ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

中国発の世界同時株安にどう対応するか

2015-08-27 06:50:09 | 経済
 中国初の世界同時株安が起こっている。拙稿「中国は株バブルが破裂し、人民元を切り下げた」を書いた後、中国の株式市場ではさらに株の下落が続いている。
http://www.ab.auone-net.jp/~khosoau/opinion12Z.htm
 中国の影響で、日米欧、東南アジア、ラテン・アメリカ等で同時に株安が起こっている。2012年に中国はGDPで日本を抜いたが、現在の世界経済は、中国経済が成長のエンジンになっている。世界の成長率の3分の1は、中国に依存していると見られる。その中国で株が暴落したため、影響は全世界的となっている。かつて「アメリカがくしゃみをすると、日本が風邪をひく」という言い方があったが、今や「中国が悪質な病にかかると、世界中が感染する」とでもいった状況である。
 中国国内では、個人投資家のパニック心理による投げ売りが続いている。世界各国の投資家が中国経済が予想以上に悪いのではないかという不安を募らせ、大量に株を売りに出している。
 海外投資家の不安を醸成したものの一つに、イギリスの調査会社の報告がある。中国政府が公表する統計数値は信用できないのは常識だが、ロンドンに拠点を構える独立系調査会社ファゾム・コンサルティングは、昨年、公式GDPの予想を公表するのをやめ、実際の成長率とみなす数値を公表することを決めた。同社は、今年の中国成長率は2.8%、2016年はわずか1.0%にとどまると予想している。予想は、電力消費、鉄道貨物量および銀行融資の3つのデータを基にした、全国レベルのシンプルな指標をもとにしている。中国政府による粉飾が最も少ないと見られる指標によるものゆえ、同社の予想には重みがある。
 中国の経済が、日米欧の諸国と違う点の一つは、共産党政府が市場を強権的に管理しているところにある。だが、今回の株の暴落において露呈したのは、いよいよ政府の統制が利かなくなっていることである。これまで中国に過剰な期待を寄せていた投資家たちまでが、不安を抱くようになった。
 そのうえ、8月12日天津開発区で猛毒のシアン化ナトリウムをはじめ硝酸アンモニウム・硝酸カリウム・炭化カルシウム等が貯蔵されている危険物取り扱いの倉庫が爆発した。死者は100名以上と発表されている。世界第4位の港湾がマヒ状態に陥っている。爆発現場では、24トンまでしか保管できないと法律で規定されている危険物が、700トンも置かれていたらしい。あまりにもずさんな保安体制、国民に実態を隠そうとする政府の態度、工場関係者・消防士・周辺住民等の人権の軽視等を見て、中国に幻滅した投資家は多いだろう。GDP世界2位の経済大国になったとはいっても、中国の政治、社会、国民の心性は開発独裁の発展途上国と変わらない状態にある。
 今回のチャイナ・ショックは、リーマン・ショック以上のものになる可能性を秘めている。中国共産党政府は自力で事態を収拾できそうにない。当面の対応策として、G7の国際的な連携による金融緩和が上がっている。だが、中国の政治体制自体が変わらない限り、解決への道筋はつかないだろう。統制主義的な強権政治では、中国経済の再建はできない。株式は、基本的に市場に任せる。通貨は、現在の管理フロート制を止めて変動通貨制に移行する。ただし、IMFは人民元を国際準備通貨に認定しない。実力相応の扱いにする。1%の超富裕層が経済を回している一方、1億人規模の失業者が困窮しているような社会的格差を是正する。極端に輸出に依存した経済を止め、内需拡大に大きく転換する等がなされねばならない。こうした政策を実行するには、中国の民主化が必要である。民主化なくして、中国経済の再建はできないと私は考える。
 以下は、関連する報道記事。

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●ロイター 平成27年8月7日

http://jp.reuters.com/article/2015/08/07/china-economy-data-idJPL3N10I27X20150807
中国経済成長率、実際は公式統計の半分以下か 英調査会社が試算
News | 2015年 08月 7日 14:36 JST

