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ほそかわ・かずひこの BLOG

<オピニオン・サイト>を主催している、細川一彦です。
この日本をどのように立て直すか、ともに考えて参りましょう。

戦略論6~国家の構造と戦略の体系

2022-06-01 08:45:49 | 戦略論
●「国家の構造と戦略の体系」(細川)

 ここまで見てきた戦略論の体系例は、軍事戦略を中心として、それを拡大して、上方向には国家総合戦略へと伸ばし、下方向には戦術を置くという仕立てになっている。これは、戦略という概念を中心としているからである。だが、国家論においては、国家の概念を中心に考える。国家論の観点に立つと、まず国家の構造を示し、その構造の中に国家的な戦略を位置付けた戦略論を示すべきものとなる。国家の構造については、第1部の「国家の構造」の項目に書いたが、ここで、あらためて戦略との関係で説明する。戦略については、国家総合戦略と、その一部としての軍事戦略を分けて記述した方がよいと考える。
 以下は、そのような考えに立つ私の「国家の構造と戦略の体系」である。

 最初に概要を示す。

<国家の構造論>
(1)国家の要素
(2)基本的な制度・機構
(3)国家目標・国家方針
(4)国家政策

<国家の戦略論>
(1)国家総合戦略
(2)個別分野の戦略
 ① 政治戦略
 ② 経済戦略
 ③ 外交戦略
 ④ 軍事戦略
 ⑤ 文教戦略
 ⑥ 情報戦略
 ⑦ 科学技術戦略
 
<軍事戦略論>
(1)世界戦略
(2)地域戦略
(3)作戦戦略
 (※この下に、戦術と戦闘技術を位置づける)

 次に説明を行う。

<国家の構造論>

(1)国家の要素
 近代国家は、領域、人民、主権(統治権)、思想を4つの基本的な要素とする。これらの要素は、統治という行為の主体(人民)・対象(人民及び領域)・権利(主権)・方法(思想)である。
 国家は統治の主体・対象・権利・方法の4つを基本的な要素として持つ構造体である。この構造体は、付随的な要素として、基本的な制度・機構、国家目標、国家方針、国家政策を持つ。付随的な要素は不可欠のものではないが、これらの要素を欠く国家は、自らの維持・発展が難しく、国益の追求も不十分となる。(註1)

(2)基本的な制度・機構
 統治を行うに当たって、統治の主体、多くは政府または統治機関は、どういう国家を作るのかという国づくりを構想する。まず必要なのは、統治のための基本的な制度・機構である。
 国家は、憲法・基本法・宣言等に国民の定義をし、その権利と義務を定める。また、基本的な制度・機構を規定する。規定は行政・立法・司法の全般に及ぶ。

(3)国家目標・国家方針
 統治のための基本的な制度・機構を整えた後に必要なのは、国家が何を目指し、どういう方向に進み、何をどのように行うのかである。言い換えれば、国家の目標、方針を打ち立てることである。

(4)国家政策
 国家目標、国家方針のもとに、政策が立案される。政策とは、政治において決定される事項である。政治とは政策決定の過程であり、より広く言えば集団の意思決定の過程である。
 国家政策は、国家の存続・発展を図るために、様々な施策を実行し国益を追求するものである。国家政策を立案する時に求められるものが、戦略である

<国家の戦略論>

(1)国家総合戦略
 国家は、国家目標・国家方針に基づく政策を立案するに当たって、戦略を必要とする。
 戦略とは、「ある集団が他の集団と競争的な環境にあって、敵が存在しそれとの相互作用を通じて、集団の目的を達成するための総合的・長期的な計画。国家においては、軍事的手段だけでなく、非軍事的手段をも活用する構想、方針、方策を体系化したもの」である。単なる計画ではなく戦略が必要になるのは、環境が競争的であること、そして、敵が存在することである。
 国家総合戦略は、国家目標・国家方針のもとに策定されるものであり、その下に国家の活動における個々の分野の活動が行われる。各活動分野において、個別的な戦略が立案され、それらを総合したものが、国家総合戦略となる。あるいは、逆に、国家総合戦略の下に、個別的な分野の戦略が策定される。

