『人類と感染症の歴史』の著者・加藤茂孝氏は、国立感染症研究所のOBで、米CDC(疾病予防管理センター)勤務の経験もあるウイルス学の専門家です。加藤氏は、中世ヨーロッパにおけるペストが社会に及ぼした影響を踏まえて、武漢ウイルスが現代の世界に与える影響を予想しています。メディアのインタヴューに応えて、次のように語っています。
●朝日新聞 令和2年5月1日付(抜粋)
――ペストがきっかけで、社会も大きく変わったようですね。
ペストは何度も流行しますが、一番ひどかったのが14世紀半ばからの1、2世紀です。このときに、数百年をかけて欧州社会が変わり始め、中世から近世への変化が起きました。
例えば、当時はキリスト教のローマ教皇の全盛期でした。教会がすべての権威を持っていました。ところが、そのローマ教皇が祈ってもペストは治まらない。医学を担当していた神父たちも全然治せないわけです。人々が不満を持ち始め、その後の宗教改革へとつながっていきます。
また、産業構造もがらりと変わりました。当時は荘園制といい、地主(領主)が農奴に土地を貸し付け、農作物を納めさせていました。農奴はいわば奴隷的な身分でした。しかし、ペストにより農奴が一気に減り、荘園制が次第に維持できなくなります。農奴は待遇改善を要求し始め、後に賃金を得て労働する賃金労働制へと移行していきます。
そのほかにも、ペストがきっかけで検疫が始まりましたし、医療も近代化していきました。ユダヤ人迫害もこの時代に顕在化しました。
このように100年、200年かけて、中世ヨーロッパ社会がペストの大流行により大きく変わっていったのです。
――中世と比較して今の時代はどうですか?
ペストの時代は人口も少ないし、移動手段も限られ、情報もそれほどなかった。なので社会の変化が起きるのに数百年かかっているのですが、今は人や物、情報がほとんど1日のうちに世界を駆け回るようになった。中世に起きた1世紀の変化が、おそらく1年で起きるのではないかと思います。すごい勢いです。
すでに働き方は変わってきていますよね。今はリモートワークが急速に広がっている。会議も学校も診療も就職活動も全部オンライン。リモートワークができない製造業だって、自動ロボット化がますます進むと思います。産業構造ががらりと変わるでしょう。
政治的な側面で見れば、自国優先主義が加速すると思います。戦後、国連を中心に国際協調の流れができましたが、この数年で米国でトランプ大統領が誕生したり、英国がEUから離脱したりしました。感染症は国際問題ですから、国際協調しないと解決しないはずなのに、今は自国利益が優先されがちです。米国は、WHOは政治的に偏っていると言って拠出金を出さない。大変な時代だと思います。
https://digital.asahi.com/articles/ASN4Z3DN2N4XUHBI032.html?_requesturl=articles/ASN4Z3DN2N4XUHBI032.html
●ニュースソクラ 令和2年5月14日付(抜粋)
ニュースソクラ編集長インタビュー:『人類と感染症の歴史』の著者・加藤茂孝前CDC客員研究員に聞く(下)
ーー感染症の大流行は世界史を変えてきているのですか。
14世紀のペストの大流行に当時、医療も担っていたカトリック教会は無力でした。教会の権威失墜が宗教改革につながっていきます。ペストにより欧州人口が3分の1から半分減り、農奴制が崩れ、賃金小作農に代わることで社会構造も変化していきました。中世が終わったのはペスト流行がきっかけになっています。南米文明の消失など感染症が世界史に与えた影響は数知れません。
ーー今回の新型コロナウイルスの流行も人類史を変えると思いますか。
外出自粛や都市封鎖でテレワークが広がった。オンライン会議がまたたくまに広がり、オンラインでの診療、面接、授業も広がるでしょう。工場はさらに自動化が進み、押印も電子署名に変わっていくでしょう。
一方で、国境閉鎖、物資の国内優先使用などにみられる自国優先主義が広がりかねません。本来は、世界的なパンデミックは世界が協力して英知や技術を結集しなければならないのですが、反対の方向に向かってしまいかねない懸念があります。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200514-00010000-socra-soci
************* 著書のご案内 ****************
『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/d4dac1aadbac9b22a290a449a4adb3a1
