ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

米国学者グループが慰安婦問題で安倍首相に声明1

2015-05-27 08:54:06 | 慰安婦
 5月5日欧米を中心とする日本研究者や歴史学者187人が、「日本の歴史家を支持する声明」と題する文書を公表し、戦後70年の今年を「過去の植民地支配と侵略の問題に立ち向かう絶好の機会」「可能な限り、偏見のない清算を共に残そう」と呼びかけた。声明は慰安婦問題などに言及したもので、安倍首相宛てに送付されたと報じられる。署名者は、その後450名以上になったという。
 ただし、この声明は、誰にあてて出されたものかも、代表者が誰なのかも分からない、連絡先の事務所も不明で、日付もないというから、首相に送る文書としては、基本的な要件を書いている。
声明には、ハーバード大のエズラ・ボーゲル名誉教授、ニューヨーク州立大のハーバート・ビックス名誉教授、マサチューセッツ工科大のジョン・ダワー名誉教授ら著名な学者が名を連ねている。日本研究者とはいえない人物も含まれているという。
 声明は「戦後日本が守ってきた民主主義、自衛隊への文民統制、政治的寛容さなどは祝福に値する」と評価しつつ、「慰安婦問題などの歴史解釈が障害となっている」と指摘した。これまで責任の所在はすべて日本側にあるとしていた韓国側などの主張に対しては、「日本だけでなく、韓国と中国の民族主義的な暴言にもゆがめられてきた」と指摘している。慰安婦らが「女性としての尊厳を奪われた事実を変えることはできない」としながら、韓国側が「20万人以上」などと主張する慰安婦の数については、「恐らく、永久に正確な数字が確定されることはない」として明示を避けた。「セックス・スレイブ(性奴隷)」といった従来の文書でみられた用語は使っていない。日本側が否定する「強制性」については、「特定の用語に焦点をあてて狭い法律的議論を重ねること」は「広い文脈を無視すること」と判断を避けた。
 元慰安婦の証言は多様で、記憶に一貫性がないものもあると認め、「証言は心に訴え、それ以外にも公的資料によって裏付けられている」と述べているにもかかわらず、資料の詳細には触れていないという。
 声明は、安倍晋三首相に「大胆な行動」を求めているというのだが、上記のように具体的な根拠を示さずに要求しているものに過ぎない。
 このような形で欧米を中心とする日本研究者らが日本の首相に声明を送るという行動を起こしたようだが、今日慰安婦問題について学術レベルで発言するのであらば、まず朝日新聞が誤報を認めて記事を取り消した吉田清治氏の証言について、明確な見解を出すべきだろう。次に、その吉田証言を資料とした国連人権委員会のクマラスワミ報告書について、学術的な分析を行うべきだろう。こうした最も重要なポイントを書いた状態で、慰安婦の「証言は心に訴え、それ以外にも公的資料によって裏付けられている」として、首相に「大胆な行動」を求めるというのは、日本国内の左翼人権主義者とよく似た姿勢である。
 声明に名を連ねた学者の中には、わが国の外務省が米教育出版社「マグロウヒル」の世界史教科書の慰安婦問題に関する記述の是正を求めたのに対して、修正を拒否する声明を出した学者が含まれているという。修正声明拒否を発表した学者は19人だったが、今回の首相への要望声明は187人で出された。19人のうち12人ものが名を連ねている。基本的な姿勢は同じで、人数を多くして圧力を加えているつもりのようなである。

 ところで、評論家の江崎道朗氏は、フェイスブックに載せた文章で、声明に名を連ねた学者の中にはニューレフトがいることを指摘し、「ジョン・ダワーらは、反日宣伝を行っている中国系・韓国系ロビーと連携している、ニュー・レフトと呼ばれる知識人たちであり、アメリカの一般的な対日認識とは相当なズレがあることを留意しておくべきだ」と書いている。「ニュー・レフト」とは、新左翼を意味する。参考のため、以下に転載して紹介する。

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●フェイスブック 江崎道朗氏
5月9日 16:12

アメリカのニュー・レフトに騙されるな

 ニューヨーク州立大のハーバート・ビックス名誉教授とマサチューセッツ工科大のジョン・ダワー名誉教授ら日本研究者や歴史学者187人が、「日本の歴史家を支持する声明」と題する文書を5日公表、戦後70年の今年を「過去の植民地支配と侵略の問題に立ち向かう絶好の機会」「可能な限り、偏見のない清算を共に残そう」と呼びかけた。
この問題の背景については、既に拙著『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』で書いたが、要は、ジョン・ダワーらは、反日宣伝を行っている中国系・韓国系ロビーと連携している、ニュー・レフトと呼ばれる知識人たちであり、アメリカの一般的な対日認識とは相当なズレがあることを留意しておくべきだ。
 このニュー・レフトの学者たちが、日本の戦争犯罪について追及するのはなぜなのか、以下、説明した部分を紹介する。
 彼らニュー・レフトの主張を、アメリカの対日世論だと勘違いして「アメリカけしからん」と、反米感情を募らせることは、敵の思うつぼなので、十分に気をつけたいものである。
なお、歴史学者187人の中には、良識的な学者も多く、名前を連ねた学者すべてがニュー・レフトであるわけではないことも付言しておきたい。

