イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

貧すれば鈍する・・。

2020年08月10日 | Weblog

今日は久々に和歌山にやってくる友人と釣りに行く予定であった。そのうちのおひとりはイラストが得意で、安直に「僕の船も描いてくださいよ。」とお願いしてしまったら、本当に描いてくれた。それを届けてくれるというのでそれならいっそ、釣りにも行きましょうよということになったのだ。

夜明け前にタチウオを釣ってみてそれからキスを釣りに行きましょうという計画であったが、今日の予報は南風が強く吹くとなっていて、とりあえずタチウオだけでもということになっていた。

集合時刻は午前4時半。彼らは奈良県内に住んでいるので午前2時の出発になるそうだ。時間通りに集合して、さあ、出発だとギアをリバースに入れたらエンストを起こした。あれ、また舳先のロープをひっかけたかと思ったがどうもおかしい。もう一度エンジンをかけてリバースに入れるとまたエンスト。嫌な予感がした・・。その予感は的中していて、隣のフライングダッチマン号の錨のロープを巻き込んでしまった。
以前からそのロープは浮き気味になっていて、特に南風が吹いているときには僕の船の真下を横切るようなかたちになる。いつも気にしながら、船尾を少し沖に出してからギアを入れるようにしていた。
今日は南風が強かったので船尾を沖に出すとすぐに流されてしまうと思い、代わりに間隔を取るためにフライングダッチマン号の船尾を押してからギアを入れたのだがそれでも流され度合いが強かったようだ。この港ではこういうことが起こらないようにロープに錘をつけて沈めておくものなのだが、以前からこのブログで何度も書いている通り、この船のオーナーはまったく放置状態なのだ。ご奇特なふたつ先に係留している船のオーナーさんがときたま面倒を見てくれているようだが、そこまでは気が回らないようでロープは浮いた状態のままだった。

まったくの不覚だった。なんとかロープをほどこうとのぞき窓からボートフックを差し込んでみるがまったくどうにもならない。スクリューの端を押してもシャフトが回らない。友人には申し訳ないが今日は船を出せませんと説明してどこか陸っぱりで釣りをできるところを探してくださいとお願いしてお帰りいただいた。

少し明るくなってきたのでもう一度トライしてみるが状況は変わらず、まったくお手上げだ。
これはもう、最後の手段しかない。家に帰って海水パンツにはき替え、水中メガネとシュノーケルを持って港へ舞い戻った。去年の夏から水質がよくなってきたとはいえ、決してきれいとは言えない海水の中に飛び込んでロープをまさぐってみた。2周くらいは順調にほどけたが、そのあとは締まり具合が硬くて動かなくなってしまった。もっと深く潜って間近で確かめてみると、ロープがシャフトとブラケットの間に食い込んでしまっていた。これは難儀だ。
シャフトとスクリューを足場にして踏ん張って引っ張るが、抜けたのはわずかに10センチほどだ。仕方がない。これは端のほうからロープをしっかり握ってほどいたほうがよかろうとダッチマン号のデッキによじ登ろうとするのだが、船って一度落ちてしまうと意外と這い上がれない。もちろん僕の船の方が大きいのでそっちにも登れない。そんなパニック映画があるというのが紹介されているテレビを見たことがあるが、まさしくそれだ。仕方がないので港の端にあるスロープまで泳いで元に戻った。(調べてみると、それは「探偵ナイトスクープ」だった。ヨットから、泳ぐために飛び降りた人たちがハシゴを下すのを忘れていて、這い上がれずに溺れながらひとりまたひとりと死んでいくという、ただそれだけの映画だったと思う。)

フライングダッチマン号のデッキにあるロープの端を探してみるのだが、その名の通り(一応、ちゃんとした名前があるはずなのだが、この惨状をみると、フライングダッチマン号というほうがうまく合っているように思う。)でどこに何があるのかがわからない。やっと探し出したロープをほどいてもう一度水の中に入り力を入れてみるがやっぱり動かない。



仕方がない、切ろう。またデッキに戻らなければならない。また泳いでスロープまで行くのは嫌だと思いながら立ち泳ぎのまま考えて、僕の船の舵に足をかけて登る方法を編み出した。なんとか這い上がれた。僕もそこそこ歳だが、必要に駆られると意外と力と知恵が出るものだ。

ナイフを手にしてまたダイブ。まずは巻き付いていない部分を切って繋ぎなおす。これでダッチマン号への応急対応はできた。今度はシャフトに巻き付いて固着したロープを削ぐように切り出してゆく。
シャフトも自由に動くようになった。
所要時間約2時間。腕や肩に擦り傷を作りながらなんとか終了。自分の船をきちんとした位置に固定し、また同じことが起こらないようにダッチマン号のロープを沈める錘も取り付けておいた。
錨のロープなんかを切ってしまうと普通ならえらいお叱りを受けてしまうものなのだが、こんな放置状態の船なら文句を言われる筋合いはない。むしろ、きちんと管理してくれていないからこんなトラブルが起こるのだということを責めたいと思うくらいだ。

このブログは翌日に書いているのだが、昨日の夜に赤く腫れてきた擦り傷は一晩で治まったのに対して、足の付け根や太ももの筋肉痛がひどくなってきた。



あの汚い海水に対しての免疫力はそこそこあるものの、筋力は相変わらずのようだ。というか、意外なほど水中で体を動かしていたらしい。
2回はやりたくない作業であった。

毎日もやもやしたことを考えているからこんなミスをしてしまう。釣れない、へまをする、すべてはひとつに収束する。いつになったら抜け出せるのだろうか・・。

コメント
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