電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

火坂雅志『真田三代(下)』を読む

2015年05月20日 06時05分34秒 | 読書
NHK出版から2011年の10月に刊行された単行本で、火坂雅志著『真田三代』の下巻を読みました。上巻を読んだのが2015年の正月ごろ(*1)ですので、ほぼ三ヶ月ぶりです。たまたま某図書館で見つけ、借りてきて読んだものです。

徳川家康に、上野の所領を北条に返せと命じられた真田昌幸は、ひそかに越後の上杉景勝と結び、徳川に反旗を翻します。そのための人質として送られた次男の真田幸村は、上杉家から大変に丁寧に扱われ、幸村は直江兼続という人物に共感します。

真田を攻めた徳川方との戦いは、なんだか一方的なものでした。徳川の派遣軍を散々に翻弄したと言って良いでしょう。真田方の勝利は、諸国に驚きを持って受け止められます。

真田家の独立自尊の気概は、息子のうち兄が徳川方、弟と父親が豊臣方に分かれることになる関ヶ原の戦を通じても示されます。真田攻めにてこずった徳川秀忠の軍勢は、関ヶ原に遅参することになってしまいます。このあたりは、大局観が問われているところでしょう。

それにしても、関ヶ原の合戦の結果はいかんともしがたく、真田の助命嘆願、昌幸・幸村父子の九度山への蟄居、大阪城攻防戦へと続きます。



様々な武将のありようを見ると、その運命は武力や戦術によって決まるのではなく、誰に仕えたかが大きいようです。つまり、外交や政治的判断力によって左右されるというのが本当のところなのでしょう。どうしても宮城谷昌光『楽毅』と比較してしまいますが、残念ながら読後感にあの爽やかさはうすいようです。

真田幸村という人物は、「反徳川」の人にとっては惜しまれるヒーローなのかもしれませんが、徳川を悪役とし真田を称揚するという設定は、明治期以降に皇國史観の立場から推奨されたものかもしれないと思います。その意味では、坂本龍馬と似たところがあるのかもしれません。

(*1):火坂雅志『真田三代(上)』を読む~「電網郊外散歩道」2015年1月

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