(2)個別分野の戦略
 国家における特に重要な活動には、政治・経済・外交・軍事・文教・情報・科学技術がある。各活動分野において、それぞれ個別分野の戦略が立案される。

 ① 政治戦略:政治全般に関する政策を策定するための戦略。
 ② 経済戦略:経済全般に関する政策を策定するための戦略。
 ③ 外交戦略:外交全般に関する政策を策定するための戦略。
 ④ 軍事戦略:軍事全般に関する政策を策定するための戦略。
 ⑤ 文教戦略:文化・教育全般に関する政策を策定するための戦略。
 ⑥ 情報戦略:情報・通信・広報・宣伝等の政策を策定するための戦略。
 ⑦ 科学技術戦略:科学・技術を発達させ活用する政策を策定するための戦略。
 
<軍事戦略論>

 軍事戦略は、国家総合戦略の下の個別分野の戦略である。戦争目的を達成するために国の軍事力その他諸力を準備し計画し運用する方策であり、軍事行政・軍事作戦の全体に係るものである。

(1)世界戦略(global strategy)
 軍事的な観点から見た世界全体に係る戦略。国家は、自国の世界における位置づけに基づいて、軍事的な観点から見た世界戦略を持つ必要がある。
 核兵器やミサイルについて、「戦略レベル」というのは、その兵器の使用が敵対する国家同士の存亡に関わるものをいう。火力の大きい核兵器や大陸間弾道弾(ICBM)等をいう。
 米国と中国・ロシア、NATOとロシアの間で「戦略レベル」の兵器が使用されれば、世界戦争に発展する可能性がある。それゆえ、ここでいう「戦略レベル」は「世界戦略レベル」と呼ぶべきものである。
 現代の国家は、自国が「戦略レベル」の兵器を保有するか否かに関わらず、また大国・中国・小国のいずれであれ、軍事的な世界戦略を持つ必要がある。

(2)地域戦略(area strategy)
 所与の地理的範囲内における目標を達成するために軍事的資源をいかに用いるべきかを規定するもの。
 一般に地域戦略を戦域戦略(theater strategy)と呼ぶことが多いが、私は地域戦略と呼ぶ。「戦域」を意味する theaterには、本来、空間の広さや距離の概念は含まれていない。それにもかかわらず、核兵器やミサイルを「戦略レベル」「戦域レベル」「戦術レベル」に分け、最も広い地理的範囲に「戦略」、比較的広い地理的範囲に「戦域」、比較的狭い地理的範囲に「戦術」を使うことが通例となっている。それゆえ、戦略の名称には、物理的・地理的な空間に係る言葉を使用し、地域戦略と呼ぶ方がよいと考える。(註2)

(3)作戦戦略(operational strategy)
 軍事作戦を実行するために、大規模な部隊の作戦行動を指導する方策。地域戦略が地理的・空間的であるのに対し、軍隊の運用に関する戦略である。
 作戦を行う主体・場所・方法によって、作戦戦略は、3つに分類される。
 作戦を行う主体である軍の種別によって、陸軍戦略・海軍戦略・空軍戦略等がある。また、これらは、作戦を行う場所によって、陸上戦略、海洋戦略、航空宇宙戦略等ともいう。サイバー戦略がこれらに加わる。
 代表的な作戦の方法として、次のようなものがある。決戦戦略/持久戦略、直接戦略/間接戦略、正規軍の戦略/ゲリラ戦略、殲滅戦略/攪乱戦略、消耗戦略/疲弊戦略消耗、強制戦略/抑止戦略、テロ戦略/テロリズム戦略、斬首戦略/標的殺害戦略等である。

<戦術と戦闘技術>
 軍事戦略の下位に位置づけられるものが、戦術と戦闘技術である。戦術と戦闘技術は「国家の構造と戦略の体系」に含むべきものではない。戦術は戦闘を指導する術策であり、軍事戦略とは概念的に異なる。戦術には、攻撃と防御、遭遇戦と陣地戦、物質的要素と精神的要素等の側面がある。戦闘技術は、戦術よりさらに下位に位置し、個々の兵の格闘や使用する武器、情報機器等に関する技術である。


