ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

世界を救う日本精神~藤原正彦

2006-05-19 12:42:00 | 日本精神
 藤原正彦氏の著書『国家の品格』(新潮新書)が売れ続けている。200万部を超えたのは、新書で過去最速だという。
 本書のいわんとするところを、書籍案内がよく表わしている。「日本は世界で唯一の『情緒と形の文明』である。国際化という名のアメリカ化に踊らされてきた日本人は、この誇るべき『国柄』を長らく忘れてきた。『論理』と『合理性』頼みの『改革』では、社会の荒廃を食い止めることはできない。いま日本に必要なのは、論理よりも情緒、英語よりも国語、民主主義よりも武士道精神であり、『国家の品格』を取り戻すことだ。」と。

 こうした主張が明快でわかりやすく説かれている。指摘が的確でしかも深い。随所に独創的な視点が見られ、ユーモアにも富んでいる。なかでも私は、武士道精神の復活を訴えていることに強い共感を覚える。その点に照準を合わせて内容を要約するならば、次のようなまとめができよう。
 西洋近代文明の特徴は、論理と合理である。しかし、それだけでは、物事はうまくいかない。数学は、不完全性定理によって、論理の限界を明らかにしている。実は論理の出発点は情緒や形なのである。情緒や形の核となる美意識や道徳観は、わが国では武士道に集約される。戦後、国家の品格を失ってきた日本が、国家の品格を取り戻すには、卑怯を憎む等を教える武士道精神を教育することが重要である。

 私は武士道を日本精神の精華だと考えているが、『国家の品格』は武士道と日本精神の関係について直接触れてはいなかった。藤原氏の近著『この国のけじめ』(文藝春秋)は、この点に言及している。「世界に誇りうる日本人の規範意識」と題した文章においてである。(産経新聞平成15年7月30日号に初出)

 それによると、藤原氏の父親は、幕末の下級武士の家に生まれた祖父から「泥棒の中でも火事場泥棒ほど恥ずかしいもものはない」と繰り返し教えられたそうである。火事場泥棒とは、火災の混乱に乗じ、困り果て途方に暮れている人間につけこみ、物品を奪うという行為である。日本人は、こういう行為を卑劣なものと考える。

 昭和20年8月9日、ソ連は、日本が対米戦争で気息奄々(えんえん)となった機をとらえ、満洲等に攻め入った。虐殺・略奪を重ねたうえ、2百万人ともいわれる日本人をシベリアに強制連行し、抑留酷使した。イラク戦争では、バグダットが陥落したころ、爆撃で壊された店舗や、もぬけのからになったビルから、人々がさして悪びれもせず物品を運び出す。そういう略奪をテレビで見せつけられた。
 これに比べ、わが国では、阪神大震災のとき、そのようなおぞましい行為が見られなかった。「火事場泥棒を、とりわけ卑劣なものと考える我が国の美風が、まだ残っているということである」と藤原氏は書く。そして、次のように続ける。

 「泥棒も火事場泥棒も法律的には等しく窃盗である。論理的には同等でも後者のほうが罪深いと日本人は考える。『他人を騙して金をとる』と同じ詐欺であっても、『年寄りや弱者を騙して金をとる』は格段に罪深い。卑劣とか卑怯がなぜいけないかは、論理的にはほとんど説明できないが、日本人はそう考える。
 このような日本人の規範感覚は、武士道精神に根差している。この精神は、鎌倉時代に『弓矢とる身の習い』、すなわち戦(いくさ)における掟として成立したが、平和の長く続いた江戸時代には精神にまで洗練され、小説、芝居、講談などを通して町人にまで広まったから、日本精神と呼んでよい。誠実、慈愛、惻隠、忍耐、名誉、孝行、公の精神などを重んじ、卑怯を憎む精神である」

 藤原氏は、このように武士道が精神にまで洗練され、国民全体に広まったものを、日本精神と呼ぶ。そして、次のように説く。

 「世界はいま、混迷の中にある。この世界を救う手立てとして、日本精神がきわめて有望と思う。人類を不幸にするに違いない、行き過ぎた市場経済に対しては、大きな者が小さな者をやっつけるのは卑怯、という感覚が歯止めとなる。社会を不安定にするリストラには慈愛や惻隠が役立つ。はびこる個人主義や利己主義には公の精神を、横行するいじめには卑怯を、子供の万引には『親を泣かせる』とか『お天道様が見ている』を、教えるのがよい。不正や不道徳な行為に対しては名誉や自制が抑止力となる。環境問題には自然への畏怖が役立とう。
 天正の遣欧少年使節も明治の留学生たちも、この日本精神ゆえの品格で世界の人々を印象づけた。日本精神を規範とした江戸の社会は当時、世界でもっとも優れていた、と最近になって英国の学者たちが注目している。現代日本人が、この精神をしっかり取り戻し立派な社会を作れば、いまなお論理合理を金科玉条としている世界の多くの人々も、必ずや覚醒するだろう」

 日本精神は「世界を救う手立て」として「きわめて有望」と言う藤原氏は、日本精神に内在する可能性を言い当てている。
 日本精神とは何か。さらにその神髄に触れたいと思うならば、大塚寛一先生の近刊が、最良の導きとなるだろう。本書『真の日本精神が世界を救う』(イースト・プレス)は、真の日本精神こそ、日本を再建し、世界を救う指導原理であることを、理論的かつ実証的に明らかにしている本だからである。
 詳しくは、15日の日記をご参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20060515
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4 コメント

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TBありがとうございます! (A・C・O)
2006-05-19 16:15:41
はじめまして!

拙ブログにTBいただきありがとうございます。子供の頃、日本は特別に素敵な国だと思っていました。今は、変な方向に舵が向いているようで不安になります。外国の人に尊敬されるような国際意識のある、教育・医療・福祉の充実した真に豊かな国になって欲しいと切望します。
re:TBありがとうございます! (ほそかわ)
2006-05-19 17:01:31
>外国の人に尊敬されるような国際意識のある、教育・医療・福祉の充実した真に豊かな国になって欲しいと切望します。<



 私もそう思います。そういう国にできるかどうかは、国民一人一人の志にかかっています。頑張ってまいりましょう。
Unknown (nabajo)
2006-05-20 12:20:16
 難しいことも大事やろし、日本精神も大事やろ。しかしそんな難しいことより、もっと身近なとこでできることぎょうさんあるはずや。



 いまの馬鹿な親共一人一人が、ほんまに真剣に子育てすることが、一番やとわしゃ感じる。

もっともっと簡単に、もっともっと子どもに接しながら教育のこと考えてやろうや。

re: Unknown (ほそかわ)
2006-05-21 19:25:46
>いまの馬鹿な親共一人一人が、ほんまに真剣に子育てすることが、一番やとわしゃ感じる。

もっともっと簡単に、もっともっと子どもに接しながら教育のこと考えてやろうや。<



 精神や制度の問題は、それとして重要です。その一方で、親が子供にきちんとしつけをすること。周りの大人はそれを支援すること。それができないと、どのような取り組みも足元から崩れます。しつけについては、以下に書きました。ご参考にどうぞ。

http://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/d/20060402

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