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トランプの本質 オバマへの恨みと意趣返し

2017年01月20日 | トランプのアメリカ

  一昨日まで4日間、蔵王温泉スキー場にいました。好天に恵まれ山頂近くの樹氷モンスターをたっぷりと堪能することができました。

  今晩、トランプは大統領就任を迎えますが、あえて寸前のタイミングで記事をアップします。

  「トランプの政策には一貫性も整合性もなく、思い付きで言ったことをそのまま政策として掲げている」、と言う専門家の分析に違和感を覚えていました。そして私自身は「彼の政策上の支離滅裂さは、政治家ではなくビジネスマンだからだ」と申し上げていました。しかし就任式を直前にした今、謎が解けました。彼を突き動かしていたのは、

「オバマへの恨み」

それがすべての原動力だったのです。

  昨晩のテレビ朝日の「報道ステーション」の分析が謎を解いてくれました。私は夜10時以降ほとんどテレビを見ないのですが、昨晩たまたま見ていると、ワシントンで取材する小林彩佳キャスターが、「トランプのツイッター34,000をすべて読んだ」と言って、その分析結果を示したのです。TV朝日のHPからニュースの概要を引用します。

引用

「トランプ氏のツイッター徹底分析」

20日にアメリカ大統領の就任式が行われる。就任前から注目が集まっているトランプ氏のツイッター。これまでのツイートは3万4000回以上。今や2000万人がフォローしていて、過激であればあるほどトランプ氏の主張は拡散していく。新聞やテレビなどとは対立し、指先から放たれる言葉で世界を翻弄するトランプ氏。これまでのツイートを独自に徹底分析。すると大統領になるためのち密な戦略が見えてきた

引用終わり

  番組は選挙に勝つための戦略がメインテーマだったのですが、私はむしろ何故彼が大統領を目指したのかの部分に興味を持ちました。そこに支離滅裂な政策の謎を解くカギが隠されていたからです。

  TV朝日によれば、ことの始まりはオバマ大統領を囲むパーティーでの出来事です。いつだったのか、何のパーティーだったのか私は内容をよく覚えていません。しかしそこに出席していたトランプをオバマが5分間も冗談ぽくおちょくったのです。理由はトランプがツイッターで「オバマの出生地はアメリカじゃないので、大統領の資格がない」とつぶやき、オバマが出生証明書を示し彼に反論したのが始まりです。パーティーのビデオでもオバマのおちょくりにトランプが苦笑いする様子が映っていました。

  彼はその直後からオバマに対する攻撃をツイッターで開始。人生のすべてにおいて負けるのが嫌いなトランプの本領がそこから発揮され始めました。しかししょせん大統領に対する一民間人ですので、初めはさしたる注目も集められなかったのですが、一国の大統領に過激な言葉で攻撃を繰り返すうちに次第に注目を集め、ツイッターのフォロワーが増えたと分析されていました。

  彼は自分を攻撃する人間には「100倍返し」をすると公言しています。CNNやニューヨーク・タイムズに対する攻撃も同じ。事実を事実として報道しても自分に都合が悪ければ相手が音を上げるまで徹底的に攻撃する。オバマ大統領は当然彼のツイッターなどに反応などしないので余計に腹を立て、100倍を1000倍にして攻撃を続け、そのまま大統領になることで意趣返しをするに至ったに違いありません。意趣返しの完遂とは、大統領に当選しオバマの成果をすべて否定し去ることだと考え、選挙に勝利することを至上命題にしたのです。

  オバマの成果、あるいはレガシーとは、

・オバマケアー

・「核なき世界」でノーベル平和賞受賞

・TPP合意

・環境問題でパリ協定批准

・キューバとの国交回復

・人種や宗教などの多様性を大事にする

  などがあります。

  オバマケアーやTPP、パリ協定は初日に廃棄すると言い、核なき世界などありえず軍拡競争には負けない、キューバとの国交回復は間違いだ、などと宣言しています。さらにロシアを封じ込めたオバマに対抗するためわざわざプーチンの友人であるティラーソンを国務長官に選んでオバマに当てつける。

  そして黒人初の大統領であるオバマが最も大事にしたのはアメリカという国の本質である人種や宗教の「多様性」ですが、それを白人至上主義の彼が完全否定することで意趣返しする。その一環がメキシコ移民の送還であり、壁を作ることなのです。

  さすがに黒人に出て行けとまでは言えないので、矛先をメキシカンとイスラムに絞り、徹底的に叩きまくることにしたのでしょう。黒人叩きの本音は、最近「トランプは違法大統領だ」と言った有力黒人議員をツイッターで叩きまくる様子からも理解できます。

 

  というように見ていけば、彼の政策は意趣返しによる「反オバマ政策」で見事に一貫性を有していることが理解できます。

  「反オバマ政策」を掲げて大統領に当選することで、オバマへの意趣返しは相当程度達成できています。ではこれ以上何をしようと言うのか。

  それについてテレビ朝日の分析に返りますと、以下のような分析をしていました。

「取材を受けた元トランプの選挙参謀曰く、トランプ氏は選挙という勝負に並々ならぬ意欲を見せ、その後は野となれ山となれというスタンスではないか。」

  つまり、勝つことが至上命題だったため、あとのことなど考えていなかったというのです。これもきっとかなり当たっているのでしょう。

  これでトランプ最初の記者会見のバックグラウンドもよく理解できます。会見では政策の披露など一切なく、言い訳会見に終始し、特定メディアへの攻撃ばかりでした。

 

  一方、相手方のオバマの反応を見ておきましょう。レガシーをすべて否定され巻き戻されることを、決してよしとは思っていないはずです。それが証拠に、オバマはトランプに二つの反論をしています。

その1、昨年12月26日オバマは、「もし3選目の選挙に出ることができたら、勝利できた」と述べています。もちろんトランプは、「ありえない」と反論しました。

その2、オバマは今週最後の記者会見で次のように言っています。

「もしアメリカがおかしくなれば、大統領をやめても私は黙ってはいない」

  大統領職を去る人間としては、異例の態度表明です。トランプの言うことがどんなに面白くなくとも、大統領にいる間は無視を決め込んでいた。しかしいったん市井の人となればトランプに反撃するぞという宣言をしたのです。

  すでにトランプ就任前の支持率は40%と異例の低さで、支持しないが54%に達しました。就任演説の中身も、本当に彼だけがドラフトするのであれば、言い訳と攻撃、中身のない「MAKE AMERICA GREAT AGAIN」に終わるでしょう。

以上

コメント (1)
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