
<涸沢岳から観た奥穂高岳>
“縦走”は縦に走ると書く。最近はやりのトレイルランニングならいざしらず、ふつう尾根を走るのは難しい。ましてや、3000m級の山をつなぐ尾根を“走る”なんて…。
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我々「老男若女隊」は涸沢岳から北穂高岳までの痩尾根を縦走した。登り口の標識には「北穂高岳まで2時間」とあった。このタイムが上級者の為だということは当然想像できた。初心者の女性3人を含むパーティがこの時間で行けるわけはない。それでも、ゆっくり行って4時間かければ、なんとかなるだろう、と思って挑んだのであった。
コースリーダーの小生が考えた行程は、朝8時に取りついたので、お昼には北穂高岳に着き、そこで1時間程休んで、13時に涸沢ヒュッテに向かって下山。通常は2時間のコースだが、3時間かかったとしても16時、倍かかっても17時にはヒュッテに着けると踏んだのであった。
穂高岳山荘のあるコルから涸沢岳山頂までは順調にいく。この山頂の北穂高側は岩稜が垂直に落ち込んでおり、覗いただけで、十分迫力がある。その脇を鎖をつたって10mほど垂直に降りるのであるが、まずは先頭の小生が降りてみて、驚いた。結構、高度感があり、怖いのだ。鎖に頼って降りるのだが、足の引っ掛かかりを探って下を見下ろすと、恐ろしい程の高度感がある。小生でさえビビるのに初心者たちの女子たちは大丈夫だろうか。
安全が確保できるところまで降りてから、「OK!降りてきていいぞ!」と声を掛けたが、一人でもビビッて動けなくなる者が出たら、この縦走は中止にして、おとなしく、ザイテングラードを降りて行こうと思っていた。ところがだ、若いからなのか、もともと恐れ知らずなのか、こわごわと降りてはくるが、泣き言は言わない。これなら、行けるか。と思って先へ進むことにした。
しかしながら、鎖、梯子の難所は続き、とても“走る”どころではない。安全優先で一歩一歩確実に進む。北穂高岳にはなかなか着かない。ようやく着いたのは12時半。二時間コースに倍以上かかったことになる。北穂高岳山頂下の標識には奥穂高岳まで2.3kmとある。平地の二キロなら30分もあれば着く。4時間半もかかったこの二キロが以下に難路であったかが、わかるであろう。
だが、ホントはここからが大変だったのだ。北穂高岳で昼食を兼ねて1時間近く休んだ後、涸沢ヒュッテ目指して下り始めた。山頂では笑顔で余裕を見せていた彼女たちだったが、縦走の難路を必死で歩いている内にすっかり体力、脚力を使い果たしてしまったのか、思うように下れない。涸沢ヒュッテまでは、標準所要時間2時間、距離2kmの道のりなのであるが、なかなか進まない。
涸沢ヒュッテに全員が着くのに、5時間半も要したのだった。これまた、倍、いや3倍近くの時間がかかってしまった。通常、山荘での食事は17時から18時の間にすますのであるが、我々が食事を始めたのは19時からである。完登を祝って乾杯しようと思っていたのだが、食事の時間は既に終わっているので大騒ぎはできない。小さくなって、食事をすませたのだった。
山行終了時間が19時ではコースリーダー失格である。幸い終日好天だったからよかったが、雷雨だの強風だのに見舞われたら、明るい内に帰れなかっただろう。大いに反省すべきである。

<緊張を強いられる、鎖場>

<痩尾根から見える前穂高が癒してくれる>

<北穂高岳になかなか着かない。前途は多難だ。>

<やっと、たどり着いた北穂高岳>

<距離だけだったら、それぞれ2km程度のことなのだが…>

<涸沢ヒュッテは見えている。が、なかなか着かない>
つづく
穂高岳縦走 (1) 「北アルプス」
穂高岳縦走 (2) 「メンバーと計画」
穂高岳縦走 (3) 「上高地~涸沢」
穂高岳縦走 (4) 「涸沢ヒュッテ~穂高岳山荘」
穂高岳縦走 (5) 「奥穂高岳」