イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「土と内臓 (微生物がつくる世界) 」読了

2020年03月01日 | 2020読書
デイビッド・モントゴメリー , アン・ビクレー /著 片岡 夏実 /訳 「土と内臓 (微生物がつくる世界) 」読了

この本は「土と内臓」に住んでいる微生物の話だ。その微生物たちは人間や植物と共存関係にあるのだが、そのバランスが崩れるとどうなるかということ、そしてそれを発見するに至る歴史が地質学者と生物学者であるふたりの著者の経験を通して書かれている。なんだかレイチェル・カーソンっぽい構成だ。

土の中と大腸の中(中というのは、チューブの内側ということ)に共通するのは、それぞれそこには大量の微生物が生きているということだ。そしてそれらの微生物は単にそこで生きているだけでなく、植物と細菌、人間と微生物、絶妙な関係で共存しているというのが大まかなストーリーだ。

「土」については、土壌生態学という方面から書かれている。これは著者の庭造りの経験を交えて書かれているのだが、著者たちは化学肥料や農薬を使わずに木の葉や鶏糞などを使った堆肥作りを基本にして庭を造ってゆく。一部は畑として使うようになるのであるが、十分に有効な堆肥を使うと化学肥料も農薬も必要がない。それは土壌の細菌が有効に働くからであるという。植物の生育に必要な栄養素は、窒素、リン、カリウムであるが、その中で、窒素は土壌には存在せず、空気中の窒素を固定することができる細菌の力を借りなければならない。植物は根からその根粒菌を呼び寄せる物質を放出して根の周りに集めて取り込む。その菌に養分を与える代わりに窒素化合物を取り込む。叔父さんの畑で落花生を収穫すると根には気持ちの悪いブツブツがいっぱいくっ付いているがまさしくあれだ。
植物は根粒菌を根の中に取り込み、取り込まれた菌は菌糸を土の中に伸ばして様々な養分を取り込む助けもしている。そして窒素だけでなく、その代謝物からも様々な物質を取り込む。その中には病気のもとになる様々なものを排除する物質もある。そんな根の周りの環境は「菌圏」と呼ばれている。

大腸の内側でも細菌は大活躍をしている。「腸内フローラ」というのは最近よく目にする言葉だが、それである。そこには免疫力に大きくかかわる細菌もある。このあたりは以前に散々NHKで放送していたので聞いたことがある話であった。プロバイオティクスという考えだ。

そして、化学肥料や抗生物質はその絶妙で微妙なバランスを崩してしまう。だから、著者たちは土の世界では有機肥料だけを使い化学肥料や農薬を使わない野菜を造り食べることを、人間の体に対しては腸内細菌をしっかり育てる食生活を推奨する。過去50年で病原体のない慢性疾患や自己免疫疾患が増えている。それはとりもなおさず化学肥料や農薬を使った作物、抗生物質で弱った腸内環境が影響しているのではないかというのが著者たちの結論だ。

そうはいっても増えすぎた人口を養うためには化学肥料に頼らざるおえないのではないかと思う。ミクロ的に見ても有機農法で作った野菜は高価だし、細菌の食べ物であるという食物繊維の多い全粒粉や玄米も高価だ。貧乏人には簡単に口に入るものではない。
カフェインとアルコールは腸内活動にはよくないというけれどもやめようとしても無理だ。だから、この本を読んだからといって僕の生活習慣が変わるわけではない。
ただ、肥満をしても問題ないのではないかと思うホッとするようなことも書かれていた。
それは免疫細胞も免疫細胞を持っているということだ。肥満の人は脂肪細胞の50%はマクロファージでできているらしい。太っているほうが免疫力が高いというのだからありがたい。まあ、これも限度があるだろうけれども・・。

土と内臓というぱっと見では何の関連性もなさそうだが、細菌というキーワードでうまくつながるのだというのかこの本の面白いところだ。
そして、土壌の「土臭い」匂いというのは放線菌という細菌が作る代謝物の匂いだそうだ。これも何らかのかたちで植物の生育に貢献をしているようだが、あの臭い(臭いというより匂いと書いたほうがいいと思うが)を嗅ぐとなぜかホッとする。これも僕の体と土がつながっているからかもしれない。

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