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●朝日新聞 令和2年5月1日付(抜粋)
――ペストがきっかけで、社会も大きく変わったようですね。
ペストは何度も流行しますが、一番ひどかったのが14世紀半ばからの1、2世紀です。このときに、数百年をかけて欧州社会が変わり始め、中世から近世への変化が起きました。
例えば、当時はキリスト教のローマ教皇の全盛期でした。教会がすべての権威を持っていました。ところが、そのローマ教皇が祈ってもペストは治まらない。医学を担当していた神父たちも全然治せないわけです。人々が不満を持ち始め、その後の宗教改革へとつながっていきます。
また、産業構造もがらりと変わりました。当時は荘園制といい、地主(領主)が農奴に土地を貸し付け、農作物を納めさせていました。農奴はいわば奴隷的な身分でした。しかし、ペストにより農奴が一気に減り、荘園制が次第に維持できなくなります。農奴は待遇改善を要求し始め、後に賃金を得て労働する賃金労働制へと移行していきます。
そのほかにも、ペストがきっかけで検疫が始まりましたし、医療も近代化していきました。ユダヤ人迫害もこの時代に顕在化しました。
このように100年、200年かけて、中世ヨーロッパ社会がペストの大流行により大きく変わっていったのです。
――中世と比較して今の時代はどうですか?
ペストの時代は人口も少ないし、移動手段も限られ、情報もそれほどなかった。なので社会の変化が起きるのに数百年かかっているのですが、今は人や物、情報がほとんど1日のうちに世界を駆け回るようになった。中世に起きた1世紀の変化が、おそらく1年で起きるのではないかと思います。すごい勢いです。
すでに働き方は変わってきていますよね。今はリモートワークが急速に広がっている。会議も学校も診療も就職活動も全部オンライン。リモートワークができない製造業だって、自動ロボット化がますます進むと思います。産業構造ががらりと変わるでしょう。
政治的な側面で見れば、自国優先主義が加速すると思います。戦後、国連を中心に国際協調の流れができましたが、この数年で米国でトランプ大統領が誕生したり、英国がEUから離脱したりしました。感染症は国際問題ですから、国際協調しないと解決しないはずなのに、今は自国利益が優先されがちです。米国は、WHOは政治的に偏っていると言って拠出金を出さない。大変な時代だと思います。
https://digital.asahi.com/articles/ASN4Z3DN2N4XUHBI032.html?_requesturl=articles/ASN4Z3DN2N4XUHBI032.html
●ニュースソクラ 令和2年5月14日付(抜粋)
ニュースソクラ編集長インタビュー:『人類と感染症の歴史』の著者・加藤茂孝前CDC客員研究員に聞く(下)
ーー感染症の大流行は世界史を変えてきているのですか。
14世紀のペストの大流行に当時、医療も担っていたカトリック教会は無力でした。教会の権威失墜が宗教改革につながっていきます。ペストにより欧州人口が3分の1から半分減り、農奴制が崩れ、賃金小作農に代わることで社会構造も変化していきました。中世が終わったのはペスト流行がきっかけになっています。南米文明の消失など感染症が世界史に与えた影響は数知れません。
ーー今回の新型コロナウイルスの流行も人類史を変えると思いますか。
外出自粛や都市封鎖でテレワークが広がった。オンライン会議がまたたくまに広がり、オンラインでの診療、面接、授業も広がるでしょう。工場はさらに自動化が進み、押印も電子署名に変わっていくでしょう。
一方で、国境閉鎖、物資の国内優先使用などにみられる自国優先主義が広がりかねません。本来は、世界的なパンデミックは世界が協力して英知や技術を結集しなければならないのですが、反対の方向に向かってしまいかねない懸念があります。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200514-00010000-socra-soci
************* 著書のご案内 ****************
『人類を導く日本精神~新しい文明への飛躍』(星雲社)
https://blog.goo.ne.jp/khosogoo_2005/e/cc682724c63c58d608c99ea4ddca44e0
『超宗教の時代の宗教概論』(星雲社)
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