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●漫画&ドラマ・・ 「坊っちゃん」

 僕は、日本の近代文学草創期を代表する文学作家、夏目漱石の代表作の一つでもある「坊っちゃん」を、生まれてこの方幾星霜、恥ずかしながら一度も読んだことないんだけれども、もう小学生くらいの頃から、「坊っちゃん」のだいたいのお話は知っていた。どうしてかと言うと、日本のメディアでは昔から非常に有名な「坊っちゃん」の物語は、戦後の映画やテレビ放送の黎明期から、漱石の原作を基にして何度もドラマ化して来ていて、僕はもう物心着いた頃から、ただぼんやりと見てただけにしろ、ドラマや映画版のものをTV 放送で見てるからだ。子供だから、ちゃんと理解してドラマを見てたかどうか怪しいが、だいたいお話の流れくらいは小学校中学年くらいでぼんやりとは解ってたんじゃないだろうか。小学生時代は、住み家の斜め前が邦画ロードショーの映画館で、しょっちゅう映画を見に入ってたが、ここで映画版「坊っちゃん」を見た記憶はない。やはりドラマの「坊っちゃん」はテレビで見たのだろう。テレビオリジナルのドラマだったのか、映画をテレビで流したものか、今となってはそこまでは記憶してないけど。

 今はもう日本漫画界の大御所も大御所、水島新司先生がデビューから何年かの若き頃、大阪日の丸文庫から出版された漫画本で、コミック版の「坊っちゃん」を著してます。全二巻構成で、1964年の刊行ですが、これは貸本版かな?貸本出版の末期、貸本出版社はA5判貸本を徐々にやめて、新書判コミックスの刊行を始めたんですが、この水島新司氏著作の「坊っちゃん」も、全二巻を一冊にまとめて新書判で出していたと思う。同じ日の丸文庫の、多分ハイコミックスで全一巻刊行で、僕のあやふやな記憶だと、僕が読んだのは多分、新書判コミックスの方で一冊で読んでると思う。勿論、貸本屋から借りて来て。



 ただ、ネットで調べたら、ハイコミックス版の「坊っちゃん」の初版発行は1967年になってたんですね。僕が毎日毎日近所の貸本屋さんに通っていたのって、多分、66年の初夏頃までだと思うんですよね。ここのところがちょっと納得が行かないトコなんですが、でも、近所の貸本屋が店仕舞いした後も、僕は、毎日ではありませんが時々、家から少し離れた貸本屋まで行くこともあったんですね。だから、この少し離れた貸本屋で借りて読んだのかなあ(?)。中学生になってからはもっと離れた貸本屋まで自転車で行ってました。ここも時々だったかな。



 水島新司氏の漫画家デビューは、1958年、貸本出版の大阪日の丸文庫から貸本漫画の短篇でデビューして、ここから数年は日の丸文庫専属で数多の貸本漫画を描いて行きます。生年から数えると漫画家デビューは19歳のときになりますね。貸本時代は日の丸文庫の「影」や「オッス」などの短篇オムニバス誌で短篇漫画を発表しながらも、長篇・中篇を氏の単独本「水島新司シリーズ」で発表して行きます。「水島新司シリーズ」は二十数巻まで続いてますね。日の丸文庫貸本の「水島新司シリーズ」は同じシリーズで、「水島新司爆笑シリーズ」と表記されたりもしてますね。初期の水島新司先生の漫画は、等身大リアル生活感のお笑い漫画が多い。テレビ黎明期に放送された舞台コメディ劇の漫画化作品も多いですね。また、リアル生活感の人情ものもけっこう描いてますね。貧しさに負けない感動漫画みたいな作品とか。昭和30年代から40年代初め頃までは世の中が総体的にまだまだ貧しい時代でしたから、この時代の漫画作品は水島先生に限らず貧しさの困苦に負けない頑張りや友情・人情を描いて感動を呼ぶ作風の漫画も多かったですね。



 子供時代の僕はテレビで放映された映画やドラマの「坊っちゃん」と、この水島新司先生作画の漫画版「坊っちゃん」から、日本文学のレジェンド作家の高名な代表作「坊っちゃん」の、おおまかなストーリーを知って覚えてた。70年代以降も夏目漱石の「坊っちゃん」を原作とした映画やドラマは何作も作られて上映・放映されてますね。僕が数十年ぶりに子供の頃読んだ漫画版の「坊っちゃん」を思い出したのは、2016年のフジ系列のお正月スペシャル番組で、ジャニーズの男性アイドルグループ「嵐」のメンバーの一人、二宮和也主演でTV ドラマ「坊っちゃん」を放送していたのを見たからです。最近になって水島新司版「坊っちゃん」を調べたら、記憶どおり日の丸文庫の貸本漫画で、思い出したのは僕が読んだのは多分、日の丸文庫貸本出版の末期から刊行してた新書判コミックスの漫画本でだろう、と憶えてた訳ですが、もともとはその前にA5判貸本で全二巻で刊行されたもので、ひょっとしたらこちらのオリジナル版で読んでいるのかも知れませんが、何しろ最初の貸本出版のときは僕は8歳ですし、ここは全く記憶してません。ただ新書判コミックスで読んだということは憶えてます。