[ロンドン 6日 ロイター] - 中国の経済成長率は実際どの程度なのか──。こんな疑問を抱くアナリストらが試算したところ、中国国内総生産(GDP)伸び率は公式統計の半分、もしくはさらに低い水準であるかもしれないことが分かった。
 中国国家統計局が先月発表した今年上半期のGDP伸び率は7.0%で、政府が掲げる2015年通年目標に沿う内容となった。
 こうした公式統計には、実際の景況感との矛盾を指摘する声が常に聞かれるほか、そもそも14億人の人口を抱える新興国がなぜ、米国や英国といった先進国より数週間も前に四半期データを公表することができるのかといった疑問も付きまとっている。
 しかも、中国がその後、公式統計を改定することはほとんどないにもかかわらずだ。
 ロンドンに拠点を構える独立系調査会社ファゾム・コンサルティングのエリック・ブリトン氏は「中国の公式統計はファンタジーだと考えており、真実に近いということもない」と話す。
 同社は昨年、公式GDPの予想を公表するのをやめ、実際の成長率とみなす数値を公表することを決めた。それによると、今年の中国成長率は2.8%、2016年はわずか1.0%にとどまると予想している。
 内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した米外交公電によると、現在は中国首相を務める李克強氏が、遼寧省党委書記を務めていた数年前、中国のGDP統計は「人為的」であるため信頼できないと語ったとされる。
 ファゾム・コンサルティングは、李克強氏が当時、遼寧省の経済評価の際に重視するとした電力消費、鉄道貨物量および銀行融資の3つのデータを基にした、全国レベルのシンプルな指標を公表している。
 それによると、実際の成長率は3.2%であることが示唆されている。鉄道貨物量の減少、トレンド成長を下回る電力消費を反映し、示唆された成長率は2013年終盤以降、公式統計から大幅にかい離している。
 国家統計局にコメントを求めたが、回答はなかった。
 先月の記者会見時には、公式統計に批判的な人は中国が利用するGDP計算方法を完全に理解していないとして、統計は正確だと反論。数値の正確性については常に向上に努めていると説明した。

●ZAKZAK 平成27年8月13日

http://news.livedoor.com/article/detail/10465852/
中国、16年は“成長率1%”の衝撃予測 不動産と株「2大バブル」崩壊で窮地
2015年8月13日 17時12分
ZAKZAK(夕刊フジ)

(略)「世界の工場」と呼ばれたのも今は昔、7月の輸出と輸入を合わせた貿易総額は前年同月比8・2%減となり、5カ月連続で前年割れした。7月の輸出は前年同月比8・3%減と2カ月ぶりにマイナスとなった。輸入も8・1%減と、9カ月連続で前年同月を割り込んだ。
 1~7月の貿易総額累計も7・2%減で、年間で6%増とする政府目標とは大きくかけ離れている。最大の貿易相手である欧州連合(EU)が7・5%減で、日本も11・0%減っている。
 ほかの経済指標も悲惨だ。7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1・6%上昇と政府目標の3・0%を大きく下回った。工業品卸売物価指数(PPI)については5・4%の下落を記録し、3年5カ月連続で前年割れするなどデフレの崖っぷちだ。
 背景にあるのが2つのバブル崩壊だ。不動産バブルの崩壊で建設投資が伸び悩み、企業の生産活動も不振に見舞われた。さらに上海など株式市場では6月中旬以降の暴落によって、多くの個人投資家が損失を抱え、自動車の販売に影響があったとの指摘もある。
 いいところがない7月の経済指標をみると、その直前の四半期にあたる4~6月の国内総生産(GDP)成長率が、政府目標とちょうど同じ7・0%を維持できたことがまったくもって不可解だ。
 「中国の公式統計はファンタジーだと考えており、真実に近いということもない」と明言するのは、英調査会社ファゾム・コンサルティングのエリック・ブリトン氏。
 ロイター通信によると、同社は昨年から、中国の公式GDPの予想を公表するのを取りやめ、実際の成長率とみなす数値を公表することを決めたというから徹底している。
 「実際の成長率とみなす数値」の参考になるのは、中国ウオッチャーの間ではおなじみの「李克強指数」だ。李首相が遼寧省の党書記だった2007年、当時の米国大使に「GDP統計は参考用にすぎない」と述べたことが、内部告発サイト「ウィキリークス」に暴露された。李首相は信用できるデータとして、電力消費と鉄道貨物輸送量、銀行融資をあげている。
 英調査会社によると、中国の4~6月期の実際の成長率は3・2%で、公式統計の半分以下にとどまるという。さらに2015年の成長率は2・8%、そして16年はわずか1・0%にとどまると予想している。
 『中国経済まっさかさま』(アイバス出版)の著者で週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏は、「中国経済は不動産バブルが崩壊した後、株式バブルによって支えられてきたが、『ダブル・バブル』崩壊によってハードランディング(墜落)は不可避となった。貯蓄を蒸発させるだけでなく、資産価格下落で新たな負債が生まれる『逆資産効果』も懸念される」と語る。
 人民元を切り下げた習政権が、今後も財政支出や追加緩和を打ち出すとの見方もあるが、勝又氏は根本的な解決にはならないと指摘する。
 「危機を脱出するには市場経済への移行やイノベーション(技術革新)政策が必要だが、共産党政権には実行不可能だろう。中国経済に逃げ場はなくなった」