(1) 「国家の構造と戦略の体系」と地政学の関係について註記する。国家の基本的な要素の一つに領域があり、領域は、自然的な条件として、地理的な特徴を持ち、また、社会的な条件として、国際的な環境に存在する。国家に関する理論的な思考において、こうした条件を重視するものが、地政学である。地理的な条件は、国家目標・国家方針の樹立、国家政策の策定をする場合に十分考慮すべきものである。また、外交・軍事・経済等の個別的戦略を総合する国家総合戦略の立案は、地政学に基づくものでなければならない。本稿の国家論が戦略論とともに地政学の基礎的研究を必要とする所以である。
(2) 「戦域」を意味する元の西洋単語は、英語で言えば theater である。theater は、日常語では劇場や演劇、観客等の意味で使われるが、戦域を意味する時は、事件の現場や場面、活動の舞台に通じる語義を持つ。軍事用語としての theater には、物理的・地理的な空間の広さや距離の遠近の概念は含まれていない。戦闘が行われる現場的・場面的な意味のある場所を指示する言葉である。
 一般に、敵の中心地を直接攻撃できる核兵器を戦略核兵器、戦場で使用される核兵器を戦術核兵器と呼び、中間的なものを戦域核兵器と呼ぶ。「戦略レベル」の下に「戦域レベル」「戦術レベル」を置くものである。この場合は、主に射程によってレベルを分ける。今日一般的に6400キロメートル程度以上の射程を持ち、核攻撃の出来る兵器を戦略核兵器と呼ぶ。
 世界戦略の下に地域戦略があり、地域戦略には対象となる場所の広狭、距離の遠近によって、「戦域レベル」と「戦術レベル」があるということにすれば、「戦術戦略」という言い方を避けることも出来る。地域を意味する area には、広域であれば region、狭域であれば locality、zone 等を充てて、階層化できる。

 次回に続く。

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戦略論5~戦略論の体系の例(ルトワック、比較)

2022-05-29 08:43:26 | 戦略論
●戦略論の体系の例(続き)

<体系例3~ルトワックの場合>

 ルトワックは、様々な著書で戦略論の体系について述べている。著書『自滅する中国』(芙蓉書房出版)の巻末に、訳者である奥山真司氏が解説を描いている。その解説の大意は、下記の通り。
 ルトワックの考える戦略の構造は、垂直面と水平面に分かれる。
 垂直面は、上からいうと、大戦略、戦域戦略、作戦、戦術、技術という5つのレベルによって構成されている。ここで、大戦略は grand strategy、戦域戦略は theater strategy、作戦はoperational level、戦術はtactical level、技術は technical levelの訳語である。
 水平面は、敵と味方の間で行われる活動の作用と反作用が、垂直面の各レベルに対応して構成されている。
 奥山氏の解説は水平面の内容に触れていないが、ルトワックは、水平面には軍事的な手段以外の戦争手段である外交、宣伝、経済、情報等があるとしている。そして、垂直面と水平面の相互作用の調和が重要だと説いている。軍事的手段と非軍事的手段の両方の相互作用の調和を重視するものである。近年、ルトワックは、戦争における経済的手段の重要性を説き、地政学に対する地経学を唱道している。これは、水平面の非軍事的手段のうち、特に経済的な手段の重要性を強調するものである。

●戦略論の体系例の比較

 体系例1(多くの国の例)と体系例2(奥山氏)は、ともに国家戦略/大戦略の上に、より重要なものを置いている。体系例1では、国家理念と国家方針であり、体系例2では世界観と政策である。理念は、一般に idea や philosophy の訳語であり、奥山氏のいう世界観は、ヴィジョン(vision)だとされている。ヴィジョンは「ものの見方」「未来図」「理想像」などを意味する言葉である。体系例3(ルトワック)には、これら国家理念・国家方針、世界観・政策に当たるものがない。
 体系例1は、国家戦略、体系例2は大戦略という用語を使っている。これらは、私が国家総合戦略と呼んでいるものに当たる。
 体系例1は、国家戦略の下に外交・経済・技術・心理の4つのレベルの戦略があるとしている。私は、このレベルに政治・経済・外交・軍事・文教・情報・科学技術の7つの分野の戦略を置く。
 体系例1と体系例2は、次の下の階層に軍事戦略を置く。体系例1の場合、軍事戦略が外交・経済・技術・心理の戦略より下位になる。体系例3では、ここで軍事戦略に当たるレベルに、戦域戦略を置く。
 体系例1は、次の階層に作戦戦略、体系例2は作戦を置く。名称の後に戦略が着くかどうかの違いだが、戦略を国家戦略、軍事戦略、作戦戦略の三つ分ける考え方に立てば、作戦ではなく作戦戦略となる。
 体系例1には、体系例2と3にある技術というレベルが置かれていない。

