ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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脱貧困の社会事業~ユヌス12

2009-08-14 08:53:48 | 経済
●極端な富の偏在が貧困を生む

 2000年(平成12年)に行なわれた国連大学の世界開発経済研究所の報告によれば、最も豊かな1%の人々が世界の資産の40%を所有しており、最も豊かな10%の人々が85%を所有していた。対照的に、世界の貧しい半分の人口が所有しているのは、この地球上の資産のわずか1%にすぎなかった。
 所得に関しても、世界の所得の94%は、世界の40パーセントの人々のところに集まっている。残りの60%の人々は、世界所得のうちわずか6%で暮らしている。世界の人口の半分は1日当たり2ドル以下のお金で生活している。うち、およそ10億人が1日当たり1ドル未満で生活している。
 ユヌスは「貧困のない世界を創る」で言う。「貧困は、運命をコントロールしようとするあらゆるものを人々から奪うため、人権の否定になる」と。またユヌスは、NHKの番組のインタビューで「貧困とはチャンスのないこと」だと語っている。金融や教育が、人生を変えるチャンスを生む。マイクロクレジットとソーシャルビジネスは、世界の人口の60%を占める下層の人々にチャンスを与え、彼らが貧困から脱出するのを支援できる可能性がある。
 ヘンリー・キッシンジャーは、アメリカのニクソン政権で国家安全保障会議の代表を務めていたとき、バングラデッシュを「救いようのない国」と呼んだ。しかし、ユヌスは、その「救いようのない国」で改革を成功させている。ユヌスは著書で言う。「つい最近まで『救いようのない国』と言われていたバングラデッシュが貧困から抜け出すことができるなら、世界各国が同じようにできないわけがないのだ」。
 またユヌスは次のように書いている。「グローバルな貧困の問題は、私たちの種としての存続をも脅かすようなものを含め、人類が直面している他の多くの課題に、深く織り込まれている。これは資本主義のシステムを改革し、私がソーシャルビジネスと呼ぶ新しい種類の企業に場所を開ける必要性をもっと切迫なものにしている。『正しい行いをすること』は、もはや自分たちが気持ちよくいられるというだけのことではない。私たち自身と未来の世代が生き残るために必要なことなのだ」

●「貧困は世界平和への脅威」

 2006年(平成18年)10月10日、ムハマド・ユヌスは、ストックホルムで行なわれたノーベル賞受賞記念講演で次のように語った。
「21世紀は素晴らしくグローバルな夢とともに始まりました。世界の指導者たちが2000年に国連本部に集まり、2015年までに貧困を半分にするという歴史的な目標を採択したのです。(略)
 しかしその後、9・11が起きてイラク戦争が始まり、突然、世界は夢の追求から脱線してしまいました。世界の指導者たちの注意は、貧困との戦いからテロとの戦いへと移ってしまったのです。以来、合衆国だけでも5300億ドルものお金がイラクとの戦いに費やされています。
私はテロというものは、軍事行動では打ち負かすことはできないと信じています。テロは最も強い言葉で非難すべきです。私たちはテロに対しては強固に反対し、終わらせるあらゆる手段を見つけなければなりません。テロが永遠に起こることがなくなるよう、その根本的な原因に取り組まなくてはならなりません。貧しい人々の生活を向上させるために投資することは、そのお金で銃器を買うことよりもよい戦略であると私は信じています」
 テロを撲滅するには、軍事行動ではなく、貧困をなくすることだ、とユヌスは考えている。「貧困は世界の平和への脅威である」とユヌスは言う。彼は著書に次のように書いている。「暴力と戦争を推し進めるものとしてよく挙げられるあらゆるテロ、宗教原理主義、民族対立、政治競争、そしてどんな軍事力よりも、貧困は危険なものである。貧困は希望を失わせ、人々を捨て身の行動に駆り立てるのだ」。
 そして、彼は言う。「貧困は不足する資源――水、耕地、エネルギー供給、よく売れる生産物などーーをめぐっての人間同士、一族同士、民族同士の苦い対立も引き起こす。(略)国民が貧困のために野蛮になっている国では、戦争に訴えるのが簡単だと思えるのだ」と。

 次回に続く。
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