ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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キリスト教127~フランス市民革命の開始

2018-12-04 09:37:24 | 心と宗教
●フランス市民革命の開始

 イギリスのピューリタン革命で封建的身分の特権を否定する自然法に基づく権利の理論が表れた。アメリカ独立革命の独立宣言でイギリスの「臣民の権利」の歴史性が否定されて、権利は神授のものとされた。フランス市民革命の人権宣言でも権利の神授性の論理が維持された。こうして、実際には歴史的・社会的・文化的に発達した権利が、普遍的・生得的な人権という概念で理解されるようになった。
 フランスはイギリスに比べて絶対王政が長く続いた。
 18世紀末、ルイ16世が特権階級への課税で財政を改善しようとしたところ、これに貴族が反発した。国王は事態打開のため、1789年に三部会を召集した。三部会が開催されると、会議は議決方法をめぐって紛糾した。シェイエス神父が『第三身分とは何か』を著し、「第三身分はこれまで無であったが、これからは権力を持つべきだ」と訴えた。シェイエスに呼応した第三身分は、独自に国民議会を結成した。
 シェイエスは、神父でありながら、ルソーの影響を受けていた。また、フリーメイソンのロッジ「九人姉妹」に所属していた。
 国民議会が発した人権宣言は、第3条に「あらゆる主権の原理は、本質的に国民に存する。いずれの団体、いずれの個人も、国民から明示的に発するものでない権威を行い得ない」と定めた。ここに明確に国民主権の原理が提示された。
 国民主権の原理は、シェイエスの思想に負うところが大きい。シェイエスは、国民主権の原理を次のように述べた。「国民(nation)はすべてに優先して存在し、あらゆるものの源泉である」「その意思は常に合法であり、その意思こそ法そのものである」「国民がたとえどんな意思をもっても、国民が欲するということだけで十分なのだ。そのあらゆる形式はすべて善く、その意思は常に至上至高の法である」と。
 シェイエスは、国民すなわち第三身分の民衆を神のごときものへと理想化している。こういう理想化のもとで、国民主権の考え方が生まれ、国民主権を標榜する政府が誕生したのである。
 16世紀半ばフランスのジャン・ボダンは、『国家論』(1576年)で主権論を説き、「主権的支配者」である君主の上に立つ「世界中のすべての支配者に対する絶対的支配者」である神の存在を強調した。絶対君主は自らの自由意志に基づいて「法律」を作ることはできても、神法・自然法に合致しないものは、法律としての有効性を持たないとした。ところが、シェイエスの国民主権論は、主権者を君主から第三身分に置き換えるだけでなく、第三身分の意思は「常に至上至高の法である」として、もはや規制するものが、なくなっている。
 ルソーは、一般意志を説いた。一般意志とは、人民全体が主権者であるときの、その人民全体の意思の意味である。ルソーは、一般意志を実現するには「神のような立法者」が必要だとし、民主政について「これほど完璧な政体は人間には適さない」と説いた。しかし、シェイエスはありのままの民衆を神格化した。この一種狂信的な思想が、フランスの革命運動を過激化させた。
 1789年6月ルイ16世は軍隊をもって国民議会に圧力をかけた。怒ったパリ市民は武装蜂起を図り、7月14日、武器・弾薬の保管所となっていたバスティーユ監獄を襲撃した。蜂起の成功を受けて、国民議会はアメリカ独立宣言を参考にしながら、人権宣言を発した。

 次回に続く。

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