 次回に続く。

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戦略論4~戦略論の体系の例(多くの国、奥山真司氏)

2022-05-27 07:38:55 | 戦略論
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■戦略論4~戦略論の体系の例(多くの国、奥山真司氏)

2.戦略論の体系

●戦略論の体系の例

 戦略論は、どのように体系化されるか。多くの国の場合、戦略学者・地政学者の奥山真司氏、米国の戦略家・歴史家のエドワード・ルトワックの例を示し、比較・検討したい。その後、細川の考えを提示する。

<体系例1~多くの国の場合>

 Wikipediaは、「現代において戦略・戦術の概念は大きく発展し、概ね多くの国で以下のように体系化されている」として、次のように記載している。

(1)国家理念
 あらゆる戦略の根幹となる基本理念であり、究極的な最終目的やそれを踏まえた目標などを定める。

(2)国家方針
 国家理念に基づいた国家目的を達成するために政治的・軍事的・外交的・経済的・心理的な政策を整合的な方針としてまとめたもの。

(3)国家戦略
 国家方針に沿って国家目的を達成するための統合的な戦略であり、大戦略・統合戦略・全体戦略とも言う。

 a 外交戦略
  国家戦略に基づいた外交政策の全体的な戦略。
 b 経済戦略
  国家戦略に基づいた国家経済の全体的な戦略。
 c 技術戦略
  国家戦略に基づいた国際的な技術開発競争の全体的な戦略。
 d 心理戦略
  国家戦略に基づいた国家心理戦の全体的な戦略。

(4)軍事戦略
 国家戦略に基づいた軍事行政・軍事作戦の全体的な戦略。

(5)作戦戦略
 軍事作戦を実行する上での戦略であり、部隊の作戦行動を指導する。

(6)戦術
 戦闘を指導する術策。狭義の戦略を一部含むに留まり、戦略とは異なる概念である。

<体系例2~奥山真司氏の場合> 

 地政学者・奥山真司氏は、戦略と戦術を分け、それをそれぞれ階層化している。
 戦略は、(1)世界観、(2)政策、(3)大戦略の三つに階層化される。
 戦術は、(4)軍事戦略、(5)作戦、(6)戦術、(7)技術の四つに階層化される。
 軍事戦略を戦術の方に入れ、広い意味の戦術の下位に、狭い意味の戦術を置くという、ややこしいとらえ方になっている。

#戦略

(1)世界観(vision)
 政策(方針)を考えるときには、自分が(あるいは国家として)どのような状態を望んでいるのか、あるべき姿というのはどういうものかをはっきりと認識して決めなければならない。
 さらに深く、3つのことを考えなければならない。
 
・自らの国家とは何なのか(アイデンティティを考える)
 ・周囲はどのような状況か(現状分析)
 ・自国はどのような状態を作り上げたいのか、あるいはどんな役割があるのか

 奥山氏によれば、上記のアイデンティティの部分で、アメリカが「自由と民主主義(と市場)を世界に広げる」という国家ヴィジョンを持ち、中国は中華思想という確固たるヴィジョンがある、と言っているのだが、日本にはこういったものが無いらしい。

(2)政策
 国家戦略を考えるレベル。国家戦略では基本的に安全保障全般を考える。軍事だけでなく、外交、インテリジェンス、経済を含むすべての力を統合して安全保障を考える。政治家が考える。仮想敵国を設定するのもこのレベル。
 軍事戦略では反対勢力との競争に焦点を置き、相対的な弱点を見つけて勝利を得ようとする。一方、基本的国家戦略においては、相手国の軍隊を打ち負かす必要はなく、国力のすべてを活用して平和を守り、自国に利益をもたらす環境を作ることを目的としている。