●産経新聞 平成27年8月24日

http://www.sankei.com/economy/news/150824/ecn1508240019-n1.html
2015.8.24 18:08更新
世界揺さぶる党指令型の破綻 米国と結束して金融自由化早期実行迫れ 編集委員 田村秀男

 人民元切り下げをきっかけに、中国経済の自壊が始まった。チャイナリスクは世界に広がり堅調だった日米の株価まで揺さぶる。党が仕切る異形の市場経済が巨大化しすぎて統制不能に陥ったのだ。打開策は党指令型システムの廃棄と金融市場の自由化しかない。
 中国自壊はカネとモノの両面で同時多発する。11日に元切り下げに踏み切ると、資本が逃げ出した。党・政府による上海株下支え策が無力化した。
 12日には自動車や鉄鋼・金属関連の大型工場が集中している天津開発区で猛毒のシアン化ナトリウムの倉庫が大爆発した。天津爆発の翌日は遼寧省で、22日には山東省の工場が爆発した。過剰生産、過剰在庫にあえぐ企業はコストがかかる保安体制で手を抜く。党官僚は、企業からの賄賂で監視を緩くする。党内の権力闘争もからむだろうが、基本的には党指令体制が引き起こした点で、工場爆発は元安・株価暴落と共通する。
 鉄鋼の場合、余剰生産能力は日本の年産規模1億1千万トンの4倍以上もある。自動車産業の総生産能力は年間4千万台を超えるが、今年の販売予想の2倍もある。これまでの元安幅は4~5%だが、輸出増強に向け、もう一段の元安に動けば資本逃避ラッシュで、金利が急騰し、逆効果になる。
 過剰生産自体、党による市場支配の副産物である。鉄鋼の場合、中国国内の需要の5割以上が建設、不動産およびインフラ部門とされるが、党中央は2008年9月のリーマン・ショック後に人民銀行の資金を不動産開発部門に集中投下させて、ブームをつくり出した。自動車の過剰生産も構造的だ。党内の実力者たちが利権拡張動機で、影響下に置く国有企業各社の増産、シェア競争を促す。
 需給や採算を度外視した企業の行動は通常の場合、万全とはいえないとしても、銀行や株式市場によってかなりの程度、チェックされる。ところが中国の場合、中央銀行も国有商業銀行も党支配下にある。株式市場も党が旗を振れば金融機関もメディアも一斉に株価引き上げに奔走する。その結果、株価は企業価値から大きく乖離(かいり)し、典型的なバブルとなる。
 鉄鋼の場合、余剰生産能力は日本の年産規模1億1千万トンの4倍以上もある。自動車産業の総生産能力は年間4千万台を超えるが、今年の販売予想の2倍もある。これまでの元安幅は4~5%だが、輸出増強に向け、もう一段の元安に動けば資本逃避ラッシュで、金利が急騰し、逆効果になる。
 過剰生産自体、党による市場支配の副産物である。鉄鋼の場合、中国国内の需要の5割以上が建設、不動産およびインフラ部門とされるが、党中央は2008年9月のリーマン・ショック後に人民銀行の資金を不動産開発部門に集中投下させて、ブームをつくり出した。自動車の過剰生産も構造的だ。党内の実力者たちが利権拡張動機で、影響下に置く国有企業各社の増産、シェア競争を促す。
 需給や採算を度外視した企業の行動は通常の場合、万全とはいえないとしても、銀行や株式市場によってかなりの程度、チェックされる。ところが中国の場合、中央銀行も国有商業銀行も党支配下にある。株式市場も党が旗を振れば金融機関もメディアも一斉に株価引き上げに奔走する。その結果、株価は企業価値から大きく乖離(かいり)し、典型的なバブルとなる。
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