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女筆「洛陽往来」 後半 - 古文書に親しむ(経験者)

(静岡、城北公園近くのツルニチニチソウの群落)

午前中から、娘の嫁ぎ先の法事で、掛川の初馬へ行く。宗旨が浄土真宗で、法事の席の最後に、親鸞上人の和讃、「如来大悲の恩徳は 身を粉にしても報ずべし 師王知識の恩徳も 骨を砕きても謝すべし」に曲を付けた歌を皆んなで歌った。「師王知識」の意味として、「色々教えてくれた先生やお世話になった人々」と説明があった。本来、「教え導く高僧」のことだが、「僧」と云ってしまってはおこがましいから、方便だったのだろう。理解できる。お墓へ参った後の食事の席で、その青年僧に、先日来読んでいた、浄土真宗の教義解説書である「道聴塗説」の話をした。親鸞上人の和讃もその中で解説されていた。

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女筆の「洛陽往来」の読み下し文の後半である。

さてまた辰巳は宇治の里。八幡、山崎、宝寺
松の尾梅之宮御室に近き小塩山。
嵯峨や高雄、愛宕山。太秦、北野、糺の森
賀茂川、貴船、鞍馬寺。岩倉、芹生(せりょう)、八瀬(やせ)の里。
※ 辰巳(たつみ)- 南東の方角。
※ 八幡(はちまん)- 石清水八幡宮がある。
※ 宝寺(たからでら)- 宝積寺。大山崎町の天王山中腹にある真言宗智山派の寺。
※ 松の尾(まつのお)- 松尾(まつのお)大社。お酒の神様。
※ 桂(かつら)- 桂離宮。
※ 梅之宮(うめのみや)- 梅宮(うめのみや)大社。
※ 御室(おむろ)- 仁和寺。別名、御室御所と呼ばれる。御室桜は有名。
※ 糺の森(ただすのもり)- 左京区の賀茂御祖神社(下鴨神社)の境内にある社叢林。
※ 鞍馬寺(くらまでら) 左京区鞍馬本町にある寺。奈良時代の創建で、鞍馬山の中腹にあり、牛若丸や天狗伝説で知られる寺。


いただき連れた小原木や、薪(たきぎ)に花を
折り添えて、思うまゝには言われぬと、
いとも優しき賤(しず)が業(わざ)
吉野初瀬の花待つも、都ぞ春の錦なり。
※ いただき - 頭に物をのせて売り歩く浜の女。ささげ。かべり。
※ 小原木(おはらぎ)- 大原木とも。大原女が京都へ売りに来る薪。かまどで蒸して黒くしたもの。黒木。
※ 吉野(よしの)- 奈良県南部一帯の地名。吉野山には金峯山寺がある。
※ 初瀬(はせ)- 奈良県桜井市の地名。初瀬山には長谷寺がある。


まことや九重には、法華経八軸を地に敷きて、
一度(ひとたび)王城の地を踏めば、極楽世界に
(む)まるゝと、承(うけたまわ)り候えば、
我らごときの愚かなる、賤(しず)の身までも頼もしき事に。
※ 九重(ここのえ)-(昔、中国の王城は門を九重に造ったところから)宮中。禁中。転じて、宮中のある所。都。
※ 八軸(はちじく)- 巻物八巻から成る法華経のこと。


千々詳しき御事は、御見にてこそ。めでたくかしく。
           洛陽四條立売
        筆海子 長谷川氏豊女書
※ 千々(れい)- たくさん。さまざま。
※ 御見(ごけん)- お目にかかること。御面会。
※ 四條立売(しじょうたちうり)- 四条通東洞院東をいう。むかし大内裏の時、諸品を商う市場であった。
※ 筆海子(ひっかいし)- 長谷川妙体。江戸時代中期の書家。女筆妙体流として知られた。京都出身。名は佐多。
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