ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番を特に意識したのは、たしかバーンスタインがウィーンにデビューしたときだったか、ピアノを弾きながら指揮をしたときである。テレビで見るバーンスタインに対し、「ベートーヴェン気取りかい」と少々意地悪な見方をしていたが、演奏が始まってからは、上機嫌で快活で爽快な乗り乗りの演奏に、すっかり魅了された。ピアノ協奏曲第1番って、こんなにいい曲だったのか、と。
その後、FM放送でエミール・ギレリス(Pf)、クルト・マズア指揮ソビエト国立交響楽団による1976年のモスクワ音楽院大ホールでのライブを録音し、カセットテープでしばらく聞いていた。80年代に入ってからは、アルフレッド・ブレンデル(Pf)、ハイティンク指揮ロンドン・フィルハーモニーの演奏によるLP(Ph X-7718)に魅了された。
最近は、バブル崩壊により新録音が少なくなり、昔の録音が再発売されるだけになってしまったが、輸入激安盤の登場により、かえりみられることなく放置されていた録音も商品として再び光があたるようになった。別に英文の解説書を読まなくても、中身を良く知っている録音ならば不都合はない。そんなわけで、かつてLP時代には手が出なかった演奏・録音を、次々とCDで購入するようになった。レオン・フライシャー(Pf)、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏(SBK-47658)が、最近のお気に入りだ。
第一楽章、颯爽と登場するピアノが、ウィーンに登場した若きベートーヴェンの姿を思わせる。第二楽章のラルゴも、とてもやさしい緩徐楽章だ。当時のウィーンっ子たち(特にご婦人が)参ってしまったのもうなづける。そうして第三楽章、バーンスタインのようなスゥイング感とは違うが、正確なリズムの上に展開される、覇気に満ちたかっこよさ。
この協奏曲は、独奏ピアノと管弦楽のバランスが、それ以前の時代と比較して、ぐっと管弦楽の比重が高まっているように思う。その意味で、いささか録音は古くなったが、セルの指揮するクリーヴランド管弦楽団の演奏は、素晴らしい。時には優しく時には重厚に、弦楽器群の抜群のアンサンブルの中で金管楽器が独特の輝かしさで響きわたる。(セルは、ここぞという時にはトランペットをホルンで裏打ちさせることもいとわなかったらしい。)
前にも書いたことがある(*)が、このピアノ協奏曲でも、第1番のほうが第2番よりも3年ほど後に書かれているとのこと。しかし、出版はこちらの方が先になったため、第1番となった、ということらしい。交響曲やピアノソナタ、弦楽四重奏曲でも同じ様な関係があり、ベートーヴェンはどうやら自信作の方を先に発表するという作戦を取っていたようだ。
(*):電網郊外散歩道:ベートーヴェンの第1番
参考までに、録音・演奏データを示す。
■ブレンデル(Pf)、ハイティンク指揮ロンドン・フィル、1975年11月、ロンドンにて録音
I=17'11" II=12'27" III=8'45"
■フライシャー(Pf)、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管、1961年2月、クリーヴランド、セヴェランス・ホールにて録音
I=16'29" II=12'15" III=8'36"
その後、FM放送でエミール・ギレリス(Pf)、クルト・マズア指揮ソビエト国立交響楽団による1976年のモスクワ音楽院大ホールでのライブを録音し、カセットテープでしばらく聞いていた。80年代に入ってからは、アルフレッド・ブレンデル(Pf)、ハイティンク指揮ロンドン・フィルハーモニーの演奏によるLP(Ph X-7718)に魅了された。
最近は、バブル崩壊により新録音が少なくなり、昔の録音が再発売されるだけになってしまったが、輸入激安盤の登場により、かえりみられることなく放置されていた録音も商品として再び光があたるようになった。別に英文の解説書を読まなくても、中身を良く知っている録音ならば不都合はない。そんなわけで、かつてLP時代には手が出なかった演奏・録音を、次々とCDで購入するようになった。レオン・フライシャー(Pf)、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団の演奏(SBK-47658)が、最近のお気に入りだ。
第一楽章、颯爽と登場するピアノが、ウィーンに登場した若きベートーヴェンの姿を思わせる。第二楽章のラルゴも、とてもやさしい緩徐楽章だ。当時のウィーンっ子たち(特にご婦人が)参ってしまったのもうなづける。そうして第三楽章、バーンスタインのようなスゥイング感とは違うが、正確なリズムの上に展開される、覇気に満ちたかっこよさ。
この協奏曲は、独奏ピアノと管弦楽のバランスが、それ以前の時代と比較して、ぐっと管弦楽の比重が高まっているように思う。その意味で、いささか録音は古くなったが、セルの指揮するクリーヴランド管弦楽団の演奏は、素晴らしい。時には優しく時には重厚に、弦楽器群の抜群のアンサンブルの中で金管楽器が独特の輝かしさで響きわたる。(セルは、ここぞという時にはトランペットをホルンで裏打ちさせることもいとわなかったらしい。)
前にも書いたことがある(*)が、このピアノ協奏曲でも、第1番のほうが第2番よりも3年ほど後に書かれているとのこと。しかし、出版はこちらの方が先になったため、第1番となった、ということらしい。交響曲やピアノソナタ、弦楽四重奏曲でも同じ様な関係があり、ベートーヴェンはどうやら自信作の方を先に発表するという作戦を取っていたようだ。
(*):電網郊外散歩道:ベートーヴェンの第1番
参考までに、録音・演奏データを示す。
■ブレンデル(Pf)、ハイティンク指揮ロンドン・フィル、1975年11月、ロンドンにて録音
I=17'11" II=12'27" III=8'45"
■フライシャー(Pf)、ジョージ・セル指揮クリーヴランド管、1961年2月、クリーヴランド、セヴェランス・ホールにて録音
I=16'29" II=12'15" III=8'36"