電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ベートーヴェンのピアノソナタ第3番を聴く

2009年02月15日 06時40分22秒 | -独奏曲
若いベートーヴェン・シリーズで、アシュケナージ以外のピアニストの演奏を集中して聴いております。ベートーヴェンのピアノソナタ第3番、ハ長調、作品2-3です。当方は、悲劇的な第1番、明るい第2番、そして堂々とした第3番という作品2の3曲を収録したアシュケナージのCDのほかに、ブルーノ・レオナルド・ゲルバーによるDENONのCDと、スヴィャトスラフ・リヒテルによる演奏を収録したLPを持っていますが、今回は主としてゲルバーの演奏をじっくりと聴いております。
この曲は、ハ長調という調性の共通点や、演奏に30分近くを要する曲の大きさなどから、「小ワルトシュタイン」と呼ばれることもあるのだそうな。ピアノ学習者が、ベートーヴェンのソナタにはじめて挑戦するときに選ばれることも多いのだそうで、言われてみれば「なるほど」です。

第1楽章、アレグロ・コン・ブリオ、ハ長調、4/4拍子。ターン タカタカタッタ タンタン、というトリル風の面白い音型を持つ主題で始まります。ピアノの音が、響かせてエネルギーを外に発散しようとするアシュケナージと、どちらかというと響きをコントロールし内向する印象のゲルバーと、面白い対照となっています。
第2楽章、アダージョ、ホ長調、2/4拍子。ロマン的な情感をたたえながら、ゆっくりと歌うような第1部と、分散和音による第2部が交代する自由なロンド形式、と言えばよいのでしょうか。青年らしい、とても素敵な音楽だと思います。
第3楽章、スケルツォ:アレグロ、ハ長調、3/4拍子。ピアノソナタで、はじめてスケルツォと名乗ったのではないでしょうか。短いですが、テンポの速い、対位法的な要素が強く出ている音楽です。
第4楽章、アレグロ・アッサイ、ハ長調、6/8拍子。華やかな中に力強さも併せ持つ、ピアノの腕前を披露するには格好の音楽です。たぶん、若いベートーヴェンが、のりのりで弾きまくったのでしょう。ゲルバーの演奏は、全体に速めのテンポを取っておりますが、この楽章の速いテンポでもよくコントロールされ、堂々とした勢いのあるリズムの切れ味は素晴らしいです。

アシュケナージのCDは Polydor の POCL-3401 という型番で、第1番とは録音会場が異なっており、1976年の4月に、ロンドンのキングズウェイ・ホールでアナログ録音されたものです。
ブルーノ・レオナルド・ゲルバーのCDは、DENON 33CO-2203 という型番の正規盤で、1987年の7月29日~30日に、パリのノートルダム・デュ・リパン教会でデジタル録音されています。使用した楽譜は児島新校訂の春秋社版だそうです。
リヒテルのLP(Victor VIC-2001)には、「現代ピアノ界の巨人の演奏」という吉田秀和氏の解説が掲載されています。この中でも指摘されていることですが、出だしはゆっくりと始まり、終楽章をクライマックスとして、これに向かって次第に盛り上がっていく、という構造になっています。LPのB面には第4番が収録されていますが、これもたいへん魅力的なものです。使用ピアノはベーゼンドルファーで、1975年の4月に、ウィーンで収録されたアナログ録音。

■アシュケナージ(Pf)
I=9'57" II=8'30" III=3'13" IV=5'05" total=26'45"
■ゲルバー(Pf)
I=9'44" II=7'07" III=2'56" IV=5'02" total=24'49"
■リヒテル(Pf)
I=10'22" II=7'36" III+IV=8'28" total=26'26"

リヒテルのLPは、たしか就職してすぐの頃に、近所の本屋兼レコード店で購入したはず。この頃の記憶はやけに鮮明です。後年の、お金にまかせて購入し、ろくに聴かずに棚のこやしになっているものとは違う、強い印象があります。
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