日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「試験の面接」で、優しい先生に褒められたらしい。ほっとして、またうれしくて、踊るようにして戻ってきました。

2022-02-24 08:23:05 | 日本語学校
曇り。

分厚い雲か…と思って見渡したところ、わずかに青空が覗いているところがありました。けれども、すぐに埋まってしまいそうです。薄日が射しても、わずかなものでしょう。おまけに風が冷たい。ビルの間を通っている時には感じなかったのに、開けた所へ出ると、ビュッと吹いてきます。いつもと風の向きが違うような…。

さて、学校です。

火曜日のこと。午前の後半の授業をしていると、何か飛び跳ねているような気がしてふと外を見ると、その日、面接試験があった学生が踊っています(踊ってはいませんでしたが、そう見えました)。体中からうれしさが弾けてくるような感じで、なにかキャーキャー叫んでいます(ガラスの向こうで、声はよく聞こえません)。

まあ、授業中ですから、すぐに目を教室に戻します。

すると、ドドドッと外階段を駆け上がっていく音がしたかと思うと、今度はダダダッと内の階段を降りてきました。いつものように半分ほど開けた戸を目いっぱい開けて、「褒められたぁ。日本語が上手って褒められたぁ。3回も」。もううれしくってうれしくってたまらないという様子。興奮しきっています。

「ホンとかな?」「本当。初めて褒められた。先生が三人もいた。み~んな、本当に優しい。とてもいい人たち」舞い上がっています。

それも無理からぬことなのかもしれません。数日前の他校の面接試験の時、緊張して何も言えなかった(彼女曰く「頭の中にはみんなあった。でも出てこない。あったのに出てこない」)し、これ見よがしに首を傾げられたりしたので、今回は怖くて怖くて、数日、あまり眠れなかったらしい。それが優しい先生に当たって、緊張せずに済んだどころか、褒められたので、一気にうれしさがこみあげてきたのでしょう。結果が出るまで喜ぶのは早いと言っては見たのですが、全く耳に入っていかない。

こちらがあまり構わないので、褒めてもらおうと、今度は二階の教員室に行ってしばらく戻ってきませんでした。

授業が終わってから、ちょっと正気に戻ったのでしょう。

「先生、時間に遅れた。間に合わなかった。」

「えっ?」

「電車間違えた。西船橋で反対の電車に乗った。すぐに気がついて、次の駅で降りたけれども、それからもう一回別の電車に乗ってしまった。バスも、降りてから間違えた。近くに大学があるでしょ。そこと思ったから、そっちに歩いて行った。門の所にいた先生が、違う、違う、あっちって、大きく手で教えてくれた。最初、それに気がつかなかった。やっと気がついて、慌てて反対に行った。向こうの先生たちは笑っていた。こ~んなふうに。大学に着いたけれども、大学って、どうしてあんなに大きいの?大きい、大きい。とても大きい。中で一生懸命走った。門の所にいた先生と一緒に。階段もあった。どうしてあんなに高いの?入ってからずっと走った。」

「へ?先生と一緒に?」

「先生も大変。私も大変。疲れた、疲れた。先生も疲れた。10分くらい時間に遅れた。でも、面接の時間には、間に合った」

「電車を間違えたことを先生に話した?」

「面接の先生には話していない」

午後の授業は二人ですし、もう一人は高校受験のため、数学の過去問をやったり、切りのいいところで面接の練習もせねばならぬということで、「帰ってもいい」と言ったのですが、「誰もいないから、もう少し学校にいたい」と言って残ります。

いると、いろいろと思い出してきて、だんだん不安になるようで、「…せんせい、大丈夫かなあ。一生懸命走って、ブラウスの上のボタンが外れていた。スカーフもズレていた。ここも、ここも、きちんとしてなかった…。」

本人は、失礼だったのではないかと、そればかり気にしています。バスの時間が来たので、帰ると言った時に、「今日はゆっくりお休みなさい。疲れたね」と労うと、気弱そうに頷いて、帰って行きました。

どうか、いい結果が出ますように。

本人は、多分、国にいた頃には考えられなかったほど、この学校で勉強してきました。午前の授業が終わってから、学校で五時近くまで毎日残っての勉強です。教員がついていたこともありますし、自分でやっていたこともあります。何人か同じように残っていたので、それが励みになってはいたのでしょうが、「書くということ」、「読んで考えるということ」、こういうことがなかなか身については来ませんでした。

「覚えて終わりじゃないよ」と言われても、ただ暗記すればいい点が取れるという中で育ってきた人には、理解しがたいことだったのかもしれませんし、また、そう言われてもハッとするような感じでもありませんでした。ただ、少しずつではありますが、慣れてきたような気がします。

大学に入れたら、いろいろと別の体験ができるでしょうし、その一つ一つがいい経験になるでしょう。日本の大学はこういう人たちをこそ入れて、新たな環境で彼らの経験したことのないものを味わわせて、育てていくべきであるような気がするのですが。各大学にはそれなりに問題があるのでしょうから、それも難しいのかもしれませんが。

日々是好日
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