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「亜米利加応接書」 1

(散歩道のハナモモ)

「道聴塗説」を読み終えて、難解な文書だったので、次には少し頭を休めるものにしたいと思い、しばらく手元で温めていた、「亜米利加応接書」を解読することにした。これは、「駿河古文書会原典シリーズ別冊」として、その影本が図書館にあったものである。当該文書は、清水市河村家文書として保管された、写しがもとになっている。60頁ほどのもので、解読には半月ほど掛かるだろう。

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1854年、日米和親条約を締結したハリスは、1857年12月(旧暦では10月)、終に江戸に登り、将軍に大統領国書を渡す。その午後、老中首座堀田備中守の役宅で、老中始め幕府役人を前に、2時間に渡り、通商条約の必要性について演説を行った。その内容が下記文書である。

十月廿六日、備中守宅において、亜墨利加使節申し立つ趣。
※ 備中守(びっちゅうのかみ)- 堀田正睦(ほったまさよし)。江戸時代末期の大名・老中首座。下総佐倉藩の第五代藩主。
※ 亜墨利加(あめりか)- アメリカ合衆国の略称。亜米利加。


一 今日、申し上げ候事件は、大切の儀、大統領に於いても、もっとも重大の儀と存じ居り候。

一 申し上げ候儀は、何れも懇切の辺より出で候事にて、大君殿下を大切に存じ候儀に付、右御心得を以って御聞き取り下さるべく候。
※ 大君(たいくん)- 江戸時代、外国に対して用いた将軍の別号。日米和親条約は十三代将軍徳川家定の時代。

一 大君へ差し上げ候書翰中の儀を、唯今、なお又申し上げ候儀に付、大統領御直(じき)に申し上げ候心得にて、御聞き取り下さるべく候。

一 今日、申し上げ候儀は、何れも包み置き候儀は仕らず、掌(たなごころ)の如く、極く明白にて、聊(いささ)かにても隠し候儀は御座なく候。

一 大統領、日本政府の為に大切に心得候儀は、包み置き候事、何分相成し難く、右は懇篤より出で候次第に付、何事も伏臓なく申し上げ候儀に御座候。
※ 懇篤(こんとく)- 懇切丁寧で、心がこもっていること。
※ 伏臓(ふくぞう)- 腹蔵。本心を隠して表に出さないこと。


一 合衆国と条約成させられ候は、御国に於いて、外国と条約御結び成され候初めての儀ゆえ、大統領に於いても、御国の儀は他国と違い、親友と相心得居り申し候。

一 合衆国の所置は外国と違い、東方に所領の国もこれ無く候間、新たに東方に所領を得候儀は相願い申さず候。

一 合衆国の政府においては、他方に所領を得候儀は、禁じ申し候。

一 国々より、合衆国の郡に入り(加わる)候儀を願い候事、これまで度々御座候。遠方掛け隔て居り候処は、都(すべ)て断りに及び候。
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