ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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脱貧困の社会事業~ユヌス11

2009-08-12 11:58:52 | 経済
●「人間が作り出した現象は人間が解決しなければならない」

 バングラデッシュは、かつてはパキスタンの一部だった。パキスタンは1947年、インドから独立した。ヒンズー教を主とするインドから、イスラム教徒が分かれたものである。インドを間にはさんで東西に分かれる飛び地国家だった。東に位置していた東パキスタン州が1971年に独立し、バングラデッシュとなった。
 建国以来、バングラデッシュは世界の最貧国の一つとして知られている。非常に厳しい生活条件――極度の人口過密、洪水、森林伐採、浸食、土地の減少、サイクロン・竜巻・高潮等――が続いている。
 なかでも水害は深刻である。国土の5分の1が海抜1メートル以下であり、毎年、洪水の被害が出る。防護システムや堅固な堤防をつくることのできる国であれば、被害は小さく押さえられている。バングラデッシュは貧しく、それができないため、被害が大きくなっている。
ユヌスは言う。「バングラデッシュの本当の問題は天災ではないのだ。問題は広範囲に及ぶ貧困であり、人間が作り出した現象なのである」と。
 そのうえ、地球温暖化の影響が増大している。海面上昇が進み、低地では広範囲に洪水の危険が拡大している。地球的な気候変動の最前線に、バングラデッシュはいるのだ。
 ユヌスは「人間が作り出した現象は、人間が解決しなければならない」と言う。

●太陽光発電で環境と調和しながら電化を進める

 ユヌスは1996年、バングラデッシュで地球温暖化に立ち向かうため、グラミン・シャクティというエネルギー会社を立ち上げた。
「バングラデッシュの人口の70%に電気が届いておらず、電気が通じているところであっても、それはまったく頼りないものである」とユヌスは言う。
 グラミン・シャクティは、電気のまだ来ていない村にソーラーパネルを普及させ、太陽光発電で電化を進めている。この事業を、グラミン・シャクティはソーシャルビジネスで行っている。人々は電化によって貧困から抜け出ることができ、生活が向上する。しかもそれをクリーン・エネルギーで実現し、環境との調和を図るのが、ソーシャルビジネスならではの事業である。
 ソーラーパネルは、村の家の屋根に取り付ける。出力はわずか50ワットである。通常、四つの白熱灯を4時間灯すのに必要なエネルギーを発生させることができる。その電気をバッテリーにためることで、子供たちは電灯の下で宿題をしたり、親たちはラジオを聴いたりテレビを見たりできる。携帯電話も使えるようになった。
 ソーラーパネルとコンバーターのセットで設備費用は、4万円ほどである。利用者は、毎月1000円を3年ほどかけて返済する。この割賦払い制度で、月に7~8000枚販売しているという。
 グラミン・シャクティは、10万台以上のソーラー・パネルシステムを全国あらゆる場所の家に設置してきた。ユヌスは、2012年までに100万台のソーラー住宅システムを設置しようという計画を持っている。
 太陽光発電の事業は、雇用を生み出してもいる。ソーラー住宅用の電灯などを組み立てる仕事である。10日間の講習を受けると、自宅で組み立てられるようになり、収入を得られる。

●バイオガスも利用

 グラミン・シャクティは、家畜の糞尿を利用したバイオガスの普及もしている。養鶏場からは、数百キロの糞尿が出る。糞尿が発酵すると、メタンガスが出る。それを家々にパイプラインで送るのである。子供たちは燃料のための薪拾いの労働から解放された。母親たちは炊事にガスを利用できる。
 このバイオガス・システムは、16万円する。村人は共同でグラミン銀行から金を借りてシステムを敷く。こうしてバイオエネルギーを村人の生活に取り入れる事業もグラミン・シャクティは、行っている。
 太陽光発電やバイオガスの利用には、ユヌスの環境への姿勢が表れている。ユヌスは、より安全な世界を次の世代に引き継ぐべきであり、もはや危険なテクノロジーは使ってはならないと考えている。
 「貧困のない世界を創る」でユヌスは言う。「すべての世代は自分の時代よりもこの星を健全な状態で残していかなくてはならない」「自分たちのライフスタイルが、他の人の人生を危険にさらすことがないようにしたい」と。
 先進国に生きる日本人は、地球環境への影響を考えるだけでなく、発展途上国の困窮者への影響も考えて、「石油の時代」から「太陽の時代」への移行を加速しなければならない。

 次回に続く。


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