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女筆「洛陽往来」 前半 - 古文書に親しむ(経験者)

(静岡城北公園の桜(昨日))

午後、「古文書に親しむ(経験者)」講座、今年度の初回である。昨年と同じく、11人の学生でスタートである。初回は女筆の「洛陽往来」を課題とした。ちょっと毛色の変わった、寺子屋の女子用の教科書に使ったものであろう。

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女筆の「洛陽往来」の読み下し文を載せる。前半で、後半は明日。

桓武天皇の御時より、この京はじまり、
四神相応の地にして、こと更、畏(かしこ)
君の御政(まつりごと)、関の戸鎖(さ)さぬ。
折節(おりふし)に、洛陽御見物申すべし。
※ 四神相応の地 -(しじんそうおうのち) 地理的景観が四神の存在にふさわしい地。東に流水(青竜)、西に大道(白虎)、南にくぼ地(朱雀)、北に丘陵(玄武)が備わる土地。平安京の地勢がこれにあたるという。
※ 洛陽(らくよう)- 平安京の左京の異称。右京を「長安」というのに対する。


(みかど)の御宮造りは、申すも中々
愚かなり。先ず音に聞えし東山、
吉田とかやは、天照(あまてらす)御神を始めとして、
日の本六十余州の御神を、勧請ありし霊地なり。
※ 吉田(よしだ)- 現、吉田神社。吉田兼倶が吉田神道(唯一神道)を創始。江戸時代には全国の神社の神職の任免権(神道裁許状)などを与えられていた。
※ 勧請(かんじょう)- 神仏の分身・分霊を他の地に移して祭ること。


弓手に高き御山は、和国無双の比叡山、
伝教大師の開基にて、唐土(もろこし)
天台山を写されたり。中堂、講堂、戒壇堂、
(ふもと)に山王廿一社、甍(いらか)を並べて建ち給う。
※ 弓手(ゆんで)- 弓を持つほうの手。左の手。
※ 無双(むそう)- 二つとないこと。並ぶ物がないほど優れていること。


馬手(めて)黒谷真如堂若王神社
永観堂。東(あずま)下りの道越えて、
祇遠(祇園)の社、清水寺、地主権現の花盛り。
音羽の滝の白糸を、繰り返しつゝ、打ち詠(なが)む。
※ 馬手(めて)- 馬上で手綱を取る方の手。右の手。女手。
※ 黒谷(くろたに)- 左京区黒谷町あたり。法然が草庵を結び念仏をひろめたところ。
※ 真如堂(しんにょじ)- 北区に存在する臨済宗相国寺派の寺院。
※ 若王神社(にゃくおうじんじゃ)- 左京区若王子町にある熊野若王子神社。永観堂に隣接する。
※ 永観堂(えいかんどう)- 左京区永観堂町にある禅林寺。通称永観堂と呼ばれ、紅葉の名所。
※ 祇園の社(ぎおんのやしろ)- 東山区の八坂神社。
※ 地主権現(じしゅごんげん)- 東山区の清水寺の地主権現。
※ 音羽の滝(おとわのたき)- 清水寺にある三筋の滝。


大仏殿は廬遮那仏。歌の中山清閑寺
今熊野をも打ち過ぎて、いつも秋にはあらねども、
東福寺にて名も高き、通天の紅葉、稲荷山
咲き乱れたる藤の森。鶉(うずら)鳴くなる深草山
伏見の竹田、淀、鳥羽までも見えて候。
※ 大仏殿(だいぶつでん)- 京都市東山区の方広寺に、かつて存在した秀吉由来の大仏殿。
※ 歌の中山(うたのなかやま)- 清水寺の南西にあたる、清閑寺近くの小径。また、清閑寺の通称。
※ 清閑寺(せいかんじ)- 東山区にある真言宗智山派の寺院。山号は歌中山。
※ 今熊野(いまくまの)- 今熊野観音寺。東山区泉涌寺山内。
※ 通天(つうてん)- 東山区の東福寺の通天橋からの紅葉は京都随一といわれる。
※ 稲荷山(いなりやま)- 伏見区の伏見稲荷大社東側に広がる山。
※ 藤の森(ふじのもり)- 伏見区の藤森神社。勝運の神様。今は紫陽花が有名。
※ 深草山(ふかくさやま)- 深草山から竹田辺りは深草野と呼ばれ、うずら鳴くなる深草の里と歌われた。


読書:「暗い穴 警視庁追跡捜査係」堂場瞬一 著
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