ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
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プーチンはウクライナに侵攻するか

2021-11-28 11:02:16 | 国際関係
 ロシアがウクライナとの国境に近い露西部スモレンスク州に付近に9万2000人以上とされる大規模な軍部隊を集結させ、一帯での軍事的緊張が高まっている。
 冷戦終焉後、ウクライナの東部はロシアとの関係を深め、西部はヨーロッパとの関係を発展させている。ウクライナは旧ソ連圏でロシアに次ぐ第2の国家である。同国が親露路線を取るか、それとも親欧米路線を取るかという問題は、欧米とロシアの地政学的なバランスに大きく影響する。欧米にとっては、ウクライナを友好国・同盟国にできれば、ロシアの西進を防ぐとともに、他の旧ソ連圏の国家の民主化を推進できる。ロシアにとっては、隣国のウクライナが欧米側になると、直接、欧米の軍事的圧力を受けることになる。国家安全保障上、ウクライナを一種の緩衝国としておきたい、
 ウクライナでは、2004年に民主化を求めるオレンジ革命が起り、親欧米派のユシシェンコ大統領が誕生し、欧米寄りの政策を進めた。しかし、失政が続き、民衆の支持は低下した。2010年の大統領選挙では親露派のヤヌコビッチが大統領になった。これに対し、2014年(平成26年)年2月、大規模なデモが湧き上り、政変が起こった。再び親欧米的な暫定政権が誕生するや、翌3月プーチン政権のロシアはウクライナのクリミア半島南部を実効支配した。クリミア自治共和国の議会はロシアへの編入を決議し、ロシアはこれを受けてクリミア半島南部を併合したのである。
 ウクライナは、1991年にソ連から独立した時には、多数の核兵器と100万人の軍隊を持っていた。しかし、維持費がかかるし、隣国に警戒されてしまうから危険だとして、ウクライナは全ての核兵器を譲った。代わりにブダペスト協定書という国際条約を結び自国の防衛を他国に委ねてしまった。100万人の軍隊を20万人つまり5分の1まで削減した。しかも、大国の対立に巻き込まれないようにNATOのような軍事同盟にも加盟しなかった。ロシアは、こうしたウクライナを再び親露化させるため、様々な働きかけをしてきた。特にロシアに近いウクライナ東部を中心に親露派を支援し、工作員を送り込んで影響力を増加してきている。
 ロシアがクリミア半島南部を併合した際、ウクライナにこれを実力で取り返す力はなかった。安易な平和主義が外国の侵攻を招いた。クリミア半島は地政学的な要衝であり、黒海の北岸にあり、ロシアが地中海や紅海に出るための海洋上の拠点である。クリミアの併合は、冷戦終結後、世界的に初めての本格的な武力による現状変更の動きとなった。 ウクライナはもちろんのこと国際社会の大多数は、この編入を認めていない。欧米はロシアへの経済的な制裁を行っている。
 ウクライナは、ソ連解体後、ロシアを中心につくられた独立国家共同体(CIS)の一員である。現政権はCISからの脱退を準備中であり、将来的に北大西洋条約機構(NATO)への加盟を模索している。プーチン露大統領は、ウクライナのNATO加盟を「容認できない一線」と位置付け、一線を越える相手には「非対称的かつ苛烈な返答で後悔させる」と警告してきた。一方、米国は今年(2021年)に入って、対戦車ミサイル「ジャベリン」のウクライナへの供与を決定した。6月には、米国やウクライナの海軍を中心に約30カ国が参加する大規模軍事演習を黒海で実施した。
 これに対し、プーチンは、9月にNATOによるウクライナ支援の拡大も「一線」に含まれるとの認識を示した。現在、国境付近に大規模な軍部隊を配備しているのは、NATOによるウクライナ支援の拡大に対する警告と見られる。
 ウクライナ、米国、NATOはロシアがウクライナに攻撃を仕掛ける可能性があるとの懸念を表明している。米軍事メディア「ミリタリー・タイムズ」は、「ロシアは来年1~2月の侵攻を準備している」とするウクライナ軍情報部門トップの見解を伝えた。
 そうした中、11月27日、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「12月1日にクーデターが計画されているとの情報を得た」と明らかにした。ウクライナと敵対するロシアや財閥トップが関与している可能性にも触れたが、双方とも関与を否定したと伝えられる。
 ロシアとしては、国境近くから軍事的な圧力をかけながら、ウクライナ内部の親露勢力による政権奪取を推進し、新政権が要請すれば軍を送るという手かと思われる。相当数の工作員がウクライナに入って、反政府運動・武装闘争を組織しており、親露勢力の背後で暗躍していると見られる、
 果たしてプーチンが12月初めにクーデターを画策したり、来年1~2月の侵攻を準備したりするほど、ウクライナ情勢がロシアにとって重大な局面になっているのかどうか、各種の報道では分からない。国際的に見ると、来年2月4日から20日まで中国・北京で冬季五輪が行われるので、その前に五輪前に軍事行動を起こすことは、波紋が大きくなる。ロシアの友好国である中国にとっては、大迷惑だろう。
 ロシアがウクライナに侵攻する時期としては、中国が台湾に侵攻する時に合わせて東西で同時に動けば、中露が連携して欧米を大きく揺さぶることができるだろう。その点でも、北京五輪後に中国が電撃的な台湾侵攻作戦を計画していないか、要注意である。

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