(3)大戦略
 戦争の前あるいは平時において考えるレベル。最近では陸海空に加えてサイバー・電磁波・宇宙の領域が加わるのだが、これらに(カネ・人員を含む)どれほどの資源を配分するかを決める。地域ごとの分配もこのレベルで決める。
 奥山氏は「地政学は大戦略のレベルだ」と主張している(コリン・グレイからそのように習ったとのこと)。

#戦術

(4)軍事戦略
 軍のトップがいくつかの作戦を同時進行させながら、国vs国の最終的な軍事的勝利を考えるレベル。

(5)作戦
 「いつどこで戦いをするのか」。会戦とは大部隊レベル。
 作戦計画に基づいて遂行され、複数のチームレベルの戦術を同時進行させて目的を果たす。

(6)戦術
 「戦闘の勝ち方」。小さなチームレベルの話。小隊とか中隊などがチームワークの中の戦闘。頭にあるように、技術の上位概念で、個々の技術をコントロールしている点に注目。

(7)技術
 個々の兵の練度、スキル、所持している武器などがこのレベル。

 次回に続く。

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戦略論3~国家総合戦略、各分野の戦略、軍事戦略

2022-05-25 08:01:07 | 戦略論
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■戦略論3~国家総合戦略、各分野の戦略、軍事戦略

●国家総合戦略と各分野の戦略の区別

 国家戦略(大戦略)は、国家目標・国家方針のもとに策定されるものであり、その下に国家の活動における個々の分野の活動が行われる。
 私は、国家において特に重要な活動として、政治・経済・外交・軍事・文教・情報・科学技術を挙げる。各活動分野において、それぞれ政治戦略、経済戦略、外交戦略、軍事戦略、文教戦略、情報戦略、科学技術戦略が立案され、それらを総合したものが、国家戦略となる。あるいは、逆に、全体的な国家戦略の下に、個別的な分野の戦略が策定される。
それゆえ、私は、国家に関する総合的な戦略を、単に国家戦略ではなく、国家総合戦略と呼ぶ。一般に、大戦略・統合戦略・全体戦略と呼ばれるものである。

●国家総合戦略と軍事戦略の違い

 国家総合戦略は、国家の政治的な目的を達成するために、軍事的手段だけではなく、非軍事的手段をも活用するものであり、軍事戦略の上位に位置づけられる。 軍事戦略は、国家総合戦略の下における軍事分野の戦略である。
 軍事戦略は、政治戦略・経済戦略・外交戦略・文教戦略・情報戦略・科学技術戦略と連携したものでなければならない。特に対外的な政治に係る外交戦略とは、密接な関係が必要である。
 元外交官の岡崎久彦氏は、『戦略的思考とは何か』(中公新書)で、戦略とは、どの国と同盟を結ぶかだと説いた。彼のいう戦略は外交戦略のことである。国家総合戦略では、しばしば、外交戦略は軍事戦略より重要である。だが、彼のように軍事戦略の持つ独自の重要性に触れていない戦略論は、外交を誤る。
 エチェヴァリアは、『軍事戦略入門』(創元社)で、「大戦略という用語は、今日の防衛に関する文献では同盟や連合の戦略、あるいは国家戦略(ないし国家安全保障戦略)として用いられることもある」と述べている。
 彼は、「軍事戦略とは、敵方の戦闘能力と意志を削ぎ、我方の目的を達するまでそれを継続する営みである」と定義する。そして、「実のところ戦略とは、相手を出し抜くことに尽きる。最初の武力衝突の前から、しばしば戦闘が終結したずっと後まで、軍事面のみならず外交面でも、そして可能ならば経済や文化の面でも、相手を出し抜くのである」と説く。ここで出し抜くとは、裏をかいたり、先手を打つことである。相手を欺くことであり、詭計・詭道に通じる。
 さて、彼によると、軍事戦略とは将軍の「仕事」ないしは懸案事項であり、大戦略は「国家元首の懸案事項」である。大戦略家も軍事戦略家も「敵対勢力を出し抜こうとする点は同じである。大戦略家は通常、同盟や連合を組むことによってこれを行う。すなわち我方の力を相手と比べて増強ないしは維持するために、条約や合意をとりつけるのである。軍指揮官は、そのような協力関係や合意によってもたらされる物質的・精神的優位を利用し、具体的な軍事戦略を組み立てる。大戦略家は、差し迫った武力紛争の潜在的な損失と期待される便益を考慮し、前者を最小化しつつ後者を最大化するような条件を整えようとする。また大戦略家は、同時的に発生している軍事的コミットメントと長期的な利益との釣り合いをとり、それに応じて優先順位を設定する。それを受けて軍事戦略家は、損失が便益を上回ったり、短期的利益によって長期的利益が損なわれることなく、将軍の『仕事』が成功を収めるように努めるのである」と述べている。
 国家総合戦略と軍事戦略の関係は、前者は国家の最高指導者が実施し、後者はその部下である軍事の責任者が実施するという関係になる。政治の軍事に対する優位ということである。戦争を始めるのも終わらせるのも、政治の役割である。軍事は、その間の期間を担う。宣戦布告も講和条約も、政治が行う。仮に軍人が大統領や首相になっている政府においても、このことは変わらない。政治が軍事に優先する。言い換えれば、国家総合戦略が軍事戦略の上位にある。
 ここで軍事戦略と密接な関係のある外交戦略は、国家の最高指導者が行う政治の外交面に関する戦略であり、国家の最高指導者は政治戦略・経済戦略・外交戦略・軍事戦略等を総合し、それらを担う部下(大臣・長官級)の補佐を受けて、国家総合戦略を実施する。軍事戦略は国家総合戦略の一部または下位を構成するものである。

