電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

R.シューマンの歌曲集「詩人の恋」を聴く

2015年05月03日 06時04分38秒 | -オペラ・声楽
五月の声とともに、裏の果樹園の入り口のライラックが咲き始めました。亡父がツツジと並べて植えたもので、ツツジに根元をぎゅうぎゅうと締め付けられていたのを、昨年の春に根元を切り分け、ようやく息をつかせた(*1)ものです。今年もなんとか花房を付けたので、良い香りを楽しめます。その隣にはプルーンが可憐な花を開き、もうすぐツツジも牡丹も咲き出すでしょう。

そんな季節に思い出されるのが、

Im wunderschönen Monat Mai,
Als alle Knospen sprangen,
Da ist in meinem Herzen
Die Liebe aufgegangen.

Im wunderschönen Monat Mai,
Als alle Vögel sangen,
Da hab ich ihr gestanden
Mein Sehnen und Verlangen.

「美しい五月に」で始まる、シューマンの「詩人の恋」です。

学生時代に、この曲が好きで、フィッシャー=ディースカウとイェルク・デムスによるドイツ・グラモフォンのLP盤を購入し、何度も何度も繰り返し聴いたものでした。第二外国語でドイツ語を選択していたせいもあり、ハイネの詩もところどころ分かるのが嬉しかったものです。



そして、歌もさることながら、ピアノ伴奏のところが素晴らしい。まるで独立したピアノ曲とでも言えそうな長い後奏を持つ最終曲などは、余韻と言うよりも、ピアノが物語の続きを語っているようです。

1840年、シューマン30歳、いわゆる「歌の年」の作品です。この曲を初めて弾いた新妻クララは、シューベルトの歌曲とはまた異なる魅力を持つ、とくにそのピアノが語る物語性と新鮮な響きに、おそらく最初はとまどいを覚えながら、しだいに強く魅せられていったことでしょう。



今は、もっぱらグラモフォンの「シューマン歌曲大全集」(*2)から、フィッシャー・ディースカウとクリストフ・エッシェンバッハ(Pf)による録音で聴いていますが、このCD:4は「女の愛と生涯」「ロマンスとバラード」それにこの「詩人の恋」が収録されており、実に聴き応えのあるディスクとなっています。美しい五月に「詩人の恋」を聴く。これは、学生時代から変わらない、とくに鮮やかに春がやってくる故郷にUターンしてからは、格別に印象深い習慣となっています。

(*1):ライラックとツツジを並べて植えると~「電網郊外散歩道」2014年5月
(*2):シューマン:歌曲大全集を購入する~「電網郊外散歩道」2008年2月
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