 90年代後半に双葉社から愛蔵版コミックスで日本漫画家大全というシリーズ本が続々と刊行され、日本漫画界のレジェンド漫画家、各作家の中篇・短篇の名作を集めて一冊本に編集した豪華版がたくさん出たんですけど、その中に水島新司先生の中・短篇集も刊行されてて、その「日本漫画家大全-水島新司珠玉傑作集」の中に、水島先生の貸本時代の名作「坊っちゃん」が収録されてます。98年の刊行で、この分は僕は知りませんでした。水島新司先生と言えばもう、野球漫画専門の作家のように思われがちですが、勿論、日本野球漫画界の第一人者で野球漫画のレジェンド作家ですけど、若い頃は人情漫画や、卓球やサッカー、プロレス・柔道を題材にした熱血感動漫画や、「銭っ子」などのシリアスな内容の作品などもたくさん描いてました。70年代後半からこちらは野球漫画ひとすじという感じかな。

水島新司―珠玉傑作集 (日本漫画家大全) 単行本 – 1998/3 水島 新司 (著)

坊っちゃん (まんが日本の文学) 単行本 夏目 漱石 (著), 清水 綾

◆坊っちゃん [Blu-ray] 二宮和也 (出演), 鈴木雅之 (監督) 形式: Blu-ray

(2017-1)
 
「坊っちゃん」と言えば思い出すのが、原作·関川夏央で作画·谷口ジローの「坊っちゃんの時代」。「坊っちゃんの時代」を読んだのっていつ頃だろうか。双葉社のA5判豪華版コミック本。発刊が1987年だからその頃なんだろうな。88年くらいかな。僕は初め、「坊っちゃんの時代」は一冊本で全1巻だとばかり思ってた。

 そうしたら、しばらくして本屋で2巻目を見つけた。「坊っちゃんの時代」1巻目は、夏目漱石を中心に明治の一側面の時代を描いていて、面白く読んだけど、第2巻は森鴎外の話で、何か、鴎外はあんまし興味ねえな~、とか思って、森鴎外を中心に描いた2巻目の、サブタイトル「秋の舞姫」は買わなかった。コミックスにしては豪華版で高かったし。

 長い間、この「坊っちゃんの時代」はシリーズ全2巻で終わったのだとばかり思ってたら、最終的にはこのシリーズ本はA5判豪華版で全5巻まで続いたんですね。後で調べて解ったんだけど、双葉社の青年漫画誌「漫画アクション」に長期連載されたものらしい。僕は最初、一冊本で関川夏央さんと谷口ジローさんの黄金コンビの書き下ろし単行本かと思ってた。何しろ、この黄金コンビは、あの名作「事件屋稼業」を著した作家コンビですからね。僕は「事件屋稼業」の漫画、大好きだった。

 「事件屋稼業」は1979年から80年、双葉社のコミック雑誌「漫画ギャング」に連載されてコミックス単行本で出版され、その後90年代、「新·事件屋稼業」として日本文芸社のコミック雑誌「漫画ゴラク」に続編が連載されて、1996年から全編まとめて、双葉社のA5判豪華版全6巻で、タイトル「事件屋稼業」として刊行され、僕はこの豪華版で「事件屋稼業」を完読した。

 僕は70年代後半から80年代前半、双葉社の週刊漫画アクションを愛読していたけど、85年86年頃からアクションを読まなくなって、80年代後半からは漫画アクションは全く読んでない。関川夏央さんと谷口ジローさんの黄金コンビに寄るコミックの名作、「坊っちゃんの時代」が漫画アクションに連載されたのが1987年から96年までの長期間ですが、この間もずっと漫画アクションを読んだことないので、僕は雑誌掲載では「坊っちゃんの時代」は見たことない。

 関川夏央さんと谷口ジローさんの名作、「坊っちゃんの時代」は生真面目に歴史に忠実という訳ではなく、関川さんの推測や創作のエピソードを絡めて描いた、実在した史上の人物を明治の時代背景に沿って、推理を交えながらコミカルに描いた歴史フィクションの、明治群像劇ですね。コミックではありますが、読めば教養書としても価値のある漫画本だと思います。「坊っちゃんの時代」シリーズは僕は第1巻だけしか読んでないけど、全巻読み通したら面白そうですね。まぁ今の僕は爺ィになって視力がだいぶ衰えてるから、読破力にあんまり自信がないのでそれほど食指も動きませんが。

 「坊っちゃんの時代」は2014年に双葉社から新装版が同じA5判で再刊されてますし、双葉文庫でも漫画文庫として全5巻で出てます。ユーモラスに描かれた漱石の、谷口ジロー先生の超絶画力に寄る、表情や動きとかたまりませんね。魅力的なコミック教養読本です。文庫版は2002年の発刊か。

新装版『坊っちゃん』の時代 単行本(ソフトカバー) 関川 夏央 (著), 谷口 ジロー (著)

新装版 不機嫌亭漱石 『坊っちゃん』の時代 第五部 単行本(ソフトカバー) 関川 夏央 (著), 谷口 ジロー (著)

『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫) 文庫 関川 夏央 谷口 ジロー

事件屋稼業 : 1 (アクションコミックス) Kindle版 谷口ジロー (著), 関川夏央 (著)

事件屋稼業 : 2 (アクションコミックス) Kindle版 谷口ジロー (著), 関川夏央 (著)

 

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