電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

『小泉八雲集』を読む

2009年02月02日 06時53分47秒 | 読書
新潮文庫で、上田和夫訳『小泉八雲集』を読んでいます。子供のころ、断片的に読んではいるのですが、大人向けの本として、全部を通読するのは初めてです。
「むじな」や「耳なし芳一」や「雪女」の話などはともかくとして、むしろ驚かされるのは、「日本人の微笑」についての分析など、日本文化や伝統についての考察です。本名ラフカディオ・ハーンの周囲には、よほど立派な日本人が集まっていたのではないかと思えるほど、教養ある日本人や日本文化への好意的な見方が印象的。ただし、それも西洋の文明や社会に対する、かなり皮肉で激しい絶望や嫌悪のもたらすものであるようで、礼賛を額面どおりに受け取ることはどうかと思われます。
にもかかわらず、「停車場にて」や「赤い婚礼」などの印象的な短編は、たいへんに劇的な効果を示しながら、記憶に残る文章になっています。
コメント (4)