日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「傘が返ってこない…」。

2012-02-06 08:55:40 | 日本語の授業
 曇り。昼頃から雨になるそうです。まだまだ雨は降っていませんから、多分、午前の学生たちは傘を持ってこないでしょう。そして、もし1時頃にも、雨が降っていなかったら、午後の学生たちも傘を持ってこないでしょう。

 持ってこないのは、それとして自分の問題ですからいいのですが、後が困るのです。先生、傘を貸してと来るのです。そして貸した後、返さない…。いえ、返す人は少ないのです。

 つまり、「借りたら返す」という思想を持っていない人たちが多いのです。この学校でも、以前、学生を紹介していただいた方から、「要らないから、用立てて」と傘を寄付してもらったことがありました。それがバアッと、あっという間になくなり、それなのに、また雨が降ると、「傘を貸して」とやって来るのです。この態度が(私たちには)わからないのです。借りたものも、まだ返していないのに。

 もちろん、必ず借りたら返すという習慣がある人もいます。そういう人は「先生、傘をあそこへ置いておきました」と言うので、すぐ「ああ、返してくれたな」と判るのです。が、大半は返さないですね。もう傘に学校の番号を入れて、貸す度に名前と番号を記入してやらなければどうしようもないのかと思われるくらいです。
 
 ただ、そう思い始めた時には既に傘の在庫はなくなっていましたから、思うだけで終わってしまったのですが。

 今、この学校でも、なかなかアルバイトを見つけられずに苦労している学生がいます。彼らの国の感覚で言えば日本は諸事物価が高い。課外活動でどこかへ行くにしても、交通費(これも東京メトロで行きますから、普通は片道230円か高くても270円くらいなのです。学生の懐具合を考えて、安くあげられるように近場を探しています)は、かかります。

 しかしながら、そう言っている彼らを見ていますと、日本語が下手な学生は、そのほとんどが日本の習慣を理解しようとしていない節がみられます。だからアルバイトが探せないのではないか、あるいは探せてもうまくつきあっていけないのではないかとも思われれるのです。この三つが互いに不可欠の要素で、おそらくどこの国に行ってもそうでしょうが。

 ふだんの学校での生活においても、日本語がある程度、話せ、聞き取れている学生は、机の配置換えにしても、年中行事が終わった後の掃除にしても、気働きができるか、あるいは教員の指示にきちんと対応できています。ああ、だからアルバイトが続くのだ、あるいはだからアルバイトが見つかるのだと私たちに思わせます。

 ところが、アルバイト、アルバイトと触れ回っているくせに(つまり、何もすることがないのですから、時間はたっぷりあります)、宿題はしてこない、おまけに授業中も、(授業中は、教科書を見ないように教員が指示を出しています)教科書を見てただ読むだけ。いったいどうやって時間を潰しているのか、どうも彼らの考え方も行動も不可解であるのです。

 それが、「わからん、わからん」と呟いているうちに、ハタと気がつきました。彼らの国では、そんなこと、なんでもない普通のことなのです。だから、ダラダラと一日が暮れていき、またダラダラと明けていく…のでしょう。だから、何もしないことに対して、罪悪感も焦りもないのです。ただお金がないのが困る…だけ。

 もちろん、そのような学生は少数なのですが、大声で喚くだけに目立ってしまいます。「アルバイトがありません」と言う学生には、新聞の折り込みにあった求人欄を見せ、連絡を取らせるのですが、やはり、如何せん、日本語の問題で、なかなか「よし」とはまいりません。けれども、「日本語の問題でしょう」と言うと、頷いて、きちんと午後の学生なら午前中に自習室へ来て勉強するようになりますし、授業中も予習をしてきているのがわかります。

 時々、(彼らの)親御さんの考え方が判らなくなる時があります。一発当ててと言う考え方で、国外から日本の日本語学校へ、子どもをやっている親御さんも、また本人もいるでしょう。それでも、来日後、日本語の勉強を一生懸命にしてくれれば私たちとしても、別に文句はありません。アルバイトの関係上、日本語ができた方が、それは、いいのですから、実利も兼ねているのです。そして日本語の勉強をしているうちに、授業中でも、進学の話が出たり、種々の専攻が話題に上ることもありますから、それを期に、意欲が出てくる場合もあるでしょう。

 日本に来て日本語学校に入ったと言うことは、彼らにとって一つのきっかけになるのです。それを活かすか無駄にするかは、結局は彼らの気持ち次第。人の縁につられて頑張ることもあるでしょうし、その反対に崩れてしまうこともあるでしょう。ちょうどいいタイミングで(何か新しいことを求めている時期に)日本へ来ていれば、それはこの機会を活かして、望み通りの方向へ行けることもあるでしょう。

 曇り空を見つめながら、傘のストックがない…と思うことから、返さないへ不満が沸々と湧き上がり、また例の如く文句がタラタラと…、どうもいけません。

 さて、学生たちがやって来ました。気分を変えて、ニコニコと迎えてやることにしましょう。

日々是好日
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