イレグイ号クロニクル Ⅱ

魚釣りの記録と読書の記録を綴ります。

「雑賀の女鉄砲撃ち」読了

2020年01月26日 | 2020読書
佐藤恵秋 「雑賀の女鉄砲撃ち」読了

図書館の書架を眺めていると、またまた雑賀衆が主人公の時代物小説を見つけてしまった。完全無欠の時代劇空想ヒーローの話なんてと思いながら結局またまた借りてしまった。
今度の小説の主人公も女性たちだ。スターウオーズしかり、最近のヒーローものは女性が主人公というのがトレンドなのだろうか。

物語をざっと解説すると、雑賀衆の太田党の統領、太田左近には美人の四姉妹がいた。それも飛び切りの美人ときている。川原家の三姉妹よりも現実味がない。
その四女蛍は鉄砲の名手で、長篠の戦いから秀吉の太田城の水攻めまでの蛍の活躍を中心に描いている。雑賀一族最大のヒーロー、雑賀孫市は今回は敵役として描かれている。
雑賀一族はご存じのとおり、一枚岩でなく、大きくは海側と内陸側で敵対をしていた。海側チームは門徒宗、内陸側チームは根来寺との関係が深い。孫市が統領の海側チームは石山本願寺→豊臣方に与し、対する太田左近が統領の内陸チームは織田信長→徳川家康側についての戦いを演じてゆく。

もちろん、本当の歴史の中にこんな四姉妹がいたという確証はないのだが、歴史の流れは間違いなくトレースされている。これは前回読んだものとは大きく違う。それでいうとこちらの方が少しは読みごたえがあったけれども、こんな小説を書く人もこれはこれで大変だなと感心してしまう。空想の主人公に無理矢理でも歴史を動かす端緒を握らせなければならないのだから。
この小説にも、本能寺の変のあと、家康が堺から逃れるシーンがあって、もちろん護衛として蛍が同行するのだが、おそらくその他の時代小説でも多数この場面を扱ったものがあるのだと思うけれども、それぞれの小説のヒーローが全員集合したら伊賀の里が大混雑したのじゃないかと変に心配してしまった。

僕の出身は海側なので昔から雑賀孫市が戦国最大のスーパーヒーローだと思っているところがあるので、今回はヒール役で登場しているというところにはなんだかなじめないところがある。そして孫市についてもまだまだ知らないことが多い。もともと孫市という名前(孫一というほうが正確らしいが。)も世襲受け継がれ何人もいたらしいけれども、この小説では出身は十ヶ郷(紀ノ川の北側)となっていた。調べてみると確かにそんな説もあるそうだ。また、太田城の水攻めのために造られた堰は今の僕の仕事場辺りも通っていたそうだ。これはこれでまた知りたいことができてきた。

どちらにしても何も考えることなく展開だけを追いかけるだけで読み進められる。久々に大阪へ出た帰り道、缶酎ハイを飲みながら読むのにはもってこいの1冊であった。



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