ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

対米依存で専守非核の日本13

2007-01-11 09:56:23 | 国際関係
●有事関連三法は未だ不十分

 平成10年(1998)、北朝鮮がテポドンを発射した。日本列島を越えて、三陸沖に着弾した。国民の危機感が高まった。これをきっかけに、平成15年(2003)6月に、有事関連三法が成立した。それによって、有事における自衛隊の活動は、一応の法的裏づけを得た。
 有事とは、何か。新設された武力攻撃事態法は、「現に武力攻撃を受けている事態のほかに、「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」及び「武力攻撃が予測されるにいたった事態」を有事と定義している。定義というものは、曖昧さを免れないものではあるが、それにしても上記の定義は、わかりにくい。有事という言葉そのものが、婉曲的な表現である。「事が有る」というが、何が事なのか。有事が意味するものは、国家緊急事態であり、特に戦争である。そうはっきり表現すべきである。

 武力攻撃事態法は、日本の有事=戦争において、先制的自衛権の行使を可能としている。また、自衛権を行使できる範囲は日本の領空・領海にとどまらないことが、政府答弁で明らかになっている。この点は、受動的な防御に徹した専守防衛と違う。田中角栄以前の戦略守勢の概念に戻したものと思う。北朝鮮が核ミサイルを開発していることにより、現実離れした防衛思想を取っていられなくなったのである。
 法的には、先制攻撃が可能になった。しかし、現時点では自衛隊にその能力はない。受身の専守防衛に徹するための装備しかない。この約30年の政策の誤りは深刻である。

●法律を変えただけで有効な装備はない

 例えば、いまこの現在、北朝鮮が日本に向けて核ミサイルを発射したら、わずか10分で日本のどこかに着弾する。日本は必ず被害をこうむる。日本には、有効な抑止力がない。BMDシステムは、まだ構築中である。1兆円かけても、果たしてどの程度の実効性があるか、疑問が出されている。
 いずれにせよ、現状では、ミサイルが発射される前に、敵のミサイル基地を攻撃する以外に、日本を守る方法はない。ところが、わが国の航空自衛隊の戦闘機は、航続距離が不足している。ミサイル基地を攻撃できる兵器も、巡航ミサイルも持っていない。海上自衛隊もまた敵地を攻撃できる巡航ミサイルがなく、洋上を機動的に動いて艦載機を飛ばせる小型空母もない。

 法律を作っても、戦力を整備しなければ意味がない。整備には、総合的な計画が要る。予算が要る。何より、時間がかかる。平成19年1月から防衛庁が防衛省に昇格するなど、国防の重要性が徐々に認識されつつあるが、対北朝鮮防衛に即応できるだけの予算は、組まれていない。
 まして中国を相手に想定した場合、彼我の差は非常に大きい。中国は核大国である。移動式・多弾頭の精密誘導弾道ミサイルを多数配備している。潜水艦から撃つ核弾頭ミサイルも持っている。今後、通常兵器をいくら整備したとしても、それのみで中国の侵攻を抑止することはほとんど不可能である。中国は、台湾侵攻または尖閣諸島略取の際、日本を核攻撃するぞ、と必ず恫喝するだろう。現状では、その対応は、アメリカに依存するしかない。ただし、アメリカが、必ず日本を守るという保証はない。

 次回に続く。