●軍事戦略の構成要素

 現代の防衛分析家、アーサー・ライカ・ジュニアは、軍事戦略を三つの本質的な構成要素に分割する。すなわち、目的、方法、手段である。目的は、敵に対する脅迫、抑止、説得、強制、懲罰、鎮圧、あるいは征服を含み得る。方法とは、基本的に各種の軍事戦略、またはそれらの組み合わせである。手段とは、軍事力と同義である。そして、
 <軍事戦略=目的+方法+手段>
を、ライカの方程式という。
 エチェヴァリアによると、今日ではライカの方程式にリスクの要素を加えることが、一般的になっている。その考え方によれば、優れた軍事戦略とは、三つすべての構成要素(目的、方法、手段)が調和しているもの、つまり所定の「方法」に従い、十分な「手段」をもって「目的」を達成するものをいう。調和を求める基本的な根拠は、それがリスクを低減させることにある。
 ライカの方程式は、国家総合戦略にも応用できる。国家総合戦略も、目的、方法、手段を構成要素とし、それらの調和はリスクを低減させる。今日、国家の安全保障は、軍事的な手段による安全保障だけでなく、外交、経済、情報等、非軍事的な方面も含めた総合的な安全保障を目指すものとなっている。そうした総合的な安全保障においては、戦略を次のように表すことが一般的になっている。
 <戦略=目的+方法+手段+リスク>
である。

 次回に続く。

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戦略論2~戦略の語源、概念の発達と区別

2022-05-23 08:32:54 | 戦略論
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■戦略論2~戦略の語源、概念の発達と区別

●戦略の語源

 戦略という漢字単語が宛てられる西洋単語(英語 strategy他)は、古代ギリシャ語の stratogos が語源とされる。stratogos は stratos(軍隊)とagein(指揮)が組み合わさった語であり、「軍隊の司令官」「将軍」とともに「軍隊の指揮、またその技術」を意味する。当時は広く戦争術・兵術という意味で使われた。
 戦略に対して、戦術という漢字単語が宛てられる西洋単語は、英語 tactics他である。語源は古代ギリシャ語の“tactic”とされる。もとは「配置」という意味だったが、戦いにおける兵士や物資の配置を決めるときに使うことが多かったため、次第に「戦術」という意味を持つようになった。

