ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

「初心者」さんの米国債投資について

2017年01月22日 | 米国債への投資

ハンドルネーム「初心者」さんから、米国債投資への質問がコメント欄にありました。

投資初心者の方みなさんへも参考になると思い、本文にて取り上げさせていただきます。

まずご質問から。

引用

初めて書き込みをさせていただきます。
お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いします。

米国国債を購入しようと考えております。
目的は、円の預金のみでは将来の日本に対応できないと考えているからです。
ゼロクーポンで満期まで保有し、そのまま預け金とするか外貨MMFで運用しようと考えております。

トランプ政権となり色々動いており、購入のタイミングが分からなくなってしまいました。

私の場合は、為替相場のみ気にすれば良いのでしょうか。

よろしくお願いします。

引用終わり

  適切なアドバイスをするために、私から以下の質問をさせていただきました。

引用

以下の質問はどの方へも質問させていただいている標準的質問項目です。なるべく答えいただけますでしょうか。

・年齢
・家族構成
・職業の安定性
・年収
・現在の運用総資産
・そのうち、米国債に投資する割合
・運用の期間

それと、私の著書はお読みいただいていますか。米国債の理解度を知りたいためにうかがっています。

あとコメントの以下の部分の意味が理解できないため、再度解説ねがいます。

>ゼロクーポンで満期まで保有し、そのまま預け金とするか外貨MMFで運用しよと考えております。

そのまま・・・の部分は、満期後のことを言っているのでしょうか?

以上、回答をよろしくお願いします。

回答しづらいものは結構です

引用終わり

 

 

  それに対する「初心者」さんからの回答は、

引用

・年齢:32歳
・家族構成:独身
・職業の安定性:普通でしょうか。公務員や大企業ほどではありませんが、中小企業よりは安定してるかと思います。
・年収:480万円
・現在の運用総資産:預金のみ1000万ほど。
・そのうち、米国債に投資する割合:現在はゼロ。今後は年間50万ほどをアメリカ国債にふりあてる予定です。
・運用の期間:10年を予定。

そのまま・・・の部分は、満期後のことを言っています。

著者は拝読しました。投資の本は30冊ほど読みましたが、納得したのが先生の本のみでした。


引用終わり

 

  私の回答を端的に申し上げれば、

「ヘッジが優先目的であれば、現時点の為替114円、10年金利2.4%でも、順次投資を開始すべきだ」です。

 

順次とは、毎月、隔月、四半期、半年、1年ごと、いずれでもかまわないと思います。今後の人生設計に合わされたらよいと思います。

ではすぐに始めてもよい理由を順に述べます。

1.年齢が若いので、時間軸での分散が十分に可能だから

2.50万円は全体の5%にすぎないので、少額分散投資だから

3.1と2にもかかわりますが、為替と金利のリスク分散も十分に図れる

  これだけだといいことずくめのようになってしまいますが、必ずしもそうではありません。考慮すべきリスクをあげておきます。

  「日本財政と円のリスク」です。

  つまり、例えば50万円を半年に一度ずつ投資したら、終わるまでに10年もかかります。すると投資し終えるまでに日本に大破綻が起こった場合、残額のヘッジをし損ねるというリスクです。

  

4.もう一つのヘッジ方法=借金と組み合わせる

  現在の超低金利を大活用し、自分で住む住宅を購入。もしすでに持ち家アリなら無視してください。聞くのを忘れました。

  1,000万円の金融資産をドルでヘッジすると同時に、円建ての借金を例えば2,000万円すると、消極的ヘッジではありますが、ヘッジ量は3倍にもなります。しかも全額ドルヘッジよりも分散が図れることになります。

  簡単なシミュレーションをお目にかけます。

設問;2,000万円、35年、金利1.5%のローンの価値が金利変動でどうなるか

例えば5年後、残存期間30年、ローン残高1,800万円と想定

30年物金利が2倍の3%に上昇したとすると、ローンの価値はいくらか

これは債券価格の計算と同じです。我々が借りるローンとは、銀行つまり投資家側から見れば債券投資と同じなのです。

計算結果は、現在価値が7割になる、つまり1,260万円になる

インフレの結果金利が上昇すると、ローンの実質価値は減り、上のケースでは3割も減るのです。

  もしさらに金利が上昇して5%になったらどうなるか。すると現在価値はわずか46%に減ってしまう。つまりローンの実質価値は54%も減るのです。

  厳密には借入れ額が毎年減価していくため計算は異なりますが、わかりにくくなるためそれを無視します。

今一度銀行サイドから見ると債券と同じですから、1.5%しか金利をもらえないローンを、金利が3%に上昇したときに売却すると、残存1,800万円のローンが1,260万円でしか売れないのです。


ついでに言えば、こんな超低金利ローンをしこたま抱える邦銀のリスクは、とてつもなく巨大だということです。日本国債から逃げおおせたとしても、そのかわりの資産が超長期住宅ローンだと、こういうリスクを抱えるのです。

  以上が私の回答です。不明な点などあれば、遠慮なくご質問ください。

コメント (32)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする