電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

リムスキー・コルサコフ「弦楽六重奏曲」を聴く

2009年02月21日 08時43分59秒 | -室内楽
このところ、通勤の音楽としてずっとリムスキー・コルサコフの弦楽六重奏曲イ長調を聴いていました。週末を機に、自宅のステレオ装置で音量を上げて楽しんだり、パソコンに取り込んだ曲を USB 経由でヘッドホン再生し、じっくりと聴いたりしています。CDは、REM というレーベルの 311208 という型番の輸入盤で、演奏は Sextuor A Cordes de L'Atelier Instrumental D'Expression Contemporaine Region Nord-Pas-de-Calais という長ったらしい名前の団体です。リーフレットはどうやらフランス語らしく、当方には手も足もでません。また、頼りの Wikipedia でも、リムスキー・コルサコフの項目(*1)に弦楽六重奏曲という単語は登場しません。それでもさすがは Google 君、Rimsky Korsakov sextet で検索したら、各楽章の出だしを数分ずつ試聴できるページ(*2,ただし英語)が見つかりました。以下は、このページを参考にして書いています。

リムスキー・コルサコフの弦楽六重奏曲とはまたあまり耳慣れない曲目ですが、実は作曲者32歳の1876年、Russian Music Society のコンペティションのために書かれたのだそうです。若々しく華やかで楽しめる曲との評価を得たらしいのですが、残念ながら一等賞は逃してしまったそうな。27歳でペテルブルグ音楽院の教授に就任していた作曲者ご本人は、ナジェージダと結婚、自分に欠けている和声法や対位法などの知識と技術を身につけるべく、懸命に努力していた時代でしょう。自分には室内楽の才能はあまりないらしいと見切りをつけ、あっさりと管弦楽による交響的作品のほうへ注力するきっかけになった作品らしいです。

たしかに、低音域の豊かさもあり、禁欲的で求心的な方向性よりは、どちらかといえば伸びやかで外に向かうタイプの音楽のように感じます。一等賞にはならなかったかもしれませんが、演奏時間が30分を超える、たいへん幸福で魅力的な、立派な音楽ではありませんか。私はこういう音楽、好きですね。

曲は、全部で五つの楽章から成っています。
第1楽章、アレグロ・ヴィヴァーチェ。始まりのテーマの魅力的なこと!主題がヴァイオリンに引き継がれてからも、戸外で弦楽アンサンブルを聴くような、開放感があります。
第2楽章、ロンド・フガート。軽快なスケルツァンド。リムスキー・コルサコフは、なんと6人の奏者でそれぞれ別々にフーガを展開できることを誇りにしていたとか。六重のフーガですか!そういう苦労が評価されなかったら、たしかにちょいと落ち込むかも(^o^)/
第3楽章、スケルツォ:ヴィヴァーチェ・アラ・サルタレッロ。ふつうはここで緩徐楽章となるところでしょうが、スケルツォ楽章です。パルス律動のようなリズムが、たいへん活発な印象を与えます。
第4楽章、最も印象的なのが、たぶんこのアンダンテ・エスプレッシーヴォの緩徐楽章でしょう。第1主題がチェロ独奏で深々と奏されるとき、思わずため息でしたもの。MP3 形式ですので、どうぞこの楽章のさわりを、リンク先(*2)で試聴してみてください。
第5楽章、フィナーレ:アレグロ・モルト。活発なアレグロ楽章で、6人の奏者は互いにせめぎあったかと思うと調和の響きを奏で、フィナーレは大団円を迎えます。

この六重奏曲は、作曲者の死後4年経過した1912年にようやく刊行されましたが、初版はロシア革命の後に見失われたのだそうで、ソ連時代に第2版が刊行されたのだそうな。その意味では、人気曲「シェエラザード」と比べ、世界中の愛好家に親しまれるための十分な時間が持てなかった曲目なのかもしれません。

参考までに、演奏データを示します。
■AIEC String Sextet
I=7'01" II=5'35" III=5'19" IV=9'09" V=6'11" total=33'15"

(*1):Wikipedia 「リムスキー・コルサコフ」の項
(*2):Nicolai Rimsky-Korsakov String Sextet in A Major
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