ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

対米依存で専守非核の日本8

2007-01-05 10:33:56 | 国際関係
●昭和47年、米中提携で密約が

 昭和45年版の防衛白書における専守防衛は、戦略守勢という意味だった。戦略守勢であれば、敵基地への反撃や自衛のための先制攻撃ができる。しかし、この考えに重大な変化が生じた。それは、日中国交回復以後である。
 軍事評論家の柿谷勲夫氏は、次のように指摘する。
 「わが国の政府与党は、私利私欲、保身のために、野党に迎合、根本問題で妥協し、防衛問題を先送りしてきた。この傾向は昭和40年頃以降、特に日中国交回復以降顕著である」(『徴兵制が日本を救う』展転社)

 昭和47年2月、アメリカは、わが国に事前協議なしに、ニクソン大統領が訪中し、米中共同声明を発表した。台湾とは断交した。アメリカは、ソ連への対抗のために、イデオロギーより、バランス・オブ・パワーの理論によって、戦略・政略を選択した。
 それまでアメリカとともに共産主義に対抗してきたわが国にとっては、晴天の霹靂だった。しかし、わが国は、アメリカに追従するしかなかった。9月、田中角栄首相が北京を訪れ、毛沢東・周恩来と会談し、日中共同声明を発表した。

 国際政治アナリストの伊藤貫氏によると、米中接近のため、ニクソン大統領とキッシンジャー補佐官が、周恩来首相と北京で会談した際、米中両国政府は対日政策に関する密約を結んだ。この密約の要点を書きとめたニクソンの手書きのメモが残っているという。密約は、次の三点である。

(1)東アジア地域において、日本にだけは核兵器を持たせない。
(2)米軍は日本の自主防衛政策を阻止するため、日本の軍事基地に駐留し続ける
(3)日本政府には、朝鮮半島問題と台湾問題で発言権を持たせない。

●米中密約が日本を隷属に

 伊藤氏は、これらの三点は現在も有効だという。平成14年(2002)10月、ブッシュ大統領は、江沢民と会談し、北朝鮮の核問題で中国政府にリーダーシップを執らせることを決めた。この際、米中両国政府には、「我々は北朝鮮の核問題をなるべく早く処理して、日本の核武装を阻止しなければならない」という明確な合意があったという。(伊藤貫著『属国か独立かーー日本外交の危機』「日本の息吹」平成19年1月号)

 昨年(平成18年)10月に北朝鮮が核実験を行ったと発表した。北の核への対応のため、たライス国務長官は日・中・韓をまわった。その際、ライスは、わが国に対し、日米の連携を強調して「核の傘」について言及し、「米国はあらゆる手段で日本の安全を確保する」と言明した。この発言は、裏を返せば、日本が自主的な核抑止力を持つことは認めないという基本姿勢を、アメリカが改めて示したものとも取れる。
 
 日本は、アメリカ・中国にとっては旧敵国である。国際連合は、第2次大戦における連合国が発展したものであり、わが国は、旧敵国の地位にある。これに対し、共産中国は核を持つことで、安全保障理事会の常任理事国の特権を得ている。アメリカは、特権国クラブの一員である中国と結んで、旧敵国の日本を従属的立場に置いて、その力を自国の国益に利用している。
 わが国は、アメリカに金融を通じて国富を召し上げられるだけでなく、中国にもODAを通じて血税を吸い取られる構造に置かれてきた。こういう構造は、昭和47年の米中密約に源を持つものだろうと、私は考えている。
 日本人は、憲法を改正し、国防力を整備し、国際社会で自らの意思を明確に主張できるようにならなければ、この構造から脱却し、真の世界平和の実現に貢献することできない。
 
 次回に続く。