●戦略の概念の発達

 世界史的に見ると、シナ文明では、古くから戦争に関する思想が発達した。人類史上最初に「戦略」の概念を用いたのは、紀元前6世紀初め頃に書かれた『孫子』というのが定説になっている。本書は、今日にいう戦略に当たる言葉は使っていないが、戦略論の観点から見ると、国家的な戦略、軍事的な戦略、戦術というレベルに応じた思考がされている。以後、シナ文明では、『孫子』以来の伝統が受け継がれ、多くの兵法書に戦略的な思考が見られる。
 私は、古代ギリシャ=ローマ文明の滅亡後、ヨーロッパで発生した文明をヨーロッパ文明と呼ぶ。その文明がアメリカ大陸にも広がったものを近代西洋文明と呼ぶ。古代ギリシャ=ローマ文明とヨーロッパ文明を連続的にとらえる時は、西洋文明と呼ぶ。
 ヨーロッパ文明で最初に本格的な軍事思想を説いたのは、16世紀前半のニッコロ・マキャヴェッリである。マキャヴェッリの著書には、戦略論的な思考が見られる。フランス革命をきっかけとしたナポレオン戦争で、近代的な戦争が戦われるようになり、戦争の技術の研究が進んで、戦略と戦術を理論的に分けることが提案された。19世紀前半のカール・クラウゼウィッツは、「多くの戦闘を連合して戦争の目的を達せしめるのが戦略であり、一つの戦闘を計画し実施するのが戦術である」と定義した。同時期のアントワーヌ=アンリ・ジョミニは「戦略とは地図上において戦争を計画する技術であり、作戦地全体を包括する」と定義した。19世紀後半のヘルムート・フォン・モルトケは、戦略を「勝利が達成されるまで変化する戦況に臨機応変に対応すること」と表現した。その後、研究がさらに進み、戦略の概念が持つ意味が広がり、戦略それ自体を分類して考える必要が生じてきた。
 もともと軍事用語だった戦略の概念が広がり、軍事だけでなく、国家の政治にも応用されるようになった。今日では、軍事戦略と国家戦略に分けて使うのが、一般的である。また、軍事戦略についても次第に複雑化し、様々な分類がされるようになっている。

●国家戦略・軍事戦略・作戦戦略の区別

 20世紀イギリスの軍事評論家ベイジル・リデル=ハートは、戦略を「政治目的を達成するために軍事的手段を配分・適用する技術」ととらえた。そして、戦略を大戦略(grand strategy)と戦略(strategy)に区別する重要性を指摘した。大戦略は国家目的を遂行する政策であり、今日では国家戦略(national strategy)と呼び、軍事的な戦略は軍事戦略(military strategy)と分けて呼ぶことが多い。
 また、軍事戦略をさらに分けて、国家戦略に基づいた軍事行政・軍事作戦の全体的な戦略を軍事戦略とし、その下で軍事作戦を実行するために部隊の作戦行動を指導する戦略を作戦戦略(operational strategy)とする分け方も、広く使われている。
 ブリタニカ国際大百科事典は、小項目事典「戦略」の解説で、戦略は、普通次の3種が含まれるとして、次のように説明している。
 国家戦略 (大戦略)とは、「国家目標の達成、特に国家の安全を保障するため、平時戦時を通じて国家の軍事・政治・経済などの諸力を総合的に発展させ、効果的に運用するための方策」をいう。軍事戦略とは、「戦争目的を達成するために国の軍事力その他諸力を準備し計画し運用する方策」をいう。作戦戦略とは、「作戦目的を達成するため高次の観点から大規模な作戦部隊を運用する方策」をいう。

 次回に続く。

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戦略論1~戦略の定義

2022-05-21 08:05:49 | 戦略論
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■戦略論1~戦略の定義

 拙稿「国家を論じる~戦略論と地政学を加えて」は、第1部「国家論」を終えて、今回から第2部「戦略論の基礎的研究」に入る。第2部の連載の見出しは「戦略論」として通し番号を振る。

