電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

井上ひさし氏の蔵書

2005年06月09日 22時28分21秒 | Weblog
山形県川西町の「遅筆堂文庫」(*)には、井上ひさし氏の蔵書が収蔵されており、実際に書き込みや付箋を付けた箇所を読むことができる。岩波の現代生物科学講座や、情報科学講座などのシリーズまでが購入されていることに驚いたが、実際にはほとんど書き込みも付箋もついていなかった。専門書のレベルだと、読みこなすのは難しいのだろうと思われる。しかし、農業統計などのハンドブックや科学技術の一般向け解説書などは実によく付箋が付けられており、技術礼賛の未来論に対しては後ろ向きな記述にアンダーラインが引かれてあった。たとえば、距離のわからない世界一周の航海は、燃料を積む必要のない帆船だからできた、という点に注目している。たしかに、食糧は現地調達できても、燃料は現地調達できない。現地調達できる推進力は風だけである。コンピュータ関係は残念ながら充実しているとはいいがたい。UNIXワークステーションのマニュアルビデオテープがあったのには驚いたが、実際にワークステーションを使った形跡はない。ビデオで見て、どんなものか見当をつけたのだろう。その興味関心の広さに驚くとともに、専門的な力とは別な、大局的な見方ができる力、というものを認識した。
(*):井上ひさし:遅筆堂文庫
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