<中国ロビーを支える左翼ネットワーク
 厄介なのは、こうした反日活動が中国系・韓国系だけではない、ということだ。その背後には、ニュー・レフトと呼ばれる米国の知識人たちがいるのである。
 きっかけは、ベトナム反戦運動であった。米ソ冷戦下で南北に分断されていたベトナムに対して、米国は1962年に軍事介入を開始し、1965年2月に開始された米軍による北ベトナムへの、いわゆる「北爆」で一般市民の犠牲者が増えたことが報道されるや、左派勢力が全世界でベトナム反戦運動を起こした。
 当時、ベトナム反戦運動を繰り広げていた活動家たちは、ソ連の支援を受けた北ベトナムが勝利し、共産主義政権ができれば、東南アジア諸国にも次々に共産主義政権が誕生し、世界共産化が進むと考えていた。
 しかし1965年10月に起こったインドネシア共産クーデターは、スハルト将軍率いる陸軍によって阻止され、1967年には反共を掲げるアセアン(東南アジア諸国連合)が創設された。1968年には、北ベトナム側が大規模な南ベトナム侵攻作戦を実施し、米国に大打撃を与えたものの、直ちに共産ベトナムの誕生というわけにはいかなかった。

 ニュー・レフトの指導者たちは、この事態を深刻に受け止めた。理論的指導者のひとり、ヘルベルト・マルクーゼ(カリフォルニア大学教授)は1969年、『解放論の試み』という新著の中で、アジア・アフリカ諸国での解放、つまり共産革命が進まないのは、現地での革命闘争を先進資本主義国(つまり欧米諸国)が豊富な資金と武器援助によって抑圧してしまうからだと分析し、アジア・アフリカの解放を実現するためには、現地での共産勢力を強化するよりも、先進資本主義国の弱体化が必要なのだと訴えた。
 このマルクーゼ理論を更に進めたのが、ピューリッツァー賞を受賞した『敗北を抱きしめて』などで有名なジョン・ダワー・マサツューセッツ工科大学教授らであった。彼らは、ベトナムの“民主化”、ひいてはアジアの“民主化”を阻む米国の“帝国主義者たち”がアジアで影響力を保持しているのは、日米同盟と日本の経済力があるからであり、日米同盟を解体し日本を弱体化することが、アジアの“民主化”を早めることになると考えた。

 では、どうしたらいいのか。
 日本の敗戦後、米国政府は当初、二度と米国に逆らうことができないよう大日本帝国を徹底的に解体するつもりであった。ところが、共産中国の誕生と朝鮮戦争の勃発という事態を受けて米国は日本を東アジアの“反共の防波堤”とすべく占領政策を転換し、懲罰的な占領政策は取りやめる一方で、日米安保条約を結んで同盟国に格上げし、日本の経済発展を支援するようにした。
こうした日本の戦後史を分析したダワー教授らは、「逆コース」が起らず、あのまま徹底した民主化政策が実行されていれば、天皇制が廃止されて大混乱に陥った日本で共産革命が起こり、(アジアの民主化を妨害した)その後の日米同盟も、日本の経済発展もなかったかもしれない――こう考えたのだ。
 そしてダワー教授らは1975年、以下のように主張した。

①占領政策のおかげで日本の民主化は進んだが、日本の官僚制を活用する間接統治と、「逆コース」によって占領政策が骨抜きとなった結果、「天皇制」に代表される戦前の専制体制は温存されてしまった。
②昭和天皇の戦争責任を不問に付すなど東京裁判が不徹底なものとなった上、日本自身もアジア諸国への加害責任を問わなかったため、現在の日本は「過去の侵略を反省できない、アジアから信頼されない国家」になってしまった。
③日本がアジア諸国から信頼される民主国家となるためには、もう一度、徹底した民主化(現行憲法の国民主権に基づく皇室の解体)と、東京裁判のやり直し、つまりアジア諸国への加害責任の追及を行うべきである。
④そのためにも、民主化と加害責任の追及を行う日本の民主勢力(例えば、家永三郎氏のような「勇気」ある歴史家たち)を支援しようではないか(ダワー教授やピックス教授は1999年、世界抗日連合カナダ支部や土井たか子元社民党党首らと連携して、家永三郎氏にノーベル平和賞を授賞させる運動を展開している)。

 かくして、日本の加害責任を改めて追及することで日本を弱体化させ、アジアの民主化を促進するという世界戦略が米国のニュー・レフトの間で確立されていったのである。>
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関連掲示
・拙稿「急進的なフェミニズムはウーマン・リブ的共産主義」
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion03d.htm
 フランクフルト学派と新左翼については、下記の章を中心にご参照ください。
  第7章 フランクフルト学派の批判的否定
  第9章 エロス的革命を唱導したマルクーゼ
  第11章 共産主義は死んでなどいない

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