第2部 戦略論の基礎的研究

1.概説

●戦略の定義

 今日は、戦略という言葉が大流行である。「戦」という漢字は「たたかう」「いくさ」を意味し、「略」は、「はかる、はかりごと、仕事や軍事のすじ道を考える、またそのこと」(「漢字源」)を意味する。計略・策略・謀略等の語に使われ、「戦」の字と結びついて「戦略」の語が作られた。
 「戦略」という漢字単語は、江戸時代の歴史書である頼山陽の『日本外史』等に出てくる言葉である。明治時代の文豪で軍医だった森鴎外は、カール・フォン・クラウゼヴィッツの『戦争論』を翻訳した際、西洋単語の strategy の訳語に充てた。それが訳語として定着した。
 strategyとしての戦略は、本来軍事用語である。だが、政治・経済・外交・経営・スポーツ・ゲーム理論・生物学等でも、広く使われるようになっている。この言葉がこれほど多用される前には、一般にどういう言葉が使われていたか。
 おそらく最も多かったのは、計画だろう。計画という語を中心に、構想・方針・方策等の語を組み合わせて、今日、しばしば戦略という語で表現されるものが表現されて来たと思われる。
 計画の語の定義としては、「物事を行うに当たって、方法・手順などを考え、企てること。また、その企ての内容。もくろみ。はかりごと、企て、プラン」(「広辞苑」)、「何らかの物事を行うために、あらかじめその方法や手順を考え企てること。また、そうした考えや方法、手順。具体的には、将来実現しようとする目標と、そこに到達するための主要な手段や段階と組み合わせたものである」(「ブリタニカ国際百科事典」)などとされている。
 これに対し、戦略の語は、「戦術より広範な作戦計画。各種の戦闘を総合し、戦争を全局的に運用する方法。転じて、政治社会運動などで、主要な敵とそれに対応すべき味方の配置を定めることをいう」(「広辞苑」)、「戦争に勝つための総合的・長期的な計画」「組織などを運営していくについて、将来を見通しての方針」(「デジタル大辞泉」)、「いくさのはかりごと。特に、戦いに勝つための大局的な方法や策略」「ある目的を達成するために大局的に事を運ぶ方策。特に、政治闘争、企業競争などの長期的な策略」(「精選版 日本国語大辞典」)などと定義されている。
 米陸軍大学教授のアントゥリオ・エチェヴァリアは、著書『軍事戦略入門』で、「戦略が計画と異なる点は、環境の性質と、敵ないし相手の存在である。環境が競争的で敵が存在するとすれば、戦略が必要となる。そうでなければ、計画で十分である」と述べている。
 計画は、一定の構想のもとに、方針を立て、方策を実行するための考えをまとめたものである。単なる計画ではなく戦略が必要になるのは、環境が競争的であること、そして、敵が存在することである。もし環境が競争的でなく、敵が存在しなければ、戦略は必要ない。国家にしても、そのほかの集団にしても、また個人にしても、自ら計画を立てて、その計画に基づいて活動すればよい。戦略が必要になるのは、競争的・敵対的な相手があって、こちらの行動に対して、相手が反応し、その反応に対して、次の行動を決めていかなければならないという条件下にある時である。言い換えれば、こちらの行動が生み出す作用に対して反作用が返ってくることが予想される時に、戦略が必要となる。それゆえ、戦略は自立的な組織が一方向的に進める計画でなく、本質的に相互作用的であり、敵からどういう反作用が生じ、それにどう応じながら計画を実現するかを織り込んだものでなければならない。
 そこで私は、戦略を次のように定義する。
 「ある集団が他の集団と競争的な環境にあって、敵が存在しそれとの相互作用を通じて、集団の目的を達成するための総合的・長期的な計画。国家においては、軍事的手段だけでなく、非軍事的手段をも活用する構想、方針、方策を体系化したもの」
 ここで、相手との相互作用を通じて集団の目的を達成するとは、その集団の意思を相手に受け入れさせること、または強制することである。この意思の作用を力の概念でとらえれば、この行動は、権力の実現・拡大のための行動である。権力関係は、意思の強制―需要の関係であり、支配-被支配の関係である。
 意思の受容・強制を図ることは、軍事だけでなく、政治・経済・外交・経営等においても行動の目的とされるから、戦略の語が軍事以外の分野でも広く使われるようになったことには、論理性がある。
 だが、わが国では、戦略の定義があいまいなまま、計画や方策と同義語として使用されることが多くなり、また「戦略的」という形容詞が多用されている。そのため、定義を欠いた流行り言葉のようになっている。それは、大東亜戦争の敗戦後、我が国では、国民の国防の意識が極度に低下し、国民が軍事について学校教育や社会教育を通じて学ぶ機会がなく、軍事に関して無知になっていることに原因があるだろう。
 かく言う私自身、教育を通じて軍事学を学んだことはまったくない。わずかな入門書・専門書を読んで頼りにしているところである。

 次回に続く。

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