ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

友愛を捨てて、日本に返れ52

2010-02-25 10:28:49 | 時事
●米中の間に対立的要素が出現(続)

 米中間における第4の対立的要素は、イランである。イランは中東で最も反米的な国であり、中東にシーア派を広め、またイスラエルを駆逐することを諮っている。イランの核開発疑惑は、アメリカの指導層が大いに警戒するところである。ところが、中国はイランの石油や天然ガスに利権を拡大し、関係を深めている。核疑惑に対しても、中国は米欧が推進する制裁に反対する立場を強めている。これに対し、クリントン長官は22年1月29日、中国に対し「長期的影響を考慮すべきだ」と翻意を迫っている。今後のイランの出方によっては、米中に緊張が高まるだろう。
 第5の対立的要素は、チベットである。オバマ大統領やクリントン長官は、中国のチベット弾圧に触れないできている。しかし、22年2月17日、オバマ大統領は、訪米したチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談した。アメリカの知識層には、中国のチベット弾圧を厳しく批判する意見がある。米中は、基本的に自由や人権に関する考え方が、対極的なほど違っている。中国共産党は、チベット支配への批判を看過できない。米中の基本理念の対立が確認された。
 第6の対立的要素は、グーグルである。グーグルは、ネット検索最大手。平成18年(2006)、中国市場参入のために「検索結果を規制する」という中国共産党政府の要求をのみ、情報統制政策に協力した。しかし、グーグルは中国発のハッカー攻撃を受けたとして、攻撃や検閲に異議を申し立てた。中国市場からの撤退も覚悟しての行動である。我慢の限界を超えたのだろう。これは単に1企業の問題ではない。米連邦捜査局(FBI)報告によると、中国は18万人のサイバースパイを養成し、国防総省のコンピューターだけでも年9万回の攻撃を仕掛けているという。クリントン長官は、インターネットの自由に関する講演で、「情報や機会へのアクセスが居住地や検閲官のきまぐれに左右される分裂した惑星に住むのか」と問い、中国との理念上の違いを強調した。
 以上、最近表面化した米中間の対立的要素として、地球温暖化、台湾、人民元、イラン、チベット、グーグルを挙げた。掘り下げていけば、米中の根本的な価値観の違い、国家体制の違いに起因する。アメリカが、これらの要素において、すべて中国の意向に従うことはありえない。それゆえ「G2」ないし米中軍事同盟は、容易に実現するものではない。

●わが国は米中関係を観察・分析し、国益追求の外交をせよ

 わが国は、単純な「G2」でも米中対決でもなく、複雑で多面的な様相と大小種々の変化を見せる米中関係を、よく観察・分析し、短期的・表面的な展開に右往左往せず、自国の国益の追及を根本においた外交を行なうべきである。
 たまたま現在、アメリカはオバマという大統領、民主党の政権となっている。しかし、米国内には共和党も存在する。民主党の中にも対中強硬派や人権重視派も存在する。国務省は親中的な傾向が強いが、国防総省は中国に警戒的であり、両者の近田関係もある。中国市場で多大な利益を上げる企業もあれば、中国製品の進出で打撃を受ける企業もある。このように米国内にも多様性がある。現在は一定の部分が支配的だが、何かのきっかけで、違う部分が強く動き出すかもしれない。
 私が同時代を生きる人間として見て来たアメリカの歴代政権は、ニクソン、フォード、カーター、レーガン、ブッシュ父、クリントン、ブッシュ子である。これらの政権は、一つの主義、一つの路線では割り切れない、多様で、時に矛盾した外交を行った。それゆえ、私はオバマ政権も単純な見方はできないと思っている。わが国は、相手の変化に右往左往せず、わが国の国益を追求しなければならない。
 仮に米中対決になれば、日本はアメリカとともに中国と戦うのか、それとも同盟を離脱して参戦を避けるのか。逆に米中同盟になって、双方から突き放されたら、日本は米中双方の言いなりになるのか。いずれにしても、最終判断は日本人が自ら下さねばならない。
 ところが、自民党も民主党も、自立なき事大主義に陥り、方やアメリカ、方や中国に追従する外交に終始している。自らのよって立つ基盤の強化に努め、主体的な判断・行動を行うのが、一国の外交の基本であることを、忘れてはならない。鳩山氏の「友愛外交」は、国益の追及という外交において最も重要な目的があいまいである。アメリカ依存から中国依存に転換するだけの自立なき事大主義の外交では、国家国民の利益を守れないことをよく理解すべきである。そして、どんな状況であっても主体的な判断・行動ができるためには、自主防衛の整備が不可欠であることを再認識すべきである。

 次回に続く。

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