの「未完成」、楽器編成と配置は、左から第1ヴァイオリン(8)、チェロ(5)、ヴィオラ(5)、第2ヴァイオリン(7)、左後方にコントラバス(3)と弦楽セクションが対向配置に、正面中央にフルート(2)とオーボエ(2)、その後方にクラリネット(2)とファゴット(2),最後方にホルン(2)、バロックティンパニ、トランペット(2)、トロンボーン(3)です。このうち、ホルンとトランペットはナチュラルタイプの楽器を使用している模様です。
指揮者の鈴木秀美さんが登場、指揮棒を使わず、テンポはあまり速くなく、コントラストのはっきりした演奏ですが、むしろロマン的な雰囲気のある明瞭さというべきか。山響の弦楽セクションの音の純度が素晴らしいです。そして第2楽章の木管のソロのところも、金管の音のまろやかさも、しばらくぶりの「未完成」交響曲を堪能しました。

ステージ上にピアノが引き出され、2曲めはシューマンのピアノ協奏曲。楽器配置に変わりはありませんが、トロンボーンが退きます。8-7-5-5-3 の弦楽五部に Fl(2)-Ob(2)-Cl(2)-Fg(2) の木管、Hrn(2)-Tp(2) の金管はナチュラルタイプ、それにバロックTimp. です。ソリストの三輪郁さんは、深緑のドレスで登場、鈴木秀美さんは指揮棒を持って、ゆったりとしたテンポで演奏が始まります。ピアノの音がとてもきれいで弱音と間を重視した繊細な表情を見せ、曲の進行にともないオーケストラがダイナミックな響きを聴かせます。演奏後、聴衆の拍手に応えてのアンコールは、シューマン「トロイメライ」。これがまた、絶品でした。



休憩時にホワイエに出て、三輪郁さんのCDを購入。ほんとにしばらくぶりのCD購入かもしれません。タイトルは「NOVELETTEN」、R.シューマンの作品に加えて、ドビュッシーやプーランク、ゴドフスキの曲を収めたものです。山形大学出版会、2,300円。これは自宅に戻って聴くのが楽しみ。

後半は、鈴木秀美さんお得意のハイドンの音楽から、1795年に作曲されたという交響曲第104番「ロンドン」です。モーツァルトはいわゆる三大交響曲を発表して1791年には亡くなっており、ハイドンにとっても最後の交響曲になります。ステージ上はピアノが退いただけで、楽器編成と配置は変わりません。第1楽章、アダージョ〜アレグロ、鈴木秀美さんのハイドンはやっぱりいいなあ。繊細さと力強さ、コントラストのハッキリした明晰さがとても好みです。第2楽章:アンダンテ、優雅な変奏曲。第3楽章:メヌエット、アレグロ〜トリオ。活気ある音楽。第4楽章:フィナーレ、スピリトーソ。元気よく快速、作曲者の年齢を感じさせない、パワフルな音楽になっています。そういえばハイドンは、この頃は長年の宮仕えを終えて自由の身になり、エステルハージ公の室内オーケストラの人数制限のない、40〜60人規模のオーケストラを想定して作曲できるようになっていたはず。定年退職してしょぼんとしている人は、ハイドンを見習って元気を出してもらいたいところです(^o^)/

今回も、良い演奏会でした。シューベルトといいハイドンといい、鈴木秀美さんの演奏には、以前から好感を持って受け止めています。来年の夏(8月)には、鈴木秀美さんの指揮とアマデウスコアの合唱、やまぎん県民ホールで、新型コロナウィルス禍で変更となったヘンデルの「メサイア」を聴くことができるらしい。また9月の定期には、同じく鈴木秀美さんの指揮で、スティーブン・イッサーリスが登場するらしい。たいへん嬉しく喜ばしいことで、大歓迎です!

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