日本語学校からこんにちは ~水野外語学院~

千葉県市川市行徳にある日本語学校のブログです。日々の出来事、行事、感じたことなどを紹介しています。

「アジサイ、ドクダミ、ホタルブクロ…」。「日本語が面白くなってきた…在日の学生」。

2013-05-20 09:09:35 | 日本語の授業
 雨。シトシトと梅雨時のような雨が降り続いています。

 昨日、久しぶりに花屋に行きますと、「アジサイ(紫陽花)」の鉢植えが売られていました。花色が違うだけではありません。花びら(これはガクだと聞いたことがありますが)の形も違うのです。改良しやすいのでしょうか、毎年、変わっていくような気がします。しかも、何となく、いつの間にか洋物風になってしまったような気さえしまう。華やかで、人目を引くという点では確かに、前にも増してそうなのですが、もはやそこには、青蛙が似つかわしいような風情は感じられないのです。とはいえ、「アジサイ」は「アジサイ」。もうすぐ、梅雨ですね。

 そして、今日、ずっと蕾だった「ドクダミ(蕺菜)」の白い花が咲いているのを見つけました。見るとあちらにもこちらにもザックザク、今にも開きそうな蕾もザックザク。角を曲がると、あるお宅の鉢植えに釣り鐘状の「ホタルブクロ(ホタルブクロ)」が二つほど、俯きがちに咲いていました。「ホタルブクロ」を見ると、もうココロは宮沢賢治の世界へ飛んでいきます。そんなわけで、今朝は雨の匂いを胸一杯に吸い込みながら、ゆっくりゆっくりと歩いて来ました。

 さて、学校です。
 先週の金曜日、「Dクラス(四月生クラスは、いつも、2、3人、早めに来ます)」へ行きますと、なんだか人が少ない…。1時15分になっても、櫛の歯が欠けたよう…。ヤケに人が少ない…。けれども考えてみれば、在日生が三人いるのです。留学生で休んでいたのが二人でしたから、合わせて五人も休めば、ボリュームが減ってしまうのも当然です。5分ほどして、一人、在日生がやって来ました。

 彼は、今年の一月から学んでいるのですが、最初は「タイ(タイ人です)に帰りたい、タイに帰りたい。もうすぐ帰るんだ」と、そればかり。両親に勉強するように言われて、休みがちでも、どうにか、途切れ途切れに続いていた……もっとも、三月は怠けて来なかったのですが…(お父さんが様子を見に来たので、ずる休みをしていたことがばれたのです)。

 それが、その彼が、先日、「日本語、面白いよ」と、四月生達に言っていたのです。そうか、最近張り切っているなと思っていたら、いつの間にかおもしろくなっていたのか…。そういえば、四月生と一緒に勉強するようになってからほとんど休んでいない…遅れても来るようになったし…。

 彼のように17歳くらいで日本へ(無理に、あるいは両親の都合で…かもしれませんが)来てしまえば、もう寂しくってしょうがない。(これまでの生活が一変してしまうわけですから)もう故郷が恋しくてしょうがない…。(母国での友達は)いないわけですから、友人を作るにも一から始めなければなりません。しかしながら、日本語ができない…。つまり、孤立してしまうのです。

 もし、故郷にいたならば、そういうときに友達に電話でもして、一緒に遊んで憂さ晴らしもできたでしょうが、それもできない。寂しくってたまらないのに、両親はただ勉強しろとだけ言う。面白くない。勉強なんて大ッ嫌いだし。で、両親がせっかく勉強できるように設定してくれても、「行きたくない。どうせ日本語なんてわからないんだし…」で、ちょっとふて腐れる。

 ところが、一月から途切れ途切れでも続けていたのが幸いしたのでしょう。四月生の中には「ひらがな」も、彼と同じレベルで満足に書けない人もいましたし、彼は少なくとも、四月生よりも三月は長くいたわけですから、ヒアリングは勝っています。他の人達よりも聞き取れるし、先生の言うことがわかるから直ぐに反応できる。他の学生(四月生)が、尊敬のまなざしで見るだけでなく、「すご~い」なんて言ってくれる。

 それに、まだ若いのです、両親の関係者や同国人の輪などで、知り合いも増え、中には同じくらいの年頃の人もいたでしょうし、その人達の友人で他の国の人や日本人の友人もそれなりにできたのでしょう。どうも日本での生活が面白くなったようです。

 だから、日本語が話せるようになりたいという欲求が出てきたのでしょう。なんにせよいいことです。在日の学生の中では、もしかしたら、今、彼が、一番日本語を面白がっているのかもしれません。勿論、宿題はしてきませんし、覚えろと言われたことも覚えてきません。しかしながら、学校にいる間は本当に面白がって勉強しているようですもの。もっとも、三回ほど、携帯を取り上げましたけれども(他の先生はわかりません)。

 下を向いている時はたいてい携帯を見ているのです。その時は「○○」と名前を呼んで、手を出すと、「え~ん」とか「わ~ん」とか言いながらも、素直に持って来ます。そして休み時間になると「もうしません」と言って返してもらいに来るのです。きっとご両親や親戚にかわいがられて育ったのでしょうね。変な歪みがないのです。勉強しない時も「それはしょうがないか」と思わせていましたし、急に勉強をはじめてもそうか、面白くなったのだな」で終わり。あっけらかんとしたものです。

日々是好日

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。