日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「『東京が富士山の溶岩に覆い尽くされたら…どうしよう』と、本気になって心配していたインド人学生」。

2013-05-22 12:05:13 | 日本語の授業
 晴れ。梅雨が始まったようなお天気です。曇り、後、晴れとのことですから、きっともう少し経てば、このムシムシも収まってくることでしょう。まだ五月なんですから、一応。

 ところで、この「ムシムシ」ですが、こういうと、「虫」の漢字を覚えたばかりの「初級Ⅱ」の学生達は、「虫虫だ。虫だ、虫だ」と喜びます。一方、「無視」を学んだ「中級」の学生達は、聞くや否や途端に、「無視無視」と隣の席の学生を指しながら、互いに言い合ってしまいます。

 教える方も、「そうか、外国人学生はそうとるんだ」なんて、最初はハッとさせられたものですが、劫を経てきますと、「こう言えば、ああ出るだろうな」なんて、だいたいわかってきますから、「来た、来た」になってしまいます。

 この点、教師を始めたばかりの人達は新鮮に感じるようで、「○○さんは、すごい。こう言ったんですよ」と職員室で報告することになってきます。みんな、何でも始めたばかりのころは、外国人学生の一つ一つに驚きを感じるようで、一方、学生の方でも、教師が驚いてくれると、「言った甲斐があった」と大喜びするようです。

 さて、学校です。

 先週の金曜日、「Bクラス」でのことです。話が、「火山」とか「地震」などに至った時のこと、一人のインド人学生が、「富士山はいつ噴火しますか」と、真顔で尋ねるのです。「テレビで言っていました。富士山は噴火します。先生は知っていますか」。

 日本人なら、あるいは日本に長く住んでいる人なら、耳ダコの「話題(?)」なのですが(毎年のように、占い師や宗教者、あるいは科学者が発表しています「今年の○月に富士山は噴火する」と)、彼にとっては青天の霹靂だったのでしょう。しかも、「インドから、心配だ、心配だ。逃げた方がいいんじゃないかと電話があった」と言うのです。

 「ははァ~ん」と来ました。2年前の「津波」の時も、外国で「東京が津波に呑み込まれた」とか、「日本が沈没した」とか、そういう話になっていたようで、スリランカの学生が、「東京は津波で沈んでしまった。お前は大丈夫か」という電話を受けたと言いに来たことがありましたっけ。

 福島の津波を、日本のことをよく知らないその国の報道機関が「東京」と言ってしまったのかもしれませんし、中には「故意に」やらかした国もあったのかもしれませんが。

 彼はどうも「確かなこと」が聞きたいようで(無理です)、なかなか私を放してくれません。日本人の私としては、地震とか火山の噴火などというのは、起こりそうな場所や、だいたいの時期(60年以内とか)などは、専門家なら言えるかもしれませんが、私みたいな一般人に、「確かなこと」なんて聞かれても、だいたい困るのです(もしかしたら、かなり不機嫌な顔になっていたかもしれません。ただ、彼は、私がどんなに不機嫌そうな顔をしてみせても、一向に動じません。それで、私も彼の前では、平気な顔をして、不機嫌な顔でいられるのです。却って、周りの学生の方が気を遣ってしまうようですが)。

 だいたい、私たちが知っているのは、専門家が発表したことか、あるいは週刊誌などに書かれたもの(信頼性のないものをも含めて)ぐらいで、それ以上でもそれ以下でもないのです。それを、地震や火山のことを全く経験したことのない人に言っても(想像出来ませんから)不安になるだけで、彼の望んでいるような「安心感」など、与えることなどできないのです(当たり前です)。また、適当なことを言って安心させても、それは「嘘」でしかないのですから、適当なことも言えません。一時的な安心など、地震や津波、火山の大爆発などを前にしてみれば、愚かなこと…でしかないのです。

「誰にも、いつ噴火するかなんてわからない」と言っても、「でも…」と食い下がってきます。

 「富士山の噴火というのは、先の噴火から、だいたい300年くらい経った頃に起きるだろうと言われている。もうそれは過ぎているから、いつ爆発してもおかしくない。毎年のように、だれそれが今年爆発すると言っている。ある意味では、言葉は悪いけれども聞き飽きたような気分に多くの日本人がなっている。ただし、起こることは確か。今日かもしれないし、明日かもしれない。また10年後かもしれないが。ということは、毎年言い続けさえすれば、その人は予言者になれるということだ。いつかは当たるのだから」

 それから、彼は話題を変えて、富士山から「(噴火で)出るもの」について聞き始めました。最初は噴煙のことかなと思ったので、「東京にも(火山灰が)降ってくるだろう。宝暦の頃の噴火では数㌢積もったと聞いたことがあるから」と言うと、顔色を変えて、「大変だ。大変だ」。そりゃあ、まあ大変ですね。電車も走れないし、電気も止まるかもしれないし…。ただ、彼の大変だと、私の大変だとかちょっと雰囲気が違っていたのです。とはいえ、(授業中でしたから)適当なところで切り上げようとしても、かれは「命が懸かっている」とばかりに話をやめようとしません。

 結局、彼は「聞きたいことがあるから」と、皆が帰った後も残っていたのですが。

 それかも、残った彼と話していると、彼が、やっと「赤いの」と言ったので、もしかして「マグマのこと?溶岩のこと?」で、彼が必死になっていた理由がようやくわかったのです。富士山の溶岩が東京まで流れてくると思っていたのです。それがインドからの電話の大きな問題だったようで、「それはないでしょう。富士山の溶岩が東京まで流れて来るなんて…そんなこと、多分、日本人なら誰も考えたこと無いでしょうねえ」。そうか、富士山の溶岩に東京の街が覆い尽くされるとばかり思っていたのか…で、絵を描いて説明しました。マグマは赤で、灰は白で。それでやっと彼も落ち着いたようで、「火山灰だったら大丈夫。まだ東京にいます。溶岩が流れてきたらどうしようと思っていました」

 本当に、海外で、彼らの親御さんや親戚の人達が、何を本気になって心配していたのか、聞いてみるまではわからないことでした。

日々是好日
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