裁判所も「お役所」ですので、平日の日中であれば常に裁判は行われているのではと思う方も多いかもしれません。
しかし、担当する裁判官が公開の法廷で訴訟を実施するのは週に2回くらいです。なお、誤解のないよう先に指摘しておきますが、他の日は非公開の裁判を実施していますので、決して裁判官はさぼっているわけではありません。
上記のように、公開の法廷という対外的に見える形での裁判実施は意外と少ないのですが、公開・非公開を問わず、ある一定の時期になると裁判が全く実施されないことがあります。
主に2つあり、1つは3月の下旬から4月の中旬まで、もう1つは7月中旬から8月にかけてです。
なぜこのような時期が発生するかですが、3月の下旬から4月の中旬はいわゆる人事異動の時期のためです。裁判官は3~5年周期で全国転勤となるため、この時期は担当裁判官が不在となります。後任の裁判官に引継げばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、裁判官は独立性が保証されているため、事件の引継ぎは行われません。このため、後任の裁判官が裁判記録を読み込む時間確保等の理由で、裁判が実施されなくなります。なお、引継がないが故に、前任の裁判官の元で有利に進んでいた裁判が、後任の裁判官によってひっくり返るなんてこともあったりします(逆もまた然りです)。
次に、7月中旬から8月は夏休みです。裁判官は交代で夏休みをとるため、担当裁判官がいなくなると裁判が実施されないことになります(ただ、実際のところは裁判官の都合ではなく、書記官が夏休みをとるため、裁判が実施できないという事情の方が大きいようです)。
我々弁護士は、こういった事情を加味しながら、裁判手続きを戦略的に進めるということもあります。
弁護士 湯原伸一 |