ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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アベノミクスの金融政策を指南7~浜田宏一氏

2013-04-16 17:12:22 | 経済
●わが国が取るべき政策

 わが国が取るべき政策について、浜田氏はどのような意見か。基本的見解は、次のようなものである。
 「世界各国のマクロ経済の状態を見ると、新日銀法が施行されてからの15年間、日本だけが名目、実質の経済成長ともに1人遅れをとっている(略) 他の国も原燃料高や財政難に悩んでいるのに、日本だけ何が違うのか。それはデフレ気味に経済を運営し、金融政策を引き締め、円高を容認してきたことに大きな原因があります。そこから脱却するには、やはりインフレ目標と大胆な金融緩和が必要だと思います」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20)
 こうした見解を持つ浜田氏は、リフレ派に賛同する。リフレ派とは、デフレで停滞した経済を回復させるために、適正なインフレへの回帰を図るリフレ政策を目指す経済学者や経済専門家である。
 「リフレ派と呼ばれる学者たちは、たとえば岩田規久男氏の『昭和恐慌研究会』などを通じて『デフレ円高のように、貨幣に関することは金融政策で直せる』と主張してきました。私も彼らの考え方に賛同しています」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20)
 浜田氏は、リフレ派の代表格・岩田規久男氏を高く評価する。岩田氏は、「インフレもデフレも貨幣的現象である」とし、貨幣的現象は金融政策で解決できる、超円高の原因はデフレであり、金融緩和によってデフレと超円高を解決できると主張している。浜田氏は、基本的に岩田氏の主張を支持している。
 岩田氏については、拙稿「デフレ脱却の経済学~岩田規久男氏」に書いたので、ご参照願いたい。
 浜田氏は、日本が取るべき政策として、インフレ目標の導入を提案する。
まず浜田氏は、経済成長で適度のインフレは正常な現象だという。
 「1960年から72年までの高度経済成長の時期、日本は毎年、ヒト桁のインフレを続けていました。いま経済成長が著しい中国でも、年に3~4%のインフレが起こっています。経済成長に伴って適度のインフレが起こるのは、極めて正常な現象なのです」(「週刊現代」2013年2月9日号)
 それなのに日銀は、インフレを嫌うあまり、デフレ容認政策を取り続け、日本の長期不況の元凶となった。そこで、浜田氏は、インフレ目標政策(インフレーション・ターゲティング)を採用すべきだと説く。インフレ目標政策は、平成10年(1998)からクルーグマンがわが国に勧めている政策であり、岩田規久男氏らが導入を提唱してきた。浜田氏は、インフレ目標政策が必要だと支持する。ただし、これは次善の策だという。
 「私は、インフレ・ターゲットに対しては次善の策だと思っています。正しい経済理解に基づいて金融政策をやっていれば、こんなに円高になることもないし、高度成長期のように緩やかなインフレ率は実現できるはずですから。日銀が正しい経済学に従うのなら、それに任せてもいいのです。しかし、この20年間を振り返ると、日銀は正しい経済観に従って金融緩和をして来なかった。だから、目標の義務付けが必要なのです」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20)
 インフレ目標の目標値については、次のようにいう。
 「デフレ期待がこれだけ定着してしまった現在、個人的には、世界の有力経済学者の言うように、インフレ目標はそれより高く3%でもいいのではないかと思います」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20)
 かつてクルーグマンは、わが国は4%を目標とすべきと勧めた。岩田氏は現在、日銀に2%から3%のインフレ目標を中期的に達成することを政府は義務付けるべきだと主張している。この数字は、各国の中央銀行の歴史・経験から適切な範囲と見られる。
 これについては、インフレ期待が大きく醸成されると、長期金利が高騰するのでないかと心配する見方がある。この点について、浜田氏は次のように言う。
 「ノーベル経済学者のマンデルは、期待インフレ率が上がるほどには国債の金利が上がらないことを証明しています。実質金利は名目金利から期待インフレ率を引いたものですから、金融緩和によって名目金利が一定に抑えられている環境では、期待インフレ率が上がると実質金利は下がります。よって、その影響が名目金利に多少ハネ返って来たとしても、結果的に実質金利が下がって、投資し易い環境になることは変わらず、景気が刺激されることになります」(ダイヤモンド・オンライン 2013.1.20)
 金利には、次の関係がある。

  実質金利=名目金利ー期待インフレ率

 たとえば、名目金利がゼロでも、期待インフレ率が2%なら、実質金利はゼロから2を引いてマイナス2%となる。この金利をマイナス金利という。マイナス金利は、お金を借りると2%の金利がついてくるわけだから、投資が促進される。中央銀行は、人々が物価上昇を期待するように働きかけることで、実質金利を下げることができる。その方法が、量的緩和である。民間の金融機関が日銀に持っている当座預金残高の量を、国債や手形を買って調整する方法である。名目金利が低ければ、インフレ期待が大きく醸成されても、長期金利は高騰しない。

 次回に続く。

関連掲示
・拙稿「デフレ脱却の経済学~岩田規久男氏」
http://homepage2.nifty.com/khosokawa/opinion13s.htm

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