弁護士湯原伸一(大阪弁護士会)の右往左往日記

弁護士になって感じたことを綴っていきます(注意!!本ブログは弁護士湯原の個人的見解に過ぎません)

タクシー初乗り運賃訴訟と今後の政治の関係?

2009年09月26日 | 経験談・感じたこと
地元大阪のタクシー料金という日常に関係する話であると共に、結局、誰の利益を守ることになるのか、「消費者保護」「弱者救済」をどうやって両立させていくのか、少し気になったニュースです。


(以下、引用)
「初乗り運賃を480円に値下げする申請を近畿運輸局に却下されたのは違法として、大阪市などで個人タクシーを営業する男性が国に却下処分の取り消しと値下げの認可などを求めた訴訟の判決が25日、大阪地裁であった。山田明裁判長は「不当な値下げ競争を引き起こすおそれはない」と判断、男性の請求を認めた。」
(以上、引用終わり)

ニュースへのリンク


消費者の利益を最大限重視する立場からすれば、値段競争は当たり前であり、業界目線で過当競争になるから認可しないというのは不適切という結論に繋がりやすいと思います。

しかし一方で、単価が下がる→収入が減る→収入を補うために過重労働になる→ドライバーにとっては過酷(過酷であるが故に事故の危険性も高まる)→人間らしい生活ができない…というスパイラルを危惧する立場からは、ある程度のところで歯止めを掛けるべきであるという結論になるはずです。
なお、この様なことを危惧して、今年の10月からタクシー運賃の値下げ競争に歯止めをかける法律が施行される予定になっています。

(※今回の裁判に限って言えば、一個人タクシーの初乗り運賃ですので、直ちにタクシー業界全体に影響を与えるとは思えませんが、ある程度の台数を保有しているタクシー会社が追随する動きを見せた場合、他の会社も追随せざるを得なくなるでしょう)



さて、「消費者重視」「弱者救済」の立場を宣言している現政権は、

▽消費者=弱者であるという形式論を踏襲し、消費者の利益を守る方向で進んでいくのか
(→そうであれば、本件の裁判では控訴しない。10月から施行予定の法律も凍結する立場になじみやすいはずです)

▽過酷な労働現場と言われているタクシードライバーを実質的に「弱者」と捉えて、弱者救済に乗り出すのか
(→本件の裁判は当然控訴し争う。10月からの施行予定の法律は粛々と準備を進める立場になじみやすいはずです)

という大まかな基軸の中で、どちらに傾くのか、個人的には注目したいと思います。

どちらの方針を採るかによって、現政権が今後どの様に進んでいくのか予想できるのではないかと思いますし、一筋縄ではいかないことは明らかであるが故に、試金石になるのではと勝手に思うことが理由です。

果たして如何に…。
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