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トランプのアメリカに投資しても大丈夫か その7

2017年01月24日 | トランプのアメリカ

  トランプの就任演説に対する報道の一般的評価に、私もおおむね賛成です。選挙運動中言っていたことと同内容で、「アメリカ」と言う言葉を34回も使い、世界のことなどこれっぽっちも考えていない。

   そしてまたアメリカのメディアとトランプの新たな戦争が始まりました。就任式に集まった聴衆の数についてです。報道がオバマの時の180万人に対し、わずか25万人程度だとしているのに対し、彼は「史上最大の聴衆が集まった。式場からリンカーン記念堂まで埋め尽くされた」と言い、相変わらず「メディアは嘘つきだ」と述べています。

  しかしもちろん事実は異なります。みなさんもきっとニュースでオバマの1回目の就任式と同じ時刻のトランプの就任式の写真を見ていると思います。オバマの時はリンカーン記念堂までの広場だけでなく、周辺の道にも人があふれている様子が見て取れます。これを見せつけられてもトランプはオレ様の方が史上最大で、メディアはウソを流しているとツイッターでも主張し続けています。

   大統領府の新報道官スパイサーが21日初の記者会見に臨み、このことに触れました。トランプと同じように「史上最大の聴衆、150万人だった」と真っ赤なウソを述べています。それに対して新聞記者が質問をしようとすると全く無視し、去っていきました。さらに彼は「大統領は今後もウソツキメディアに話すことはない。直接ツイッターでものを言う」とも言い、宣戦布告しています。

   このことは実に大事なことを示しています。これまでよく言われたのは、トランプは就任後には取り巻きスタッフや閣僚により、選挙中のような暴言は控え、さすがにまともな言動に変わるだろうという見方です。それが根底から覆ったのです。彼自身の演説内容も選挙運動と同じことを言い続け、スタッフや報道官の言動も彼に合わせウソをつくし質問にも答えない。メディアとの全面対決の姿勢を崩しませんでした。大統領とメディア、「100日のハネムーン」などと言う人はいなくなりました。

   と私は昨日原稿に書いたのですが、スパイサーがウソを反省しましたので、その弁をそのままロイターから引用します。

 [ワシントン 23日 ロイター] - スパイサー米大統領報道官は23日、初の公式記者会見で、「今後はうそをつかない」と記者団に対して約束した。同報道官は21日、トランプ大統領の就任式に集まった聴衆は「過去最大」だったと発言。しかし 写真に写っている聴衆の規模は、2009年のオバマ前大統領の最初の就任式を下回っていることが明らかで、発言は虚偽と判明した。

さらに、コンウェー大統領顧問が22日、ホワイトハウスは偏向したメディアに対抗するため「代替的事実(オルタナティブファクト)を伝えたかった」と発言したことから批判が一段と強まっていた。
スパイサー報道官は23日の会見で、今後は常に真実を語るつもりかと記者に問われ「われわれの意図は、あなた方にけっしてうそをつかないというものだ」と答えた。その上で21日に述べた「過去最大の聴衆数」について、テレビやオンラインを通じた聴衆も人数に含めた、と釈明した。

 

  苦しい釈明ですが、少なくとも真っ赤なウソはつけないことになっただけ、少しましです。コンウェーとはトランプ勝利の最大の貢献者と言われる女性選挙アドバイザーで、顧問になっています。


   さて、トランプの言っていることにはあまりにもウソと間違いが多く、信頼できません。アメリカにはその人物の言ったことを一つずつ検証し、ウソかマコトか判断するサイトがあります。サイト名は「ポリティカル・ファクト」。トランプ発言の事実チェックです。

   これによると「本当」5%と「だいたい本当」11%を合わせてわずか15%しかありません。「半分本当」を足してもやっと30%。言っていることの7割が「ウソ」というひどさです。ちなみにヒラリーは7割が本当でした。

   こうしたことは彼が大統領として適格かどうかではなく、人間としてまともではないことを示しています。

  

  私は選挙中の解説でCNNが精神分析医を呼んで彼を分析させ、「彼はサイコパシー」だということを示唆したと書きました。その説明を見てみましょう。 

「こころなび」というサイトからの引用ですが、このサイコパシー、トランプに100%当てはまります。

 引用

サイコパス(psychopath)とは、精神病質を持っている精神病質者の事を指します。

精神病質とは、一般的に正常とされている人格から逸脱しており、その人格が原因で自分自身や社会を悩ませる人と考えられています。具体的には、他人に対して冷淡、共感することができない、良心を失い罪悪感が全くない、自分の行動に対して責任を持つことができない、嘘をつくことが当たり前、非常に自己中心的、口が達者で表面だけで見ると魅力的に感じられるなどといった特徴があります。

また、サイコパスの多くは男性であり、脳の働きを調べると共感性を感じる部分の働きが低いことが多いことがわかっています。現在、日本では精神病として考えられてはおらず、パーソナリティー障害として考えられています。そのため精神異常としての位置づけではなく、名称も反社会性パーソナリティー障害と呼ばれています。

 サイコパスになってしまう原因が明確に分かっていない以上、現状ではサイコパスの治療は極めて困難となっています。脳の異常や欠陥、生育環境や社会・心理的な要因が複雑に絡み合ったものとして考えられていますので、決定的な治療方法はありません。

 引用終わり

   彼は自分が悪いとか間違っているとは絶対に認めず、偏執狂的に相手を非難し続けます。オバマ元大統領への恨みやマスコミへの恨みも、病的なまでに攻撃を繰り返しています。

   そのトランプを支える大統領府の報道官の取った姿勢を私はこう見ました。「トランプのツイッターでの暴言・失言の火消しは面倒なのでやめにした」。何故なら、事実を突きつけるマスコミに勝てっこないからです。

  初代ジョージ・ワシントンは「正直」で大統領になった。

  45代トランプは「ウソ」で大統領になった。

  じゃ、これからも救いはないのか。

 

  そんなことはありません。報道官の反省を含め、これからいくつもの救いの手が出てきます。

 その1.トランプの大統領府スタッフや閣僚から、トランプにあきれて逃げ出す閣僚が出る

 ではトランプ支持者の離反はどうか。ウソもホントだと楽しむ人ばかりなので、あまり期待できません。毎日、いや、毎時トランプのツイッターを見ないと気が済まない依存症の人たちだからです。

その2.2018年の中間選挙でトランプでは勝てないとみて、議員から離反者が出る

 もともと貿易に対する保護主義は民主党、自由化は共和党の専売特許でした。保護主義で雇用が増えなかったり、株価が上昇しなかったりすると、選挙民から突き上げられ、トランプより目の前の選挙ということで離反者が出る可能性があります。

  オバマの8年で雇用は最悪時点から1,500万人増加していますが、「オレ様はもっと増やす」ということで2,500万人を掲げました。しかしオバマのスタート時点の失業率は8%、その後半年で10%まで行き、現在は5%を切っていて、失業者が枯渇しているので、達成は無理です。ちなみに現在の全米の失業者数は約2千万人です。

  ということで、お先真っ暗ばかりではないことを、しっかりとお伝えしておきます。

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